今回はベストセラー『7つの習慣(R)』を世に送り出し、戦略を組織で実行するためのメソッド「実行の4つの規律」を提供するフランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社の竹村富士徳氏と、「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げ、様々な人事施策を打ち出す双日株式会社の人事部長 岡田勝紀氏による対談を実施。様々な議論を展開した。
プロフィール
竹村 富士徳 氏
1995年、旧フランクリン・クエスト社の日本法人に入社。経営企画、経理全般、人事、プランナー関連商品の開発、販売、物流など多岐に渡って担当する。同社の売上高向上および利益改善に大きく貢献し、1998年コヴィー・リーダーシップ・センターとの合併に伴い、フランクリン・コヴィー・ジャパンにて最年少で取締役に就任。米国本社との折衝はじめ、日本国内における同社事業の再構築の指揮を執り、2000年取締役副社長に就任。「あらゆる人々と組織の大いなる力を解き放つ」というフランクリン・コヴィー社のミッションを現場で押し進め、経営に携わると同時にコンサルタントとしても活躍。実践に裏打されたコンテンツへの深い理解が、ファシリテーションの強力なバックボーンとなっている。
フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 取締役副社長
国立大学法人筑波大学 客員教授岡田 勝紀 氏
1991年、日商岩井に入社。技術開発プロジェクトや鉱山評価を行う資源開発室に配属。入社2年目から神戸製鋼他4社(三菱ケミカル、出光、コスモ石油、双日)による合弁会社に出向。石炭から石油や水素を製造する技術開発プロジェクトに携わる。1997年より、営業に異動し、石炭を中心としたエネルギー・金属資源分野のトレード業務や事業開発を手掛ける。その間、中国駐在(6年間)、石炭・鉄鉱石部長(5年間)を務める。2020年より現職。経営と密に連携し、事業戦略を実現できる人材育成・配置に取り組む。
双日株式会社 人事部 部長
経営戦略と人材戦略をつなぐ人事の重要性
竹村 富士徳氏(以下 竹村) 本日は、双日株式会社の人事部 部長 岡田様と、戦略人事についてお話しをしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。岡田 勝紀氏(以下 岡田) よろしくお願いいたします。私は人事の仕事をしてまだ1年ですが、経営と人事はともにあると考えています。
以前は、原料を海外から調達、日本で加工されたものを海外に輸出するという日本特有のビジネスモデルが確立される中で、私たち商社が海外との接点を持ち、貿易を担ってきました。しかし現在はそうしたトレードビジネスから、事業を興して運営するという事業投資ビジネスにシフトしてきています。このように、ビジネスモデルが大きく変わるなかで、必要な人材像も明確に変化していると感じています。
竹村 おっしゃる通り、事業が変わるということは、その背景にある社会や世の中、マーケットが変わってきているということです。だからこそ、その事業に関わる人はどうあるべきか、考えていかねばなりません。
シンプルに、経営戦略と人材戦略・育成をつなぐことが非常に大切です。しかし、このシンプルなことが、多くの企業において意外と当たり前ではないと感じます。戦略というよりも、ルーティンになっているところが大半ではないでしょうか。
岡田 ご指摘のように、人事部には、人周りの事務作業を行うプロはたくさんいるのですが、人を戦略的につくるという面では未だに大きく欠落しています。本来あるべきは、ルーティンに近い事務作業はアウトソーシングをし、内部では経営戦略を実現できる人材をいかに育成し、最適配置するのかを考える、そういう組織になっていくべき、と日々役員や課長陣と議論を重ねています。
竹村 人のタイプは、戦略的な仕事の進め方の人、オペレーショナルな仕事の進め方の人、ざっくりと2つに分けられると思います。右肩上がりの時代は、オペレーショナルな仕事の進め方でよかったのですが、これだけビジネス環境が変わっている今、自ら考え、自ら興す、戦略的な仕事の仕方が求められます。しかし、戦略的な仕事の進め方ができる方は、ごく一部です。そういう人材をいかに増やしていくのかを、我々フランクリン・コヴィー・ジャパンは戦略実行のお手伝いの一環として担っています。
岡田さんのお話を伺っていて、むしろ人事そのものが、戦略的な仕事の進め方をしなければならないと思いました。従来のオペレーショナルな業務をする部門から、経営戦略を踏まえ戦略的に動ける部門に生まれ変わる必要がありますね。
人材の多様性を、いかに事業に活かしていくか
岡田 冒頭でご紹介いただいた通り、双日は中期経営計画で「事業や人材を創造し続ける総合商社」を、2030年にありたい姿として掲げています。そのなかで、「多様性と自律性を持つ『個』の集団こそが、新しいサービスや価値を生み出す源泉になる」と記載しているのですが、「多様性」と一概にいっても会社によって、時代によって、そして事業戦略によって備えるべき人材マトリックスは異なります。そこで当社の人事の中でも、多様性について今一度捉え直しているところです。竹村 「多様性」と一口にいっても、自社にとっての多様性とは何か、定義づけをすることが必要ですね。その上で、必要なソリューションが何かを考えていくことが、人事としての戦略的な思考であり、活動になっていくのだと思います。
岡田 その通りだと思います。当社は合併を重ねてきた歴史もあり、自然と多様な「個」を受け入れる素地ができていると思います。実際に、外部から優秀な人材をどんどん採用しており、双日の役員の3割、課長の4人に1人はキャリア採用です。そして、キャリア採用の入社式には、「双日の色に染まらないでください。あなたらしさをそのまま発揮してください」と、人事からお願いをしています。
自己アピールをしなければ埋もれてしまうことも事実ですが、人の長所を素直に受け止め「個」を尊重する文化が醸成されていることが、双日の強みです。今後は、変化スピードが速まる中で、それに適用していくために必要なスペックを見極め、臨機応変に人材獲得に繋げていくことは重要になっていくと考えています。
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