今回は、前回述べた変革のヒントである「仲間を作り、最後は全体に広げる。そして実務的なリスクヘッジを怠らない」のうち、前者について深く考えていきます。
企業全体で変革を起こすには?
前回、外からの動機付けと内なる動機付けについて検討をした。外からの動機付けを継続した結果、内なる動機付けを誘発することがあり、その場合には真に変革が持続する、というものだ。筆者は以前所属していた会社で、「大胆な働き方」を推奨し、週休三日制の導入や、場所に捉われない働き方を定着させるべく努めたことがある。同時に、率直に意見を言い合う風土の醸成や、部門間の壁をなくすコミュニケーションの活性化にも取り組んだ。これらは全て企業のビジョン実現に不可欠な要素であった。
その後、新型コロナの感染拡大をきっかけに、「絶対にできない」部門は、結局リモートワークを行うこととなった。彼らにとっては、仕方なく導入したことだったが、このような外圧があって初めて成し得たことであった。これは実務を扱う部門のリーダー、中間管理職にとってはかなりの痛みを伴う変革であったが、期せずして当時意図していた「大胆な働き方」が定着するきっかけとなった。
「外からの刺激により、従来の仕事のやり方を変えざるを得ない事態に陥ったが、絶対できないと思っていたことが実はやることができた。しかも、自分にとってかなりのメリットがあった」と感じると、人々の行動は変わる。
しかし、この経験を経て筆者が抱いたのは、「これで良いのだろうか?」という複雑な気持ちである。外からの刺激によって人々の動きが変わるのは、もはや大胆ではない。どの会社も同じように対応しているのである。変革する必要性が誰の目から見ても顕在化してから重い腰を上げるのでは、単に世の中の変化についていこうとしているだけである。
そうではなく、今よりも少し先にあるかもしれない変革の必要性を敢えて見にいく、という能動的な動きを喚起することが大事なのではないだろうか。このあと、その方策について幾つか見ていくことにする。
この後、下記のトピックが続きます。
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●採用と代謝が変革に与える影響は?
●社内の政治的力学に手をつける
●組織全体としての機運づくり
●人事部門の役割とは
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