常時使用する労働者が「10人未満」の事業場の場合
「常時使用する労働者」の定義は、法律により異なります。例えば、「労働安全衛生法」の“常時使用する労働者の数”は、日雇労働者やパートタイマー等の臨時的労働者の数を含め、常態として使用する労働者の数を指しています。日本国内で労働者を1人でも雇えば「労働基準法等の順守」、「労災保険・雇用保険の加入」が、法人の事業所(事業主のみの場合も含む)の場合は「健康保険・厚生年金の加入」の必要があります。なお、常時従業員が5人以上いる個人の事業所についても、一部の業種を除いて健康保険・厚生年金に加入する必要があります。
ただし、「労災保険」、「雇用保険」、「健康保険」、「厚生年金」等の加入要件はそれぞれの法律によって異なりますので、詳細はご確認ください。
【労働基準法等の順守の例】
(1)労働条件の明示
●労働条件通知書:労働基準法第15条
(2)必要な報告や書類の作成
●適用事業場報告:労働基準法第104条の2(労働基準法施行規則第57条)
●労働者名簿:労働基準法第107条(労働基準法施行規則第53条)
●賃金台帳・労働基準法第108条(労働基準法施行規則第55条
常時使用する労働者が「10人以上50人未満」の事業場の場合
常時使用する労働者が「10人以上50人未満」の事業場になると、「労働安全衛生法」上、安全衛生推進者(衛生推進者)の選任が必要です。安全管理者及び衛生管理者の選任が義務づけられていない“中小規模事業場の安全衛生水準”の向上を図るため、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生推進者を選任し、労働者の安全や健康確保などに係わる業務を担当させなければなりません(安全管理者の選任対象外の業種では、安全衛生推進者に代わり衛生推進者を選任し、衛生にかかる業務を担当させます)。安全衛生推進者(衛生推進者)は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。その際、事業場に専属の者を選任しますが「労働安全コンサルタント」、「労働衛生コンサルタント」、「その他厚生労働大臣が定める者」のうちから選任するときは、この限りではありません。選任した時に、その旨を所轄の労働基準監督署に報告する必要はありませんが、安全衛生推進者(衛生推進者)の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により、関係労働者に周知しなければなりません。
「労働基準法」等の順守では、常時10人以上の労働者を使用する事業主は「常時使用する労働者が10人未満の事業場」にて解説したことに加えて、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要となります。
【労働安全衛生法の順守】
●安全衛生推進者(衛生推進者)の選任
【労働基準法等の順守の例】
●就業規則(変更)届:労働基準法第89条
上記を作成して、所轄の労働基準監督署に届出
常時使用する労働者が「50人以上」の事業場の場合
労働安全衛生法上、「常時使用する労働者が50人以上の事業場」の場合は、以下の対応が必要です。(1)「労働安全衛生法」上、対応が必要な事項
【労働安全衛生法の順守】●産業医の選任
●衛生管理者・安全管理者(一定の業種のみ)の選任
●衛生委員会・安全衛生委員会(一定の業種のみ)の設置
●定期健康診断報告
●ストレスチェックの実施
●休養室の設置
労働者の安全衛生管理を怠り労働災害が発生した場合、事業者等には6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金などが科せられる可能性もあります。
事業場規模別・業種別安全衛生管理組織の概要
(2)社会保険の適用拡大について
2022年10月からは「労働者数101人以上の企業」が、2024年10月からは「労働者数51人以上の企業」が対象となり、週の労働時間が20時間以上のパート・アルバイト等に、社会保険の加入が義務化されます。(3)障がい者雇用率制度について
全ての事業主は、労働者の一定割合以上の障がい者を雇用することが義務づけられています。障がい者の法定雇用率は2021年3月から2.3%となっており、労働者数が43.5人以上の事業場では、障がい者を1人以上雇用しなければいけません。(4)「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率」の引き上げについて
2023年3月31日までは大企業が50%、中小企業が25%となっていた「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率」が、2023年4月1日からは大企業・中小企業に関わらず、全ての企業において50%に引き上げられます。和歌山産業保健総合支援センター:産業医の選任義務など「常時50人以上」や「在籍労働者数」のカウントする対象者
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