上場企業は遅くとも年末までにコーポレートガバナンス報告書の提出を求められているが、どのように対応すればいいのだろうか。
取締役会は何を判断・決定し、何を経営陣に委ねる?
コーポレートガバナンス・コードでは、取締役の人選に加え、取締役会がもっと有効に機能するための基本的なあり方についても再検討が求められる。取締役会は、取締役会自身として何を判断・決定し、何を経営陣に委ねるのかに関連して、経営陣に対する委任の範囲を明確に定め、その概要を開示すべきだとされている(補充原則4ー1(1))。要するに、取締役会にかける議案を見直すということだ。日本の上場企業はまだ多くが監査役会設置会社となっていて、執行に関する膨大な案件が取締役会にかけられる。これでは取締役会で検討するべき重要な案件について十分な時間が割けないから、執行に任せていい案件は議案から外す。そのための基準をきちんとつくる。その一方、グローバル対応やダイバーシティなど、これまで取締役会で十分に議論できていなかったが重要なテーマがないかを洗い出して、新たに盛り込む。手間はかかるが、これをきちんとやれば、自社の取締役会を、経営戦略についてもっと建設的で実効的な議論ができる場に変えていくことができそうだ。
自由闊達な議論ができる「気風」がないと、実りは少ない
「大事なことは事前の根回しで決まっている」。「議論が白熱する場面はほとんどなく、予定通りに議事進行するだけ」。多くの日本企業の取締役会では、これまで、そういうことが当たり前の風景だったのではないだろうか。だが、実効的な議論を行うためには、こういう空気も刷新しないといけない。取締役会は、社外取締役による問題提起を含め、自由闊達で建設的な議論・意見交換を尊ぶ気風の醸成に努めるべきであるとされている(原則4ー12)。つまり、なあなあで終わらせず、大いにトークバトルを、ということ。審議を活性化させる前提として、取締役会の資料は十分に先立って配付されるようにすること(補充原則4ー12(1))や、社外取締役・社外監査役に必要な会社の情報を適確に提供する工夫を行うことも求められている(補充原則4ー13(3))。
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実効性を分析・評価し、公開することが取締役会改革につながる
そして、このように実効的な取締役会に変えたら、そうなっているかどうかを企業は自ら「評価」しなければならない。取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしながら、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきであるとされている(補充原則4ー11(3))。行いっぱなしの取締役会ではなく、実効的だったかどうかが評価され、しかも結果が公表される。この補充原則は、取締役会を改革していく強力なトリガーになるのではないだろうか。取締役会の評価については、コンサルティングや改善点の提案まで行っている支援サービス会社を利用するなど、社外の視点を採り入れることも有効だ。
コーポレートガバナンス・コードへの対応は、取締役会の改革をはじめ、ガバナンスに関連する仕組みの幅広い見直しや、マインドチェンジにもつながっていく。関係する幅広い部署間で意見を交換し、社内に新しい風を吹き込むきっかけにすべきである。
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