今回は、弊社が6月28日から7月2日までの5日間で主催した“ダイバシティ&インクルージョンフォーラム2021「多様性がもたらす日本企業の革新」”の初日の様子をお届けします。初日の第二部では、一橋大学名誉教授・法政大学大学院教授 米倉 誠一郎先生と、新進気鋭の英会話ビジネスベンチャーの株式会社プログリット代表取締役 岡田祥吾さんをゲストに迎え、ディスカッションをしました。モデレーターは米倉先生が務め、岡田さんと私の3名で「日本企業のグローバル化の課題」や「日本企業の強み」について考えました。
第28話:日本企業の革新のために必要な「強いバイタリティ」や「リスクを恐れないチャレンジ」とは

日本におけるグローバル化の課題とは

米倉:では、本日は「多様性がもたらす日本企業の革新」というメインテーマのもと、様々な観点から語っていきたいと思います。まず一つ目のテーマは「日本のグローバル化の課題とは」ということですが岡田さんどうですか?

岡田:僕らは英語学習にフォーカスして、どうやれば日本企業の皆さんの英語力が上がるのかを考えているのですが、「日本企業の英語力向上」と「日本の文化・慣習」は切っても切れない関係だと思います。その中でも一番課題だと感じるのは、日本企業は「トップダウンができない」というところかなと思っています。いろんな企業様を見ている中で少なくとも英語に関して成功していると思うのは、完全にトップダウンで英語化した企業。楽天さんとかはまさにそうですし、ベンチャー企業では何社もあります。しかしボトムアップで頑張ってやろうとしている企業というのはなかなか英語化が進まないというのが印象としてあります。

米倉:リーダーシップとかトップダウンでいく時はガシッといく。それが英語だけじゃなくてグローバル化のやっぱりある意味真髄だっていうことですかね。稲垣さんはどうですか。

稲垣:僕はやっぱり「日本の文化」が一番の課題だと感じています。なぜその文化の壁を乗り越えられないのかというところでいくと、「自分の常識を疑う力」だと思います。外国人を受け入れる日本人は、メジャーな立場にいます。僕の経験でいうと、2014年にインドネシアに移住して外国人になって自分がマイナーな立場になりました。その時いかに日本の文化が特殊か身をもって知ることができたのは大きかったです。今考えたら大したことはないのですが、当時は自分の考えが周りに通じず、どうしたらいいんだ……と思っていました。

例えば、お客さんから、「従業員が時間や納期を守らないから課題解決してくれ」っていうお話をいただいたにも関わらず、僕の部下が朝来ないという状態、まさに医者の不養生で困りました。でも、そもそもなんで時間をキッチリと守らないといけないんだろう。日本人はなぜそこにこだわるんだろう。それができないと本当にダメなんだろうか。日本の常識を疑ってみることができたのは、マイナーな立場に立ったからこそです。

米倉:これから否応なしにそういう世界で戦っていかなきゃいけないのかなっていうことですよね。大事なのは、「根拠のない自信」だと僕は思う。日本ってすごいんですよ、本当は。この20年間ずっとやられてきたから自分を過小評価しているけれど、これだけのものを資源ゼロで作り上げてきた。

我々のロジックだって変ですよ。絶対に遅刻しちゃいかんとか言っているけれど、それを説明してみろって言われた時に、説明せずに「そういうもんだ!」って言ってきたことなんですよね。これはある意味で自信のなさで、いわゆる集団浅慮です。

最近面白い話を聞きました。あるアメリカ人が日本に1週間ぐらいいて、「Can you speak Japanese?」と聞かれたら、「Of course. Sushi, Tamagoyaki, Yakitori, Ohayogozaimasu.」と答えたそうです。逆に日本人はすごい難しい単語も知っているのに「Can you speak English?」と聞かれたら、「A little」とか答えるんですよね。最初の挨拶の時にすごい英語ができる人なのに、「I'm sorry, My English is not so good. 」とか。あれ、いかんと思っています。言葉は根性ですよ。僕は一応ハーバード大学のPh.Dなんですが英語なんかできない。問題はそこじゃないんだよね。中学校までで習う英語で気にせずガンガン話すことなんじゃないかなと思う。
第28話:日本企業の革新のために必要な「強いバイタリティ」や「リスクを恐れないチャレンジ」とは

会社内で英語の能力をどう上げるべきか

米倉:次のテーマの「会社内で英語の能力をどう上げるべきか」については、お2人どうですか。僕は英語じゃない、根性だと言いました。自信、自分の信念。だって我々は中国語ができないからグローバルじゃないって、そんなことないじゃないですか。中国語ができないんだったら中国語の通訳を連れて行くでしょ。アメリカだったら英語の通訳を連れて行けばいいんですよ。ただ連れて行っても、過激ですが相手の胸ぐらを掴む勇気が自分にあるかっていうことです。

岡田:まさに私もそうだなと思っています。大きく分けると2種類の方々がいらっしゃるんですが、そのうち最強なのが、いま米倉先生が仰られたパターンなんですよね。英語力じゃないっていう。ここを信じ切れるともう無敵なんですよ。この自信があればその場に行っても臆せず話すので、結果英語はどんどんうまくなってくる。

ただ難しいのが、なかなか多くの日本人がそうはなれないという現状です。そうした時、実は英語を学習するということが逆サイクルでうまく働くのです。英語をちゃんと勉強して、割とうまくなったから自信をつけられる。なので、マインドからいくか、英語力からいくか。実はどっちも同じことをやろうとしているんですけれども、この2パターンがあるかなと思っています。マインドからいけないパターンの時は英語力をまず磨き、自信をつけるといいと思います。

米倉:僕も全然無敵じゃないんですけど、最近になって自信がついたね。やっぱりアメリカで英語ができないのはすごい嫌だったし、本当に早く帰りたいなっていつも思っていたんだけど、やり始めていくと突破力が出てくる。突破力が出てくると、なんだ、通じるじゃないかと。「My English is not so bad. See?」とか言っていくとガンガン会話していけるじゃないかっていうことなんだよね。ただ、いかにもペラペラしゃべる英語が英語だってみんな思い込んでいるのはよくないですね。東大に金子祥三さんという三菱重工で取締役技師長をやって、生産技研の教授をやってきた方がいらっしゃるんですが、その人の発音はすごくないんですよ。すごいのは単語力。外国人が辞書を引くぐらいの単語を並べるわけよ。それだけで、この人の学識はすごいなと思われる。

あとソニーの盛田さんもそうだったらしいね。盛田さんの英語って超無茶苦茶で、なんだか分からないけどアメリカ人が全員前のめりで聞いて、話を聞いてよかったなとも思わせる。何話してたんだっけってなる英語力なんだけど、そのパワーっていうのは素晴らしいね。どっちから入っていくか。どこを壊していくか。その人のカルチャーの特性もあるんだろうね。どっちかっていうと躊躇してしまう人間は英語力を上げたほうがいい。堂々といける人間は気にせず話していったほうがいい。
第28話:日本企業の革新のために必要な「強いバイタリティ」や「リスクを恐れないチャレンジ」とは

英語力以外に必要な能力は何か

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