人的資本開示の動きが加速化している。それと共に、内部及び外部のステークホルダーに対する人的資本に関する報告のための指針「ISO 30414」にも、非常に高い関心が寄せられている。そのような中、株式会社リンクアンドモチベーションは、日本・アジアで初めてISO 30414 の認証を取得した。世界でみても、5番目の取得だという。このニュースによって、今後、認証取得を検討する日本企業は増えてくるだろう。しかし、認証取得までどのようなステップで進めるべきか、どのような困難に直面するのかといった情報はまだ少ない。そこで今回、ISO 30414認証取得のプロジェクト責任者を務めた執行役員 川村 宜主氏に、認証取得までの流れや取り組みの意義、社内外の反響などについて伺った。

プロフィール

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    川村 宜主 氏

    株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員

    2000年リンクアンドモチベーション入社。企業向けの組織人事コンサルティングに従事した後、2010年に株式会社モチベーションアカデミアを設立。2014年にはコーポレート部門に異動し、以来広報・人事領域を中心に管轄。現在は、執行役員として、「ISO 30414」認証取得プロジェクト等の責任者を務める。

日本・アジア初の「ISO 30414」認証取得企業に聞く――人的資本開示に向けたプロジェクトの中身と取り組みの意義とは

「ISO 30414」の認証取得を目指したその背景とは

――まずは、ISO30414認証取得に取り組んだ背景についてお聞かせください。

当社は2000年の創業以来、従業員のモチベーションを成長エンジンとした企業成長を支援する経営コンサルティング事業を展開してきました。つまり、人的資本経営が現在のように注目されるずっと前から、私たちはお客様に対しても社内に対しても人的資本経営に取り組み続けてきたのです。今回ISO 30414を取得することにより、ステークホルダーをはじめ世の中に広く人的資本経営の重要性を発信していきたいと考えたことが、一番大きな理由となります。

――そもそも、人的資本経営はなぜ重要だとお考えなのでしょうか。

企業経営は、3つの市場に適応していくことが求められていると思います。3つの市場とは、「商品市場」、「労働市場」、「資本市場」です。現在この3つの市場には、大きな変化が訪れています。

まず「商品市場」については、ビジネスがどんどんソフト化しています。そうすると、人の生み出すクリエイティビティやアイデア、そしてモチベーションやホスピタリティが、商品・サービスにおける競争を左右する要素となるのです。また、商品ライフサイクルも短くなり、新しいものを出してもあっという間にコモディティ化してしまいます。そのため、新しいもの、高付加価値のものを次々に生み出す必要があります。これも人が行っているため、商品市場の変化に合わせて人がより重要になっているのです。

次に「労働市場」においては、人材の流動性が高まっています。転職が一般的になるほど、優秀な人材から選ばれ続ける企業になることが大切です。さらに、ワークモチベーションも多様化しています。昔は生活のために働く人が多かったのですが、現代では自己実現のために働く人が増えてきました。そうなると、一人ひとり異なるワークモチベーションを高めながら束ねる必要があるのです。

最後に、「資本市場」です。企業を評価する観点が多角化し、財務情報だけではなく非財務情報も投資家に重視されています。それに伴い、人的資本の開示が強く求められてきているのです。2020年8月には米国証券取引委員会が人的資本の開示を義務付ける新たな規制を発表しました。日本でも、2021年6月に東京証券取引所が改定コーポレートガバナンス・コードを公表しており、これからさらに開示の流れが強くなるでしょう。

したがって、これら3つの市場の変化に柔軟かつスピーディーに適応するには、人的資本経営は不可欠なのです。

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