「採用」を取り巻く環境が急激な変化を続けている。「超売り手市場」、「雇用の流動化・多様化」、「AIの進化」など、かつてない状況の中で企業はどのような採用を行うべきなのか。本講演には、採用学のエキスパートである株式会社ビジネスリサーチラボ・伊達洋駆氏と、神戸大学大学院経営学研究科・服部泰宏氏が登壇。「ジョブ型採用」によって候補者の初期配属を約束する“不確実性”の軽減と、日本の「メンバーシップ型雇用」を支えてきた“心理的契約”の更新をテーマに、企業の“採用力”を高める方法を考える。
“採用力”を高めるための「不確実性」の軽減と「心理的契約」の更新

候補者が懸念する“不確実性”をなくし「入社後のイメージ」を明確にする

株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役 伊達 洋駆氏

初期配属を約束する「ジョブ型採用」で“不確実性”を軽減

“採用力”を高めるための「不確実性」の軽減と「心理的契約」の更新
近年、採用市場において(本来のジョブ型の意味とは異なりますが)いわゆる「ジョブ型採用」を行う企業が有利になり、「ジョブ型採用を行っていない企業が競り負けてしまった」という声をよく聞きます。では、なぜジョブ型採用が有利なのでしょうか。ここでキーワードになってくるのが“不確実性”です。

聞き慣れない言葉ですが、要は「情報が足りていない状態」のことを指します。「必要な情報に対して、手元にある情報が少ない」ということです。採用の文脈で言えば、「候補者が入社後の自分をイメージできない状態」です。候補者にとって、入社後に自分がどんな場所で働くか分からないのはストレスです。他方で、ジョブ型採用のように初期配属を約束すると、少しイメージできるようになります。

ただ、「初期配属を約束する」ということだけが、不確実性を下げる方法ではありません。例えば、採用プロセスで候補者に対して様々な働きかけを行い、入社後のイメージを明確にすることでも、不確実性を下げることができます。入社後にどんな仕事をするのかを、できる限り言語化して伝える。または、会社を実際に見にきてもらう。あるいは、実際に行うことになる仕事の一部をやってもらうなどの方法もあります。

候補者が求めるのは「短期的なイメージ」と「中長期的な広い可能性」

しかし、「入社後に自分がどんな仕事をするのか」、「どんな職場環境なのか」といったことについて、確かなことは入社してみなければ分かりません。このように、完全には払拭できない不確実性に対処していくために、候補者は「人柄」や「風土」を確認します。人柄や風土が分かってくると、不確実性が多少残っていたとしても、「こういう人たちに囲まれているなら自分は何とかやっていけそうだ」と思えるわけです。

ただ、人間には複雑なところがあり、候補者は「入社後のイメージをできるだけ明確に持ちたい」と考える一方で、「選択肢はできるだけ豊富に持っておきたい」とも考えます。実際に会社に入って、やりたかった仕事をやってみたけれど、「思っていた仕事と違った」、「自分に向いていなかった」ということは少なくありません。そうした場合に、「他の部署に移る」という選択肢があるかどうかが重要になってきます。

候補者がなぜそうした選択肢を持っておきたいのか。理由は2つあります。ひとつは、「つぶしが効くから」。もうひとつは、「自己決定の余地を残せるから」です。つまり、候補者の心理を考える場合、短期的には可能な限り「その会社に入社したらどうなるのか」をイメージしたいものの、中長期的には「いろんな可能性がある方が望ましい」と考えている。企業は、候補者の短期的および中長期的な希望を両立させるよう、採用を行っていく必要があります。私からの話題提供は以上です。

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。

HRプロ会員の方はこちらから

まだ会員でない方はこちらから

登録無料!会員登録された方全員に、特典資料をプレゼント!

HRプロとは

この記事にリアクションをお願いします!