「氏名変更」だけでなく「扶養異動」や「住所変更」も確認を
従業員の氏名が変更となった場合は、人事労務などの担当部署に報告をもらうようにします。人事担当者は以下の5項目を確認するようにしましょう。2.変更事由
3.変更後の氏名
「社内で旧姓を使いたいか」についても、このときに確認しましょう。変更後の氏名を使う場合は、必要に応じて名刺や名札等を変更しましょう。
4.扶養異動の有無
結婚を機に、パートナーが扶養に入る場合もあります。また、子どもがいる人と結婚する、相手の親が扶養に入る、といったケースなどもあるほか、状況によっては扶養から抜けることもあるため、それらの点も併せて確認しておきましょう。
5.住所変更の有無
住所が変わる場合は、社内で管理する名簿類も変更しましょう。交通費の精算のために、通勤ルートの確認も必要です。また、「氏名の変更日」と「住所の変更日」は違う可能性があるため、住所の変更日も確認しておきましょう。
上記5項目の確認漏れがないよう、あらかじめ情報更新用のひな型を用意しておくと便利です。届出用紙の提出を求める企業もありますが、今はこうした業務手続きを電子化したワークフローシステムもあります。随時、質問項目を見直すことで、確認漏れを防ぐことができます。
近年の法改正により簡略化された「社会保険」・「雇用保険」の手続き
●社会保険(健康保険・厚生年金保険)
結婚等をして姓や住所が変わった場合、これまでは氏名・住所変更の手続きをしなければなりませんでした。しかし、2018年3月から、マイナンバーと基礎年金番号が紐付けられるようになり、氏名・住所変更の届け出が原則不要となりました。例えば、結婚の際に本人が市区町村の役所に氏名・住所の変更手続きをすれば、自動的に社会保険の登録情報も変更され、名前が変更された健康保険証が届くようになっています。ただし、まれに基礎年金番号とマイナンバーが紐付いていない人や、外国籍の人のようにまだマイナンバーが付番されていない場合もあります。それらの人については、氏名・住所変更の手続きをしなければならない点に注意しましょう。ちなみに、マイナンバーと基礎年金番号の紐付けは、紐付いていない厚生年金保険者がいる事業所に送られる「マイナンバー未収録者一覧」で確認できます。従業員本人が確認したい場合には、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」や近隣の年金事務所で確認できます。
●雇用保険
これまでは、結婚等で氏名が変わった場合には、速やかにハローワークに氏名変更届を提出しなければなりませんでした。ですが、2020年6月以降は、被保険者資格喪失届や転勤届・個人番号登録変更届、育児休業給付金など、給付金の支給申請の手続きを行う際に、同時に届け出をすればよいことになっています。また、住所変更については、そもそも雇用保険に住所が登録されていないため、手続きは発生しません。「労働者名簿」など各種書類の更新や、諸手当等の確認も必要
●社内の手続きで注意したい点
まず重要なのが「各種書類の更新」です。労働基準法で作成・保管が義務付けられている「労働者名簿」、「賃金台帳」、「出勤簿」の“法定三帳簿”と呼ばれるものをはじめ、各種書類の氏名を更新しましょう。また、結婚を機に緊急連絡先も変更になる可能性があるため、確認しておきましょう。加えて、「各種手当の確認」も必要です。配偶者が扶養に入る場合には、扶養手当や家族手当が追加されることもあるため、速やかに各種手当を変更しましょう。結婚を機に通勤区間が変われば、通勤手当の変更も必要になります。これらの届け出について、月単位で変更を行っている会社の場合は、支給額の開始時期を確認し、遅れる場合は従業員に事前に説明しておくとよいでしょう。
なお、実務的には、社員番号と旧姓を合わせて管理をすることをお勧めします。
●働き方の変更の確認
昔は「寿退社」という言葉があり、結婚した女性は退職するケースも多かったようですが、現在は結婚したからといって従業員の働き方が変わるケースはかなり少ないと感じています。ただ、「今まで通りの働き方が可能かどうか」については、確認しておいた方が企業側・従業員側双方にとって良いことだと思います。結婚した従業員に出産の予定があるかどうかを聞くのは好ましくありませんが、出産や介護などで短時間勤務やアルバイトを希望するケースもあるほか、配偶者の転勤等があるケースもあるため、「これまで通りの働き方で大丈夫ですか?」とやんわり状況を尋ね、会社側が配慮すべきことがあるのかを確認しておきましょう。
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