これまでは、変革の意義と必要性、そしてヒントについて触れてきました。シリーズ最終回となる今回は、変革の実践における、ジレンマについて深く見ていきます。
優秀な人事メンバーの悩み
人事メンバーが現場に入り込み過ぎたときに、「変われない理由」でがんじがらめになることがある。特に中間管理職からの情報だけを鵜呑みにしてしまう場合、そして彼ら中間管理職自身がアンチ・チェンジエージェントである場合はそうなりやすい。現場は常に業務多忙であり、新しいことをする余裕はない。働き方改革などの機運の高まりによって時間外労働や有給休暇などにおいて大いなる制約がある中で、少ないリソースで高い成果を上げねばならない中間管理職へのプレッシャーは並大抵のものではない。そうした中間管理職の声に寄り添いつつ、変化に向けて導いていくにはかなり広範囲な状況判断力と課題解決力が求められる。中間管理職が言っていることに死角はないのか(彼ら彼女らから見えていない景色は何か)、解決のヒントはどこにあるのか(他部門や他社の事例で活用できることはないか)などの視点を持ち、適切な問いかけをしていくことが必要である。
たとえば、ハードワークで成果を上げて出世してきた上司はどうしても長時間仕事をする部下を称賛する傾向がある。他者を褒める際は、「彼はいつも遅くまで仕事をしていて・・・」と言う枕詞が入ってしまう。頭ではそうではない働き方を推進すべきとわかっているのに、ついデフォルトでそうなってしまうのだ。
そういう場合に人事メンバーは、「あ、また口から出ちゃってますよ!」と言うツッコミを入れられるだろうか。自身の経験とは異なる働き方をしている部下の良いところを引き出し、上司が「違うパターン」を認識できるような投げかけができるだろうか。こういうのは日々の経験の地味な積み重ねであり、客観的な立場で、感じよく介入するスキルを磨いていくことが大切である。
その結果として、中間管理職の発言内容が変わってくることがある。そうなればそこをどんどん良さとして伸ばしてあげる。「〇〇さん、最近発言内容が変わってきたよね」と周囲から良い意味で言われるようになれば大きな前進だ。
この後、下記のトピックが続きます。
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●チェンジオフィサーの社内での立ち回り方
●求められるのは「採用」と「代謝」
●経営トップの役割とその重要性
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