本講演では、ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授 リンダ・グラットン氏が、企業を取り巻くさまざまな環境変化の中で、何が働く人たちのエンゲージメントを高めるのか、人事が果たすべき新しい3つの役割とは何かを語った。講演の後半では、学習院大学 経済学部経営学科 教授 守島基博氏と本企画のコーディネーター&ファシリテーターであるグラマシーエンゲージメントグループ株式会社 代表取締役 ブライアン・シャーマン氏も加わり、「ポジティブな未来をつくる人事の創造性とエンゲージメント」について3名によるディスカッションが行われた。
変化する人事の役割――カギとなるのは「創造性」と「エンゲージメント」
リンダ・グラットン 氏
講師:

ロンドン・ビジネス・スクール 教授 リンダ・グラットン 氏

「Business Thinkers 50」でトップ15人のビジネス思想家の一人に選ばれ、“ロックスター“講師と評された、働き方の未来に関する世界有数の思想家の一人。ロンドン・ビジネス・スクール 経営実務 教授。「ティーチャー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、同校で最も人気のある選択科目の一つである「働き方の未来(the future of work)」を設計し指導する。ハイブリッドワークに関する彼女の研究は、2021年5月にハーバード・ビジネス・レビューの表紙記事として取り上げられ、またMITスローン経営大学院のコラムでは仕事の問題を探求している。10年以上前にHSM-Advisoryを設立し、世界中の90以上の企業のビジネス戦略を未来志向でサポートしてきた。『Redesigning Work』『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略(原題:The 100-Year Life)』など11冊の著書は100万部以上を売り上げ、15カ国語以上に翻訳されている。世界経済フォーラムのフェローであり、WEF Council on Work, Wages and Job Creationの共同議長を務めている。また、日本の安倍元首相の諮問委員を務めたほか、多くのグローバル企業の諮問委員を務めている。

守島 基博 氏
講師:

学習院大学 経済学部経営学科 教授/一橋大学 名誉教授 守島 基博 氏

米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学 経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。厚生労働省労働政策審議会委員、中央労働委員会公益委員などを兼任。2020年より一橋大学名誉教授。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』、『全員戦力化 戦略人材不足と組織力開発』『人材投資のジレンマ(共著)』(ここまで、日本経済新聞出版)、『人事と法の対話』(有斐閣)、などがある。
学習院大学 経済学部

ブライアン・シャーマン 氏
講師:

グラマシーエンゲージメントグループ株式会社 代表取締役 ブライアン・シャーマン 氏

在米日系企業を対象に人事コンサルタントとして従事。その後米国住商情報システム人事総務部長として人事の現場を内と外の視点で支える。来日後株式会社ファーストリテイリングでのグローバル人事業務に参画。2010年グラマシーエングージメントグループ株式会社設立。日本企業の人事のグローバル化をサポートするコンサルタント・ファシリテーター・コーチとして活躍中。米国ニューヨーク州出身、米国Williams College卒 早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員 【資格】コーアクティブ®・プロフェッショナル・認定コーチ (CPCC) 【著書】『英語 de 人事® 日英対訳による実践的人事』(白木三秀 と共著、文眞堂、2020年)
グラマシーエンゲージメントグループ株式会社

さまざまな環境変化の中で、働く人たちのエンゲージメントを高めるものは何か

ロンドン・ビジネス・スクール 教授 リンダ・グラットン氏

ビジネスに影響を与える3つの長期的なトレンド

本日は、私たちが世界で直面する課題についてお話します。また、人事の皆さんが、自身のスキルや仕事を最大限に活用する方法もご紹介します。

最初に、ビジネスに影響を与える長期的なトレンドを見てみましょう。1つめのトレンドは「長寿化」です。長寿化は人生や仕事の捉え方を変えようとしています。2つめは「テクノロジー」の進歩です。生成AIによりナレッジワーカーのタスクの自動化が進み、同時にデジタル分野で多くの新しい雇用を創出しています。3つめは「デュアルキャリア」です。今は共働き家庭が増えています。こうしたトレンドがダイナミクスを大きく変えようとしています。

また、ポストコロナの世界は依然として続いており、世界の人々がコロナ禍からの学びや、今後の働き方への影響を理解しようと努力しています。私はこの状況を3段階で考えています。コロナ禍前の人事慣行はある意味フリーズしていました。働き方や働く場所、時間は決まっていたという意味です。それがコロナ禍によりアンフリーズしたのです。そして今、どのようにリ・フリーズするのか。つまり、今後10年間の働き方はどうなるのかを考える時期に差し掛かっています。ただ、個人的にはまだアンフリーズであり、善後策を探っている状態だと考えます。
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