コロナ禍が変える働き方~賃上げを支える経営・人事戦略とは~
パンデミックが経済・雇用に与えるマクロ的影響とは?
最初に前提となる経済・雇用状況からお話させていただきます。今年はパンデミックで始まり、パンデミックで終わる1年でしたが、夏場以降はある程度、コロナへの対応や治療法が見えてきたということもあり、感染者数は増えてはいるものの、重症者数は抑制され、段階的な経済活動が可能になってきています。ただ、感染者数が急増すれば、行動制約の強化は必要になり、ただ、ワクチンが2021年前半に普及することが想定されていますが、これも100%効果があるというわけではありませんし、今回のウイルスは変異しやすいということもありますので、有効性という部分でどの程度持続するのか不確実な面があります。従って、このWithコロナといわれる局面がまだしばらくは続くと想定しておいたほうがよいでしょう。では、これが経済にどういうインパクトを及ぼすのでしょうか。当初は個人向けサービスを中心に非常に売上が減って、先行きが真っ暗な状況でしたが、徐々に戻りつつあり、マクロ全体でみると経済の活動水準はピークから見て9割くらいまでの状況に回復しつつあります。ただこの後、一気に上向くことはないでしょう。そのため数年間は「9割経済」ないし、「9割5分経済」の状態が持続すると考えられます。そうなると、全体として需要が不足する経済になるため、デフレ傾向が続くことが予想されます。
そうした中、雇用情勢は失業率が上昇しています。失業率が急上昇したアメリカなどと比べると日本は安定しているようにも見えるのですが、気をつけないといけないのは、失業率というのは職を失った人の数を必ずしもすべてカウントしているわけではなく、職を失った人のうち、仕事を探している人だけをカウントしていることです。よって実態としては職を失っている人はかなりの数に上っていると考えられます。一方で、これは日本の特徴ですが、企業の人員余剰感が一気に強まって、休業者がかつてない規模で発生。緊急事態宣言解除後は経済の持ち直しに伴って減ってきてはいますが、分野によってはなお高い水準を保っています。また求人がかつてないスピードで収縮しており、先行きが不確実な中、じわじわと雇用が失われる人が増えだすと、失業率はまだまだ上がっていくリスクがあるでしょう。
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