
介護と仕事の両立を支援するための雇用環境整備とは?
雇用環境整備は以下の4つがあり、いずれかの措置を講ずることが義務づけられます(2025/令和7年4月1日施行)。(1)介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
(2)介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
(3)自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供
(4)自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知
それぞれの具体的な内容は次のとおりです。
(1)介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
「介護に対する事前の心構え」や「自社の介護休業制度の概要」などを全従業員に周知することが望ましいとされています。ただし、アルバイトを大量採用している飲食店など、その実施が難しい場合には動画によるオンラインでの研修も認められていますが、研修の受講の有無について管理する必要があるので注意しましょう。もしくは、管理者に研修を受講させたうえで、各事業所の従業員へ周知するという方法もあります。
(2)介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
介護に関する悩みを抱える従業員が安心して相談できる窓口を設置します。形式的に窓口を設けるのではなく、対応する担当者名も周知するようにしましょう。なお、全国に支店をおいているような企業の場合は、メールアドレスやURLを定めて相談窓口とする方法でもよいとされています。相談窓口には以下の機能を持たせると良いでしょう。●公的な介護サービスを受けるために必要な諸手続きが済んでいるかどうかの確認
●介護休業等に関するハラスメントの相談対応
(3)自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供
介護休業・介護両立支援制度等を実際に利用した従業員の声をヒアリングし、事例として公表することにより、従業員から申し出をしやすい環境を整備することがねらいです。取りまとめた文書等を配布、もしくはイントラネットへの掲載等により従業員へ周知します。なお、事例は特定の職種や雇用形態等に偏らないようにしましょう。
(4)自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知
企業が介護休業・介護両立支援制度等を積極的に推進する姿勢を示すことで、従業員が安心して制度を利用できるようになります。周知の方法として、以下が考えられます。●社内掲示板やイントラネットにおいて、介護休業・介護両立支援制度等の利用手順や支援内容を分かりやすく掲載
なお、企業は雇用環境整備を実施するにあたって、複数の措置を講ずることが望ましいとされています。
雇用環境整備の措置を講ずるために人事担当者が取り組むべきこと
雇用環境整備の措置を講ずる際に、人事担当者が押さえておくべき実務のポイントは次のとおりです。(1)介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
研修内容は最新の法令や社内規則に基づいて定期的に更新するようにしましょう。研修の実施方法については、従業員の負担を考慮し、eラーニングや動画コンテンツなど、多様な受講形式を用意することで受講率の向上が期待できます。(2)介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
相談対応者には適切なトレーニングを実施し、介護に関する基礎知識を習得させるようにしましょう。また、匿名で相談できる仕組みを導入すると、より利用しやすくなります。相談対応の履歴は適切に記録し、社内の支援体制の改善に活用するとよいでしょう。(3)自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供
事例提供の際には、個人情報の保護に留意し、必ず当事者の同意を得ておきます。また、取得事例を単なる成功談とせず、困難な点や解決策も含めて紹介するようにしましょう。定期的に新たな事例を追加することも大切です。(4)自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知
制度の説明にとどまらず、取得しやすい組織風土を醸成することも欠かせません。そのためにも、企業トップのメッセージを的確に発信することは効果的です。制度利用のハードルを下げるために、積極的に制度の利用手順や支援内容を発信していきましょう。*
現代社会において、従業員の仕事と介護の両立を支援することは企業にとって重要な課題の一つです。従業員が介護休業等の制度を利用しやすい環境を整備することによって、優秀な人材の流出を防止することにもつながります。厚生労働省のHPにも役に立つツールが掲載されていますので、参考にしてみてください。
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