「ファシリテーション」の意味と目的
「ファシリテーション」とは、企業の活動を円滑に進めるために非常に重要なものだ。近年は特に働く人の多様化(性別・国籍など)や働き方の多様化(時短勤務・フレックス制・リモートワーク)もあり、以前のように皆が同じ方向を向いて、同じように働くということがない時代に突入している。その中で従業員の誰もが納得いく企業活動を行うのは非常に難しい。プロジェクトにかかわるメンバー全員で集まり意思決定や問題解決を行うことが難しくなった時代で、ファシリテーションは円滑に企業の運営を行うために今後ますます必要なものとなってくるだろう。なぜ「ファシリテーション」がオンライン下で重要なのか
コロナ禍の影響もあり、オフィスに出社せず、自宅で業務を行うリモートワーク・テレワークを導入する企業が増えている。リモートワーク・テレワークは感染拡大防止に一役買ってはいるものの問題点も多い。例えば以下のような点だ。・従業員間のコミュニケーションが取りづらい
・意思決定が難しい
・上司や同僚の様子が分かりづらい
・プロジェクトの進捗管理が難しい
・人材評価や人材育成が難しい
この中でも特に、コミュニケーションの取りづらさと意思決定の難しさが大きな問題といえる。そこで「ファシリテーション」の出番である。テレワークでは、顔を直接会わせない会議の中で参加者の意見をまとめ、皆が納得した上で意思決定を行うのは、とても困難な作業になる。
ファシリテーションを意識した会議を行うことで、意見がバラバラになりがちな会議をまとめることが可能だ。なお、オンライン、オフラインを問わず、ファシリテーションを意識した会議には以下のような効果もある。
・時間内に会議を終わらせることができる
・会議を上手く進行することができる
・話し合いの結論を出すことができる
どのような人がファシリテーターに向いているか
「ファシリテーション」を活用し、円滑に企業活動を進めていくためには「ファシリテーター」も必要になってくる。ファシリテーターとは一言で言うとファシリテーションを行う人のことを指す。会議の例を挙げながら、ファシリテーターの役割を見ていこう。【ファシリテーターの役割】
(1)事前に会議の概要をまとめる何を議論するかだけでなく、どのように議論を進めるかまで考える。また、今回の会議をどこから始めるのか、そして何を目指すのかまではっきり決めておく。
(2)参加者を決める
会議に誰を集めるのかを決定する。特に他部署の従業員が入る場合、どの程度情報を共有できているかを確認することも大事だ。また、以下についても把握しておくことをおすすめしたい。
・参加者が議題に対してどのような考えを持っているか
・どのようなことに関心があるか
・参加者同士の関係(同期・同僚・上司・部下など)
・誰がキーパーソンになるか
(3)みんなが興味を持ちやすい話題を挙げ、参加者が発言しやすい雰囲気を作る
活発な議論を促すために、まずは興味を持ちやすい話題を出すなど、発言しやすい雰囲気づくりを行う。
(4)話題の脱線を起こさないように確認する
発言が活発に出るのはいいが、懸念されるのが話題の脱線や論点がずれることだ。本来話し合わないといけないことからズレてきた場合、それを修正するのもファシリテーターの役目である。
なお、ファシリテーターに向いている人には以下のような特徴が挙げられる。
【ファシリテーターに向いている人】
●ポジティブ思考会議ではファシリテーターの希望通りに必ず話が進むとは限らない。そのような場合でも不機嫌にならず、議題を進めていくポジティブ思考の人が向いている。
●オープンマインド
ファシリテーターに求められるのは活発な意見交換を促す能力だ。どのような意見でも聞ける姿勢が大事になってくる。
●好奇心旺盛
会議内で多種多様な意見を出してもらうために、ファシリテーターが発言しやすい雰囲気を作ることが重要だ。どのような意見でも好奇心旺盛な姿勢で聞こうとする人が向いているといえる。
●自分を客観視できる
会議では様々な意見が出るが、進むにつれ、意見が偏ってくる可能性もある。ファシリテーターは自分を客観視し、中立性を保つ必要がある。
●目的への意識が高い
会議はただ漫然と話し合いをするだけでなく、結論を導き出さないといけないものだ。生産性の高い話し合いを行うために目的への意識が高い人がファシリテーター向きである。
●システム思考を持っている
ファシリテーターの発言が会議の方向性に大きな影響を及ぼすこともある。自分の発言がどのように影響するかを考えられる力がファシリテーターに求められる。
「ファシリテーション」で必要な4つのスキル
ファシリテーションに必要なのはどのようなスキルなのだろうか。ここでは以下の4つのスキルについて紹介していこう。(1)デザインスキル
会議や業務を行う際は、何が目的なのか、そしてどうやって議論を進めるかを事前に決めておくと円滑に進む。円滑な会議・業務のためにはファシリテーションを活用し、目的設定や段取りをつけること、そして、その目的や段取りをメンバー全員に共有させることが重要となる。段取りや準備をデザインできるスキルが必要といえるだろう。また、メンバー全員が話しやすい環境を保つための関係性づくり、生産性のない時間を作らないための時間配分を考えるスキルも必要となる。
(2)対人関係スキル
会議や業務を行うと複数の人から多くの意見が出てくることが予想される。それらの中には正反対の意見もあるだろう。ファシリテーションでは、正反対の意見を尊重しながら、メンバー全員が納得できる結論を導き出すスキルが必要になる。誰かの意見だけを尊重するのではなく、中立性を保ち、みんなの意見を集約できる対人関係スキルの高さがファシリテーションには必要である。
また、意見が出ない場合は多くの人の発言を促すようなスキルがあると良い。なお、ファシリテーターになる人には聞く能力や答える能力だけでなく、メンバーを観察する能力や的確な質問を行う能力も重視される。
(3)構造化スキル
多くの意見が会議の参加者から出るのはいいが、それらがまとまらないと結論は導き出せない。意見を整理し、論点を絞り込むことが必要となる。その際に大事になるのが構造化スキルだ。何が論点なのか、そして今何を話し合うべきなのかを明確にできるスキルがファシリテーションでは求められる。
(4)合意形成スキル
合意スキルもファシリテーションでは重要になってくる。業務や会議の中で議論を尽くして意見が多く出ても、それを集約するのは至難の業である。さらには、出てきた意見がすべて正しいとは言えない可能性もある。その中から最適解を求めメンバーの合意を得る、という場面も出てくるかもしれない。合意形成スキルがあれば、多くの意見を集約すること、そしてそれらをまとめることができるはずだ。また、活発な話し合いと合意に至るまでのプロセスは、メンバーの結束力を高めてくれるに違いない。
「ファシリテーション」にはどのようなメリットがあるのか
「ファシリテーション」や「ファシリテーター」がいることのメリットについて、以下の4つを紹介していこう。(1)新たなアイデアが生まれやすい
ファシリテーターがいれば、会議の際、活発な意見交換を促してくれる。そのため、新たなアイデアが生まれやすいというメリットがある。ただの話し合いの場合、意見がまとまらず結局何も結論が出なかったということがあり得る。しかし、「ファシリテーション」を意識した話し合いを行うと、活発な意見交換だけでなく、様々な意見をまとめて結論を導き出すことができるというメリットもある。(2)生産性が向上する
「ファシリテーション」では、会議や業務の前に段取りを立て、どこがゴールなのかを決めておく。そのため、会議に無駄な時間を使うことがない。また、「今日何を話し合うのか」をはっきりさせているため、議論を脱線させることなく、限られた時間内で結論を出すこともできるはずだ。(3)参加者のモチベーションが上がる
会議にファシリテーターがいることで、発言者に偏りが出ることが少なくなるだろう。参加者全員が発言機会を持てることで、会議に対してのモチベーションアップにもつながることが予想される。(4)チームワークが向上する
会議にファシリテーターがいると、まず何を話し合うのかを明確にし、意見を出し合う、そしてその意見を偏りがないように集約し結論を出す、という一連の流れが無駄なく行える。多くの意見を出し合い、納得いく形で結論を導き出す過程が、チームワークを向上させてくれるはずだ。- 1