他社に先駆けて整えていたはずの企業統治の仕組みが機能しなかった
名門企業、東芝で起きた不正会計問題。「まさか」と驚いている経営者が多いのではないだろうか。東芝の第三者委員会が公表した報告書によれば、見かけ上の当期利益のかさ上げが2008年度から継続的に行われ、その額は1500億円超。経営トップが過大な目標を現場に課し、「チャレンジ」と称して達成を迫ったことが会計操作につながったと指摘されている。しかし、東芝はコーポレートガバナンス体制の整備に関して「優等生」とされる企業だった。取締役会の中に指名委員会、監査委員会、報酬委員会を置く「委員会設置会社」(現行法では「指名委員会等設置会社」)を採用できるようになった2003年、同社は他社に先駆けて委員会設置会社に移行した。
委員会設置会社は、取締役会の中に社外取締役が過半数を占める委員会を設置し、経営を監督する「取締役会」と、業務の執行を行う「執行役」の役割を明確に分離することで、合理的で適正な経営を実現させるもの。コーポレートガバナンスがよく機能する先進的な仕組みであるはずだった。
実効性が高いコーポレートガバナンス・コード対応でなければ意味がない
ところが、その仕組みが機能していなかった。日本取引所グループの清田瞭最高経営責任者(CEO)は7月28日の記者会見で、東芝のコーポレートガバナンス体制に関して「形式は整っていたが、社外取締役に十分な情報を流さなかった」と指摘した。また、第三者委員会の報告書によれば、東芝の監査委員会はメンバー5人中3人が社外取締役だが、そのうち2人は外交官出身。監査能力が十分だったとはちょっと言いにくい。
どれほど先進的で優れた仕組みでも、中身が伴わなければガバナンスは機能するわけがない。それが東芝不正会計問題の与えた教訓だ。
いま、上場企業が対応を迫られているコーポレートガバナンス・コードへの対応に関しても、「形だけではなく、実効的であるかどうか」にフォーカスした取り組みを行わなければならないだろう。
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