2022年は「改正育児介護休業法」の施行が4月と10月にあり、育児と仕事の両立が話題に上がった年と言えます。しかし、改正の入っていない部分の対応はきちんとできているでしょうか。妊娠が判明してから育児までの両立制度は、「育児介護休業法」だけでなく、「男女雇用機会均等法」、「労働基準法」など、複数の法令で定められています。この機に、制度全体を再確認しましょう。
「育児介護休業法」だけじゃない! 労働者が妊娠~出産~育児中に会社が対応しなければならない制度をまとめて再確認

女性労働者が「妊娠中から産後休業終了まで」利用できる制度

はじめに、妊娠中から産後休業終了までに女性労働者が利用できる制度を紹介します。2022年の法改正により、労働者本人や配偶者の妊娠が判明した際に、「制度の個別周知」と「意向確認」が義務化されましたが、それ以外にも必要な措置があります。

●母性健康管理措置

まず、妊娠中・出産後の労働者が、医師の保健指導や妊婦検診を受けるために必要な時間を確保しなければなりません。医師等による指導があれば、その指導に対応する必要もあります。この時、妊娠中の労働者から「母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)」が提出されることがあります。このカードは、主治医が通勤緩和や勤務時間短縮、休憩時間の延長等の措置が必要と判断した場合に、主治医から出されるものです。主治医から事業主への連絡ツールと思っていただくとよいでしょう。また、このカードが提出されなければ措置が不要というわけではありません。カードの提出がなくとも、女性労働者本人から申し出があった場合には、必要な措置を講じる必要があります。

●妊産婦への就業制限

重量物を取り扱う業務や有害ガスを利用する場所での業務など、有害な業務に就くことは禁止されています。有害な業務でなくとも、現在の業務が妊娠中に負担となる場合には、他の軽易な業務への転換を申請することも認められています。

また、妊産婦からの請求があった場合には、時間外労働、休日労働、深夜業をさせることはできません。たとえ変形労働時間制が適用されている場合でも、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超える労働をさせることはできません。

●産前産後休業

産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から、産後休業は出産翌日から8週間と定められています。

男女問わず「育児中」に利用できる制度

ここからは、男女問わず育児中に利用できる制度を紹介します(一部例外あり)。利用できる期間は、いずれも子の年齢によって定義されていることがポイントです。

出生時育児休業・育児休業

「出生時育児休業」とは、子の出生から8週までの期間に取得できる休業制度で、今年10月の改正育児介護休業法施行により新設された制度です。「育児休業」は、子の出生8週を超えてから子が1歳になるまで、一定の条件を満たすと最長で2歳になるまで利用できる休業制度です。今年10月の改正法施行により、2回までの分割取得が可能になりました。

育児時間(女性労働者対象)

1歳未満の子を養育する女性労働者が請求した場合には、1日2回、各々少なくとも30分の育児時間を与える必要があります。今回紹介する育児中に利用できる制度の中では、この制度のみ女性労働者が対象です。

育児中の短時間勤務制度

3歳未満の子を養育する労働者が育児をするために、短時間勤務制度を設けることが義務化されています。短時間勤務制度を設けることが難しい業務や体制だった場合でも、育児休業の延長・フレックスタイム制・時差出勤制度・保育施設設置などの代替措置が義務化されている点は押さえておきましょう。

子の看護休暇

子の看護休暇とは、小学校就学前までの子を養育する労働者が、子の病気やけがの看護・予防接種や健康診断などのために取得できる休暇制度です。年に5日(対象の子が2人以上であれば年10日)まで、年次有給休暇とは別に取得できます。2021年1月からは、時間単位での取得対応が義務化されています。

育児中の就業制限

労働者から請求があった場合には、以下の就業制限を行う必要があります。いずれも事業の正常な運営を妨げる場合は請求を拒めるとしていますが、当然、育児と仕事を両立するための配慮は必要です。

【子が3歳未満まで】
●所定労働時間を超える労働をさせてはならない

【子が小学校就学前まで】
●時間外労働の制限を1ヵ月24時間、1年150時間とし、それを超える労働をさせてはならない
●深夜業(22時~翌5時)をさせてはならない

「妊娠中から育児中のすべての期間」で必要な措置

妊娠・出産・育児を理由に、該当の労働者に不利益取り扱いやハラスメントをすることは当然禁じられています。妊娠・出産・育児に関する制度や措置を利用・請求したことに対しても同様です。不利益取り扱いとは、解雇、降格、減給、労働者にとって不利益な配置転換等を指します。

2022年4月、中小企業を含む全事業場に義務化された、いわゆる「パワハラ防止法」の中でも、パワーハラスメントだけではなく妊娠・出産・育児等に関するハラスメント(マタニティーハラスメント)対策も同時に行うことと明言されています。パワハラ防止措置と共に、自社の妊娠・出産・育児等に関するハラスメント対策措置も整備しましょう。

直近の法改正ばかりが話題になりがちですが、妊娠から育児の間に会社が対応しなければならない制度はたくさんあります。法改正対応ももちろん大切ですが、従来からの制度で自社が対応できていないものがあれば、この機に整備することをお勧めします。


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