コロナ禍で多様化した人材教育に活用できる「人材開発支援助成金」
コロナ禍において、企業の教育訓練のあり方も変わってきています。これまでは外部の研修機関で教育訓練を行っていた企業でも、オンライン研修に切り替えたり、あるいはコロナによる休業期間中に新たな従業員教育の一環としてオンライン研修を導入したりといったケースも聞かれます。そのような中、近年ではサブスクリプション型の研修サービスを利用して人材教育を行う企業が増えています。サブスクリプション型の研修サービスのメリットは、研修ごとの申込みが不要で、従業員が好きな時に受講でき、契約期間中は利用すればするほどお得になることです。一方でデメリットとしては、定額料金が発生するため、従業員が受講してもしなくても費用が発生することです。また、長期間利用する場合には都度申込みするより割高になることもあります。
しかし、人材開発支援助成金「人への投資促進コース(定額制訓練)」では、サブスクリプション型の研修サービスにかかる費用の一部が助成されます。これを活用すれば、経費の負担軽減が期待できるのです。
定額制のオンライン研修に人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」を活用しよう
人材開発支援助成金「人への投資促進コース(定額制訓練)」は、これから定額制サービスのオンライン研修の実施を予定している企業および、すでに導入している企業で利用することが可能です。2022年9月以降に助成内容が改正され、複数の異なる定額制サービスの訓練についても対象となるなど、さらに活用しやすくなりました。ただし、助成金を活用するためには様々な要件をクリアする必要があります。以下、訓練内容に関する要件を紹介します。
●業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること
●OFF-JTであって、事業外訓練(※2)であること
●労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であること
(※1)同額で複数の訓練を受けられるeラーニング及び同時双方向型の通信訓練であって、職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練
(※2)公共の職業能力開発施設、学校教育法上の教育機関等(助成金の支給を受けようとする企業以外の事業主・事業主団体の設置する施設)が企画し主催している訓練
また、主に次のような研修は助成の対象外と定められているため、注意が必要です。
●職業又は職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの(例:接遇・マナー講習等)
●趣味教養を身につけることを目的とするもの
など
企業内においてDX化等を進める上で必要となる知識及び技能を習得させるための教育訓練や、新入社員層・中堅職員層・管理者層等の各階層において実施される教育訓練は対象となります。また、訓練の実施方法についても、業務上の義務でなく専ら労働者が自発的に行うものや、特定の企業に対して提供することを目的としたものなども支給対象外となります。
では次に、助成金の支給額について見ていきましょう。支給額も、2022年12月の改正で引き上げられています。
企業が契約した定額制サービスの受講料等に、下表の経費助成率を乗じて算出した額が支給されます。なお、生産性要件を満たした場合には、下表の「生産性要件を満たす場合」の割増分が追加支給されます。
企業規模ごとの経費助成率
人材開発支援助成金「人への投資促進コース(定額制訓練)」の申請の流れと注意点
助成金の申請は、次の流れで行います。定額制サービスの契約期間の初日から起算して原則1ヵ月前までに、必要書類を管轄労働局に提出します。すでに契約済みの場合は、計画届を提出した日から起算して1ヵ月後を契約期間の初日とみなして助成されます。
(2)訓練実施
訓練は提出した計画に基づき行わなければなりません。変更する場合は変更届の提出が必須です。
(3)支給申請
訓練終了日の翌日から起算して2ヵ月以内に、必要書類を管轄労働局に提出します。
(4)助成金の受給
審査の結果、申請内容が適正と認められれば助成金が支給されます。
訓練内容の変更には、原則として「訓練実施計画変更届」を事前に提出する必要があります。変更届を提出せずに新たな教育訓練や対象者の追加などを実施した場合、変更した部分は助成の対象にならないので注意が必要です。
また、支給額について、生産性要件達成時の追加支給を受けるときは、「契約期間の初日が属する会計年度の前年度から3年度後の会計年度の末日の翌日から起算して5ヵ月以内(例えば2022年度開始の訓練の場合、2024年会計年度の末日の翌日から起算して5ヵ月以内)」に申請を行う必要があります。支給申請をしてから間が空くので、申請忘れに注意しましょう。
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