「よい成績さえあげていれば、会社の規則やルールは多少違反しても許される」という設問が、弊社の新入社員研修での意識調査にあります。
これは、2010年度の新入社員で94.3%が「そう思わない(許されない)」と答えています。なーんだ、問題ない項目じゃないか。なのに、なぜ、そんな項目を取り上げるのかというと、ここには、二つの課題が隠れているからです。
ひとつは、わずか5.7%(「わからない」を除くと1.8%)ですが、「違反してもいいじゃないか」と思っている新入社員がいるということです。
もうひとつは、ルールに従順なのはよいのですが、そのまま疑いもなくただ単に会社のルールを守ってもらっても困るんじゃないかなぁ、ということです。

■意識調査結果から見た、この集団の特性

では、この5.7%もいる「ルールは多少逸脱しても大丈夫かも」と考える新入社員をどう考えればよいのでしょうか?

意識調査は50問あります。その中で、「ルールは逸脱しても大丈夫」と答えた新入社員と、「ルールはどんなときでも守るべき」と答えた新入社員とで大きく差が出る設問を集めて、この「ルール逸脱型」の新人の傾向を見ると、次のようになります。(正答率が20%程度違うものを抽出)

・仕事は「会社のためにしてやっている」のではなく「自分のためにやっている」。
・一匹狼になってでもいいから、人に負けない仕事をする。
・個々人の努力や成績を無視して、ボーナスを出すの良くない。
・自分で努力しようとしない人にまで、会社はその成長に責任は持たなくて良い。
・利益を出せない会社は、社会の役に立っていない。
・会社の方針は、従業員に対する命令である。お願いではない。
・新入社員は、最初から頭の悪い人と思われてもよいと考えた方が色々な面で得。

これだけ読むと、まじめで業績思考が高いのではないか?とお感じになりませんか?自分に自信を持ち、しっかり仕事をしようとする人の考えではないでしょうか。

つまり、この「ルールを逸脱してもいいのでは?」と考えるメンバーは、業績思考が比較的高く、企業の原動力ともなるメンバーなのです。この「じゃじゃ馬」をどう生かすかが、実は、次世代の会社の行く末を決めるかもしれません。

経年で見たときに、この数年、冒頭の設問の正答率は、上がっています。

■当たり前を疑わない人でいいのか

近年、コンプライアンスやCSRという言葉が一般化し、新入社員も企業倫理というものを考えて就職活動をしています。「不正なことをしている」と思われてしまう企業は当然のことながら、消費者からも学生からも選ばれません。従来以上に企業には厳しい倫理観が求められる、そんな時代に今の新入社員は育ってきました。そんなことも影響して、この設問の正答率は向上しているのでしょう。それは、それで、喜ばしいことです。

しかし、ルールに従順なのはよいのですが、そのまま疑いもなく会社や社会のルールを守ってもらっても困るんじゃないかなぁ、と私は思っています。
なぜなら、

・環境変化の激しい時代。市場のルールは日々変わっている。
・個を生かした働き方が求められている。そのために、従来の組織重視のルールではそぐわないものもある。
・ルールに従順なだけだと、裁量の幅を広げたいとは思わなくなる。(言われたことを言われた範囲でやるのが仕事)

多少は、「身の回りの当たり前」に疑いを持つメンバーがいないと、おもしろくないのではないでしょうか。ルールを変えてしまえ、ルールの方が間違えている、と考える人がいないと困りませんか。

弊社でもそうですが、一番好き勝手に仕事をしているのは、トップです。
(え、貴社では違いますか?)
上に上がるほど、裁量の幅が増え、ルールに縛られなくなるってくるように感じます。

「決まったことをするのが仕事」と思っているような社員では、上昇志向も期待できず、積極的に仕事をしないのではないかと思うのです。前回紹介した鉄道会社の事例も、ルール変更という思考がなければ、サービス向上につながりませんでした。

ホワイトは、『オーガニゼーションマン(邦訳『組織の中の人間』)』の中で、組織思考、組織依存症に染まったアメリカのサラリーマン社会の構造を浮き彫りにしました(1950年代)。個を失う代わりに安定した、豊かな生活を保障する社会がありました。その後、家族主義的な経営は1980年代に破壊され、個を表に出さないとやっていけない成果主義的経営が主流となってきたのではないでしょうか。

現在もインデペンデントコントラクター(業務請負)という働き方が増えてきているとの報道もあります。会社の中のルールが、「組織に従うもの」を優遇するあまり、個性の発揮を抑えているとすれば、それはそれで問題ではないでしょうか。つまり、今求められる働き方、変化の激しい市場環境にルールそのものが合っていないということはないでしょうか。

*意識調査の詳細に関しては、担当営業及び弊社ホームページよりお問い合わせください。
http://www.jecc-net.co.jp/info/info.php
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