令和3年度における障がい者雇用に関する施策
令和3年度厚生労働省概算要求における重点要求を見ると、以下の点に力を注ぐことが示されています。・障がい者の就労促進
・中小企業の障がい者の雇入れ支援
・障がい者の雇用を促進するためのテレワークの推進
・雇用施策と福祉施策の連携による重度障がい者等の就労支援
これらの点について、もう少し具体的に見ていきます。
(1)中小企業をはじめとした障がい者の雇入れ支援等の強化
令和3年3月から、企業での障害者雇用率が2.3%に引き上げられました。障害者雇用率は、年々上昇していますが、大企業に比べると中小企業の障がい者雇用は進んでいません。そのためハローワークと地域の関係機関が連携し、障がい者の雇用経験や雇用ノウハウが不足している企業や、障がい者雇用が0人の企業に対して支援の強化を図ろうとしています。具体的には、採用の準備段階から採用後の職場定着に関して一貫したチーム支援等を実施して、障がい者の雇入れをサポートしていきます。また、障がい者就労支援機関となっている障害者就業・生活支援センターでは、リモート面談等に必要なポータブル機器やWi-Fi環境の導入等設備面の整備を行なうことと、地域の支援機関等に対してノウハウの提供を通して、就業支援の推進を図ることなどによって支援強化を図っていきます。
(2)精神障がい者、発達障がい者、難病患者等の多様な障がい特性に対応した就労支援の強化
近年、精神や発達の障がい者雇用が進んでいます。このような状況に対応するため、ハローワークでは、精神障がい者、発達障がい者、難病患者である求職者の支援をする専門の担当者を配置して、多様な障がい特性に対応した就労支援を推進していきます。また、大学では発達障がいのある学生が増えています。発達障がいの学生で、就職活動するときに専門的な支援を必要とする学生に対しては、大学等と連携をおこなって早期に把握し、就職準備から就職・職場定着までの一貫した支援をおこなえるように体制づくりに取り組むことも盛り込まれています。
障がい者の就労訓練機関でも、精神障がいの就職希望数が増えていく一方で、就労訓練を希望する精神障がい者も増加傾向にあります。そのため職業能力開発校で精神保健福祉士等を配置し、精神障がい者の受入れに関するノウハウを普及し、受入体制を整備することも進めていく予定です。
(3)障がい者の雇用を促進するためのテレワークの推進
コロナ禍により、テレワークという働き方が社会でも広く受け入れられるようになりました。障がい者の雇用においてもテレワークの推進を図っていくことが求められています。このような社会的ニーズや環境に合わせて、テレワークによる働き方の理解や周知をはかるためにフォーラムを開催することや、テレワークで障がい者をトライアル雇用する時には、最長6ヵ月までトライアル雇用期間を延長可能とすることも盛り込まれる予定です。
(4)官公庁等における障がい者の雇用促進・定着支援の推進
官公庁などの行政機関で雇用される障がい者の定着支援を進めるために、ハローワーク等に配置される職場適応支援者(ジョブコーチ)が必要な機関に訪問し、仕事をする上で何らかの課題を抱える障がい者や、受け入れ先の担当者等にアドバイスなどをおこないます。(5)雇用施策と福祉施策の連携による重度障がい者等の就労支援
重度障がい者等が働くことを想定した場合、時として労働と福祉の部分で連携することが必要となってくることがあります。そのため企業が障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用しても雇用することに難しさがある場合や、重度障がい者等が自営業者として独立して働くような場合でも、自治体が必要と認めたケースについては、地域生活支援促進事業により支援を行うことが検討されています。令和3年度予算概算要求について(厚生労働省)
令和3年度からの助成金の整理・統廃合、変更点について
令和3年度より、障害者雇用に関する助成金の中で廃止されるものや、組み換えられるもの、申請先が変更するものがあります。それらについて見ていきましょう。■廃止になる助成金
障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)のうち、以下のもの・柔軟な時間管理・休暇取得
・短時間労働者の勤務時間延長
・中高年障がい者の雇用継続支援
・社内理解の促進
■変更になる助成金
・障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)の「正規・無期転換」に関する項目が、キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」に変更障がいのある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した事業主に対して助成されるもので、障がい者の雇用促進と職場定着を図るために、次のいずれかの措置を講じた場合に摘要されます。
(1)有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換すること
(2)無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換すること
支給金額は、以下の通りです。
・( )内は中小企業以外の企業に支給される金額。
・支給対象期間1年間のうち、最初の6ヵ月を第1期、次の6ヵ月を第2期の支給対象期とする。
・支給対象者1人あたり、上記の額が支給されるが、当該額が、各々の支給対象期における労働に対する賃金の額を超える場合には、賃金の総額が上限となる。
出典:キャリアアップ助成金が令和3年度から変わります~ 令和3年4月1日以降 変更点の概要~(厚生労働省)
雇用する障がい者の職場定着を図るために職場支援員を配置した事業主に対して助成されます。
・障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)の「職場復帰支援」に関する項目が、障害者介助等助成金の「職場復帰支援助成金」に変更
中途障がい者等に対して、療養のための休職後の職場復帰後の本人の能力に合わせた職域開発その他職場復帰のために必要な措置を講じた事業主に対して助成されます。
・障害者職場適応援助コースの訪問型職場適応援助者の支援と企業在籍型職場適応援助者による支援が、「職場適応援助者助成金」の「訪問型職場適応援助者助成金・企業在籍型職場適応援助者助成金」に統合
職場適応援助者による援助を必要とする障がい者のために、職場適応援助者による支援を実施した事業主に対して助成されます。同一の企業在籍型職場適応援助者は1回のみとなります。
【助成金の申請先変更】
現在は労働局及びハローワークで支給されている「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース(一部)、障害者職場適応援助コース)」について、令和3年4月1日からは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に申請先が変わります。
助成金の申請先が変更されるものは、以下の助成金です。
●障害者介助等助成金
・職場支援員の配置助成金
雇用する障がい者の職場定着を図るために職場支援員を配置・委嘱した事業主に対して助成
・職場復帰支援助成金
中途障がい等により1ヵ月以上の療養のための休職を余儀なくされた者の職域開発その他職場 復帰のために必要な措置を講じた事業主に対して助成
●職場適応援助者助成金
・訪問型職場適応援助者助成金、企業在籍型職場適応援助者助成金
職場適応に特に課題を抱える障がい者に対して、訪問型・企業在籍型職場適応援助者による支援を実施した事業主に対して助成
助成金についての詳細については、労働局やハローワーク、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等のホームページ等で確認してください。
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