最終回となる今回は、労働供給制約社会と呼ばれるこれからの時代について。難易度の高まっていく採用の在り方とは?複雑な変化の状況を読み解き、採用進化論を考察していきます。
「御社のためなら何でもやります」をまだ求めていませんか?
前回のコラムでも触れた通り、本格的な労働供給制約社会がすぐそこまで来ています。それはつまり、人材が採用できずビジネス自体が成り立たない業界、企業が大幅に増えてくるということです。人材不足は、ベンチャー企業や一部の不人気業界ではこれまでも課題でしたが、今人気のある業界や大手企業でも、すでに人が集まらない状況が始まりつつあります。大採用難時代は、ほぼすべての企業に訪れるものと思って間違いないでしょう。前回のコラムはこちらからお読みください。
さて、危機的な労働力不足は大前提ですが、採用を取り巻く大きな環境変化はこれにとどまりません。まず注目すべきは求職者側の意識の質的変化です。
Z世代と言われる最近の若者の特徴の一つは、組織に対する意識の変化です。会社組織に対するコミットメントは弱くなり、ジョブコミットメント、キャリアコミットメントが強くなってきています。そのため、「御社のためなら何でもやります」といった旧来のメンバーシップ型採用でのアピールは、Z世代の若者の仕事観には合わないので、企業側も学生の変化に合わせて訴求ポイントをチューニングする必要があります。
また、1社だけ、1つの仕事だけにコミットするという意識は優秀な若手人材ほど希薄な傾向にあり、若いうちから興味のあることを色々とやってみたいと考えています。自分にとって良い環境を複数試しながら居場所を見つけたいという考えがベースにあるので、自分のキャリアは自分で作るという感覚を持っているということを企業は認識しておかなければ、求職者とボタンの掛け違えをしてしまう可能性があります。
まずは採用部門が求職者の変化を把握し、これまでの価値観をチューニングしていかなければなりません。そして、そうした若者を受け入れる雇用の仕組みや受け皿となる組織を変えることは採用部門だけではできないので、経営に対してこうした状況を伝え、会社としての変化対応へ働きかけをしていくことが重要です。
ジョブ型採用は、果たして正解か?
このような求職者の価値観や多様なニーズに対応するために、新卒でジョブ型採用(職種別採用)を実施している企業も増えています。優秀層の学生ほど満足度は高いようですし、短期的な施策としては有効だと思います。しかし、中長期的な視点で見ると、企業も学生も一定のリスクを含んだ手法であることを企業は認識しておく必要があります。- 1