そもそも「最低賃金額」とは
国は「最低賃金法」に基づいて賃金の最低限度を定めており、使用者は労働者に対して「最低賃金額以上の賃金を払う義務」があります。これは企業の努力義務ではなく、大企業・中小企業の区別なく、必ず実現しなければなりません。また、全ての労働者が対象とされており、正社員やパート・アルバイトの区別はありません。ちなみに、雇用契約書で最低賃金額を下回った賃金額で労働者と合意したとしても、その契約は無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとなります。労働者に対して最低賃金額よりも低い金額で支払っている場合は、最低賃金額との差額を支払う必要があり、これに従わないと最低賃金法違反で50万円以下の罰金が課せられることがあります。労働者が労働基準監督署に駆け込む前にチェックをしておきましょう。
【要チェック】最低賃金額の計算方法
最低賃金額は時給で判断するので、月給制で賃金を支払っている場合は、時給に換算し直して検証する必要があります。また、出来高制を採用している場合でも最低賃金額の算定を行う必要がありますので、順を追って説明していきましょう。なお、最低賃金額の計算において、以下の賃金は対象外となります。
●所定の労働時間を超える労働や、所定の労働日以外の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金、休日割増賃金)
●午後10時~午前5時の深夜帯の労働のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える分(深夜割増賃金)
●その他手当(皆勤手当、通勤手当、家族手当など)
つまり、給与として支払う賃金に残業代などが入っている場合は、それらを除いた給与総額について最低賃金額をチェックすることになります。
次に最低賃金額の計算方法について説明します。まず、月給制の場合、賃金を時間給に計算しなおさなくてはなりません。
(2)「1年間の労働日数」×「1日の所定労働時間」で、1年間の総労働時間を算出します。
(3)月給×12ヵ月で「1年分の給与総額」を算出し、(2)で出した「1年間の総労働時間」で割ると、月給で働く人の時給が出ます。
出来高払い制が採用されている場合は、その月の「出来高払いの手当」を、その月の「総労働時間数」で割ります。ここで注意しなければならないのは、所定労働時間数で割るのではなく、残業時間等を含めた「総労働時間」で割るということです。そのため、手当の時間単価が思ったより下がってしまう可能性があるのがポイントです。
また、出来高払い制に対して「時間外割増賃金」などが含まれている場合は、取り除いて計算をする必要があります。例えば時間外割増賃金の場合、【(算定対象となる賃金額÷総労働時間)×0.25×時間外労働時間】という計算方法になります。
ここで算出された「【出来高払い制における時給額】と【通常の賃金で計算した時給額】を合算した金額」と、「法定の最低賃金額」を比較して、支払っている賃金に問題がないかどうか判断するのです。
最低賃金引上げを支援する「業務改善助成金」を活用しよう
最低賃金額の計算方法はわかったとしても、なかなか時給を上げることができないかもしれません。そのような時は助成金の活用を検討してみましょう。賃金を引き上げるためには、業務の生産性を上げるための施策を検討するのが一つの方法です。そのための設備投資や人材育成を行なうと同時に時給を一定額引き上げた際、設備投資費用の一部を助成するのが「業務改善助成金」です。助成金の対象となるのは、事業場内で最も低い賃金です。
助成金を受けるまでの流れは、以下の通りです。
(2)労働局が審査を行なって事業主に交付を決定した後、事業主は提出した計画に沿って事業を実施。
(3)事業の実施結果を労働局に報告し、労働局が事業実施結果を審査して助成金を支給する。
言葉にすると簡単なように感じますが、助成金を受けるまでにはいろいろな要件をクリアする必要があり、不慣れだと審査で引っかかってしまい助成金が支給されない、というリスクもあるでしょう。助成金の活用を検討される場合は、お近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
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