「ハイパフォーマー」とは、優れたスキルやこれまでの経験を活かして、高い成果を上げる人材を意味する。労働力不足や人材の有効活用といった社会的なテーマを背景に、注目されるようになった。ハイパフォーマーの存在は、業績向上や周囲の意識変革など、企業や周りの従業員にとって大きな効果がある。まさに企業のエンジンともいうべき存在だ。そのため、企業としてはハイパフォーマーの特徴をよく理解し、退職防止のための対策を講じる必要がある。
「ハイパフォーマー」の特徴や行動特性とは? 効果や退職を防ぐためのポイントも解説

おさえておきたい「ハイパフォーマー」の定義やコンピテンシーとの関係性

「ハイパフォーマー」とは、高度なスキルや豊富な経験を駆使して、優れたパフォーマンス・成果を出す人材を指す。ここではハイパフォーマーについて理解する際に欠かせない「コンピテンシー」について、ハイパフォーマーの関係性やハイパフォーマーが注目されている背景について解説する。

●「ハイパフォーマー」とコンピテンシーとの関係性

「ハイパフォーマー」に共通する、高いパフォーマンスに繋がる行動特性を「コンピテンシー」という。言い換えると、ハイパフォーマーの行動パターンを抽出したものがコンピテンシーだ。

このコンピテンシーを人材育成や採用面接、人事評価の手段として、活用する企業が増えてきている。例えば、人材育成においては、従業員にコンピテンシーを周知することで、ハイパフォーマーの育成を進めている企業もある。企業は従業員にコンピテンシー、つまり高パフォーマンスを上げるためにとるべき行動を理解・実行してもらうことで、ハイパフォーマーへの成長を期待しているのだ。

また、採用面接においては、応募者の行動をコンピテンシーと照らし合わせて、高パフォーマンスが出せる人材なのかを判断している企業もある。このようにハイパフォーマーの育成や評価をする上では、コンピテンシーについて理解し、活用することが重要になる。

●「ハイパフォーマー」が注目されている背景

「ハイパフォーマー」が注目されている背景には、「労働力不足」と「人材の有効活用」が挙げられる。少子高齢化に伴う労働力不足は、企業にとっても喫緊の課題の一つだ。そこで人材の確保を進めると共に、ハイパフォーマーに成果をより上げてもらうことで、労働力不足を補おうという発想が生まれた。

また、企業は労働力不足だからこそ、今いる「人材の有効活用」として、ハイパフォーマーの育成に力を入れるようになった。このように、労働力不足や人材の有効活用という、企業にとって大きなテーマを背景にハイパフォーマーは注目されているのだ。

「ハイパフォーマー」の特徴・行動特性とは

ここでは「ハイパフォーマー」の特徴・行動特性を7つ解説する。

●成果への意識が高い

「ハイパフォーマー」は成果への意識が高い。たとえ努力をしている、あるいは、スキルを持っているからといって、成果を出せるとは限らない。成果を出すためには、「期待されている成果を出そう」という高い意識・メンタリティが重要だ。

成果への高い意識があれば、壁にぶつかったとしても、簡単には諦めずに「この壁をどう乗り換えようか」という考え方をするようになる。「成果への意識の高さ」が成果達成の原動力となるのだ。

●行動力が高い

行動力が高いことも「ハイパフォーマー」の特徴だ。成果を上げるためには行動が必須である。ハイパフォーマーは、他の従業員よりも成果を出すためには何をすべきかをいち早く把握し、迅速に行動に移す。さらに、たとえ失敗したとしても、すぐに立ち直りチャレンジし続けることができる行動力も持っている。

●コミュニケーション能力が高い

「ハイパフォーマー」は、高いコミュニケーション能力を使い、仲間と協力し合いながら目標達成のために動いている。どれだけ優秀な人材であっても一人では達成できない仕事や一人ですると効率の悪い仕事はたくさんある。またチームで動く際は、その集団が適切に機能することが重要だ。

そこで、ハイパフォーマーは仲間と積極的にコミュニケーションを取り、交流を深める。部下や後輩のサポートもするため、仲間からの信頼も厚い。こうしてハイパフォーマーは良好な人間関係を築き、各方面からのサポートを得られやすく、かつチームが機能する環境を整えることで、より高い目標・成果の達成を目指している。

●部下や後輩から信頼されている

「ハイパフォーマー」は部下や後輩から信頼されている。チームで効率的に成果を上げるには、「チーム力の底上げ」や「良好な人間関係」が欠かせない。ハイパフォーマーは、知識やスキルを積極的に伝授してチーム力を底上げしつつ、部下・後輩が失敗したときにはフォローを欠かさない。こうしたハイパフォーマーの行動は良好な人間関係の構築に加え、部下や後輩から信頼を集めることに繋がる。

●ポジティブマインド

ポジティブマインドを持っていることも「ハイパフォーマー」の特徴だ。仕事をしていれば、逆風や挫折、壁にぶつかることは少なくない。そうしたマイナスな場面においても、ハイパフォーマーは「できる限りのことはやろう」と前向きに仕事に取り組む。このようなポジティブマインドからくる前向きな姿勢なくして、事態の好転はない。ハイパフォーマーのポジティブマインドは成果を上げるためには欠かせない要素なのだ。

●休憩や睡眠などメリハリをつけるのが上手い

仕事と休憩や睡眠などとのメリハリをつけるのが上手いこともハイパフォーマーの行動特性だ。人間の集中力は90分が限界だといわれている。そのため、集中力を維持して生産性の高い仕事をするには休憩が必須だ。また睡眠についても、寝不足は仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼしてしまう。誰もが「寝不足で頭が働かず、仕事にならない」という経験はあるだろう。ハイパフォーマーは適宜休憩を取りつつ、また無駄な夜更かしをせずに、「休むときは休む。寝るときは寝る」とメリハリをつけ、高いパフォーマンスを発揮しているのだ。

●自主的に自己研鑽をしている

ハイパフォーマーは自主的にスキルや知識を身につけるなど、自己研鑽をしている。ビジネスを取り巻く環境は常に変化している。現在のスキルや知識を維持しているだけでは、成果を出すのが難しくなり、徐々に貢献度も下がってしまう。そのため、ハイパフォーマーは常に必要だと思われるスキルや知識を吸収しようと、ときに後輩や部下などにも積極的に質問しながら、自己研磨に励んでいる。

「ハイパフォーマー」は企業や組織にどのような効果をもたらすか

「ハイパフォーマー」が企業や組織にもたらす効果を4つ解説する。いずれも企業にとって大きなメリットになる効果だ。

●業績向上

高いパフォーマンス・成果を上げる「ハイパフォーマー」は、企業の業績向上に大きく寄与する。また、複数の分野になるべく多くのハイパフォーマーがいることが、より業績が上向くことに繋がる。まさにハイパフォーマーは企業にとって大きな戦力だ。一方、企業側としては業績向上に寄与するハイパフォーマーが最大限の力を発揮できる環境を整えることが喫緊の課題になる。

●チーム力アップ

ハイパフォーマーは豊富なスキルや経験を持っており、それらをチーム内の仲間に伝えることをいとわない。そのため、同じチームの従業員は、ハイパフォーマーからスキルや経験を共有してもらうことで大きく進歩することができる。そしてそれがチーム力アップに繋がるのだ。

●周囲の意識変革

「ハイパフォーマー」の存在は、他の従業員たちの意識変革も期待できる。ハイパフォーマーの行動や考え方に間近で触れることで、「私も○○さんのように行動してみたら、良い成績が残せるのかな」と意識する従業員も出てくるのだ。そして、その中には実際に行動に移し、いずれハイパフォーマーへ成長する人材がいることだろう。

●人材育成への活用

社内にいるハイパフォーマーに共通する行動特性「コンピテンシー」を抽出すれば、人材育成にも活用できる。コンピテンシーを従業員に周知したり、研修やOJTで活用したりすることで、従業員は高パフォーマンスを上げるために何をすべきかを理解して実行に移すことができるようになる。

「ハイパフォーマー」に対して気をつけるべき3つのポイント

最後に、「ハイパフォーマー」に対して気をつけるべき3つのポイントを解説する。下記のポイントに気をつけ、ハイパフォーマーのメリットをしっかり享受できる組織作りを進めよう。

(1)傲慢になっていないか

「ハイパフォーマー」は、周囲よりも高いパフォーマンスを上げるが故に傲慢になってしまうリスクがある。企業側としては、何かしらの兆候が見られるハイパフォーマーに対しては、決して一人では仕事ができないことを意識してもらい、問題を起こす危険性があることを自覚してもらうなどの対処が必要になる。

(2)ローパフォーマーをつくらないようにする

ローパフォーマーとは「成果を上げられていない人材」、つまりハイパフォーマーとは逆の人材を指す。ローパフォーマーをつくると、ハイパフォーマーはフォローに追われるため、パフォーマンスの低下が危惧される。

たしかにローパフォーマーも業績には多少寄与している。しかし、「パレートの法則」を理解すると、ハイパフォーマーの重要性がよくわかる。

・パレートの法則:全体の8割を2割の部分・人が生み出しているという法則
この法則に従えば、「2割のハイパフォーマーが企業の売上げの8割を生み出している」と考えられる。それだけハイパフォーマーの存在は重要であり、足を引っ張る可能性のあるローパフォーマーはつくらないに越したことはないのだ。

しかし、一方で「2-6-2の法則」に従えば、企業は自然発生的にローパフォーマーからハイパフォーマーで構築されるようになっている。

・2-6-2の法則:優秀な人材2割、平均的な人材6割、平均以下の人材2割に分かれるという法則
このように、ある程度のローパフォーマーが組織内にいることは仕方がないことだとはいえる。しかし、なるべくその数を増やさないことが、ハイパフォーマーが力を発揮できる環境づくりに繋がるのだ。

(3)退職防止に向けた評価制度の整備、定期的な面談やアンケートなどのフォロー

企業にとって重要な「ハイパフォーマー」の退職を防ぐためにも「評価制度の整備」や「定期的な面談やアンケートなどのフォロー」は必須だ。評価制度については、成果を上げた従業員へ給与アップや特別ボーナスを支給するなど、金銭的なメリットのある内容にすることが重要だ。また、定期的な面談やアンケートを実施することで、ハイパフォーマーが抱えているかもしれない不平不満を素早く捉え、退職防止に向けて効果的な対策をとることができるようになる。
高い成果を上げる「ハイパフォーマー」は、企業業績の向上やチーム力アップなど大きな効果をもたらす。さらに、ハイパフォーマーの高いパフォーマンスに繋がる行動特性「コンピテンシー」を抽出し、人材育成や採用面接などにも活用することができる。

一方、企業としては、ハイパフォーマーの離職をできるだけ防がなければならない。そのために成果を上げた者に対して金銭的なメリットのある評価制度の整備や、不平不満を早期に把握するための定期的な面談の実施などの対策を講じる必要がある。

ハイパフォーマーは企業の大きな財産であり、現場を引っ張っていくエンジンだ。企業側としてはハイパフォーマーについての理解を深め、彼ら彼女らが魅力的だと感じる職場環境を整えることが重要だ。
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