自分が何か物事を考えるとき、「できる」「そうなりたい」とポジティブな言葉で考えると、言葉が潜在意識に働きかけて発想が前向きになり、成果に結びつく言動や行動が生まれやすくなります。逆に「ムリ」「どうせ私なんか」とネガティブな言葉で考えると、発想は後ろ向きとなり、成果が遠のいていくでしょう。
発想の変換を習慣づける
 自分が何か物事を考えるとき、「できる」「そうなりたい」とポジティブな言葉で考えると、言葉が潜在意識に働きかけて発想が前向きになり、成果に結びつく言動や行動が生まれやすくなります。逆に「ムリ」「どうせ私なんか」とネガティブな言葉で考えると、発想は後ろ向きとなり、成果が遠のいていくでしょう。

 相手に言葉がけをするときも同様で、ポジティブな言葉で「キミならできる」と指示・命令を出すと、相手も成果に結びつく前向きな言動や行動に向かいやすくなります。逆に「どうせムリだろうが……」と言葉がけをすると、本当にムリな結果しか生まれてこないでしょう。

モチベーションアップのステップを意識する

 部下を動機づけてやる気を増し、結果として組織全体を強くしていこうと意図するならば、潜在意識にポジティブな言葉で働きかけていく必要があります。ただし、その場の思いつきで言葉がけをしてたまたま上手くいったとしても、効果的な言葉がけの方法として組織全体で共有化していくことは難しいでしょう。

 そこで、リーダーが共通に認識できる手法を意識し、組織全体で取り組むことが求められます。その手法としてお勧めしたいのがペップトーク、すなわち『ポジティブな発想に基づいた相手を勇気づけるショートスピーチ』であり、ショートスピーチを作るためのステップです。
発想の変換を習慣づける
 自分や相手のありたいレベル、または目指す組織の状態に向けて、「状況の受け入れ」「とらえ方変換」「して欲しい変換」「シナリオ化」の4つのステップを着実にクリアしていくことが大切です。今回は「状況の受け入れ」と「とらえ方変換」について見ていきます。

「状況の受け入れ」でポジティブに考える素地を作る

 何か新たなことに取り組んだり、問題を解決するようなとき、「うちは人手が足りないから」「設備が整っていないから」「資金が少ないから」と、できない理由を挙げ始める人をよく見かけますが、そこから新たな状況が生み出されたり、好ましい方向へ進むとは思えません。

 個人的な場面でも同様で、「私には○○が足りないから」「どうせ私なんか」「私にはムリ」と口癖のように言う人がいますが、そのような人が芳しい成果を挙げたり、組織内でリーダーシップを発揮している状況はイメージしづらいでしょう。

 逆に、業績を上げている組織や、好ましい活動をしている個人に共通して見られるのは、「無いものは無い」「足りないものは足りない」とマイナスの状況を受け入れて、その上で「そこからどうしていくのか」を前向きに考えることです。

 すなわち「無いものねだり」の姿勢からは何も生まれませんが、今の状況を受け入れて「今あるものでベストを尽くそう」と発想することが、組織を活性化したり個人の成績を上げていくための基本的な姿勢といえるのです。

「とらえ方変換」で組織全体の発想をポジティブにしていく

 ひとつの出来事に対して、とらえ方は複数存在します。例えば、お客様からクレームをいただいた際に「嫌だなあ」と考えるのか、「信頼を取り戻そう」と考えるのかで、その後の対応やお客様への心象が違ってきます。当然、クレームが発生した事実を受け入れ、どのように対処するのかを前向きに考えた方が、良い結果が得られやすいでしょう。

 ミーティングや研修の時間を利用して、社内で課題を共有し、次のような「ポジティブに変換する姿勢」を浸透させることをお勧めします。

【ひとつの状況に対して、ネガティブにとらえた発想を、ポジティブに変換した例】
①資格試験の模擬テストで、合格ラインに5点足りなかった。
  このままじゃ落ちるぞ。→ あと少し頑張れば合格できるぞ。
②仕事でミスをしてしまった。
  自分はダメなんだ。→ 改善点が見つかったんだ。
③難しい商談に行く。
  失敗したらどうしよう。→ 成功したら高く評価されるぞ。
④部下・後輩が何度も同じことを聞いてくる。
  要領が悪いな。→ 慎重に考えるタイプだな。
⑤なかなか決断しようとしない。
  判断力に欠けるな。→ 多面的に考えるタイプだな。
⑥専門家が監査で多くの点を指摘してくる。
  重箱の隅を突いてくるな。→ 細かい点に気を配ってくれている。

ポジティブは○、ネガティブは×という発想を変換する

 最近、ポジティブな考え方が良いとされる風潮になり、世間一般が前向きになるかと思われたのですが、一部で「ポジティブを押し付けられて息苦しい」「ダメな点をポジティブに切り替えるのは、ごまかしにならないか」といった意見も聞かれます。

 この点については、ポジティブとは無理に強いたり、求められるものではないことを認識する必要があります。ポジティブを押し付けられたと考えた時点で、すでにネガティブな状況に陥っているはずであり、本来のポジティブなあり方とは異なります。

 前述のように「マイナスな部分を含めて今の自分、今の会社なんだ」と「状況の受け入れ」をしていただきたいのです。足りない部分や、できていない部分に焦点をあてて責めたところで、状況は変わっていかないでしょう。

 「角を矯めて牛を殺す」という諺があります。曲がった牛の骨をまっすぐにしようとして叩いたり引っ張ったりすると、牛が弱って死んでしまうことから、わずかな欠点を直そうとしてかえって全体をダメにしてしまう、という意味です。つまり、ネガティブな点を無理に改善しようとすると、せっかくのポジティブな部分までダメにしてしまうのです。

 これは人材育成や組織運営にも活かせる考え方です。「とらえ方変換」の事例でも見たように、一見短所と思われる部分も、別方向から見ると長所であるケースは多いものです。長所は伸ばしやすいので、変換によって長所を増やしながら、どんどん伸ばす方策を取ればよいのです。

 なお、ポジティブな状態への発想変換は、決してごまかしではありません。なぜなら、自分や相手のありたいレベル、または目指す組織の状態を想定しながら、「あと何をすれば、そのレベルや状態になるか」をポジティブに考えていくと、実際に個人や組織の成長に向けた具体的な活動が生まれやすくなるからです。

 次回は、相手に成長を促したり行動改善を指示する際に、「なぜ、何度言ってもできないんだ」といった抽象的な表現ではなく、「して欲しい変換」により相手が次の一歩を踏み出しやすくなる言葉がけの改善について解説します。
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