11月20日、読売新聞朝刊の1面で「トヨタ、大学推薦全廃」が報じられました。2022年入社から適用されるということで、既にインターンシップ等で実質的な就職活動が始まっている世代からが対象となります。全国の大学に対しては、既に文書で伝達済みとのことですが、大学やこれから就職活動を迎える学生たちに与えた衝撃は大きかったと思います。技術系における推薦制度の歴史は古く、特に大手メーカーでは技術系採用の大半が大学院生で占められており、入社者に占める推薦応募の比率は極めて高い企業が多くなっています。現にトヨタ自動車でも、技術系の自由応募は一部にとどまっていたといいます。もともと自動車業界は機械系の技術が中心でしたが、今や電動化や自動運転など、電気・電子だけでもなく、通信、情報、AI、人間工学など幅広い領域の人材が必要となり、これまでの大学研究室とのしがらみを断ち切ることが求められていたということでしょう。
ただし、企業側からの変革の動きは注目に値します。今年、コロナ禍の中でいっきに説明会や面接等のオンライン化が進みましたが、これに続いて技術系の推薦制度の崩壊のような事態になれば、昭和、平成と長年続いてきた採用手法の常識が、令和の時代になって大きく様変わりすることになります。他メーカーの動きに注目していきたいと思います。
スマートさが評価されるアクセンチュア
さて、今回もHR総研が本年3月と6月の2回にわたり、2021年3月卒業予定の「楽天みん就」会員を対象に実施した就職活動動向調査の中から、企業の採用手法についての学生の評価を見ていきたいと思います。今回取り上げるのは、「セミナー・会社説明会」について上位に挙げられた企業への評価です。調査では、「最も印象の良かった企業とその理由」を、1人1社しか投票できない形式で聞いています。そのため、企業ごとの得票数は分散する傾向にありますが、1票の価値はとても大きいといえます。2022年卒採用に向けて参考にしていただければ幸いです。
「セミナー・会社説明会」の好感度上位20位までのランキングは、[図表]のとおりとなりました。大手企業の場合、早期は別として、3月以降のほとんどのセミナーや説明会はオンラインで展開されるケースが多かったため、特にオンラインとの言及がなくても、オンラインセミナー・会社説明会についての評価が大半であると思われます。
・話が端的で分かりやすかった(早慶大クラス・文系)
・構造化されていて分かりやすい(早慶大クラス・文系)
・話が分かりやすく、事業に夢があった(上位私立大・理系)
・簡潔に選考プロセスとこの会社が求める人材像をプレゼンしていた(上位私立大・文系)
・社員の頭がいい(上位私立大・理系)
・社員さんの回答が正直で頭がよさそう(上位私立大・理系)
・社員の方とオンラインでお話をする機会を多く設けていただいた(上位私立大・文系)
・社員座談会でさまざまなキャリアの方が登壇してくださり、自身のキャリアイメージがわいた(早慶大クラス・文系)
・丁寧であったから。また大学別のリクルーター会もあった(上位私立大・文系)
・働き方が具体的になった(上位私立大・文系)
・無駄がない、外資系の良さがあった(その他国公立大・理系)
2位は旭化成(51ポイント)。メーカーの場合、文系よりも理系からの得票が多くなりがちな傾向がある中で、文系のほうが理系の倍近い得票を稼いでいることが特徴といえます。「回数の多さ」が評価されていますが、同じ内容の繰り返しではなく、回ごとに趣向を変えた内容が展開されているようです。人事や社員の人柄を評価するコメントも多くなっています。
・回数が多くて企業理解が深めやすかった(旧帝大クラス・文系)
・頻繁に開催されていて、どの回も面白かった(旧帝大クラス・文系)
・人事の方がユニークに会社紹介していた(上位国公立大・理系)
・人事が良かった(早慶大クラス・理系)
・社員がいい人なのが伝わった(早慶大クラス・文系)
・会社の雰囲気が良かった(早慶大クラス・理系)
・ざっくばらんに何でも答えてくださった(上位国公立大・文系)
・座談会まで手配してくださったので、会社の雰囲気がより理解しやすかった(上位私立大・理系)
・アーカイブではなくリアルタイムでの配信だったため、その場で寄せられた質問に回答してくれた(上位私立大・理系)