講師
服部 泰宏 氏
採用学研究所 客員研究員(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)
2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。滋賀大学経済学部専任講師、准教授、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授を経て現職。日本企業における組織と個人の関わりあいをコアテーマに、採用革新をはじめとする、いくつかの研究プロジェクトに従事。2018年以降は、圧倒的な成果をあげるスター社員の生態に関する調査、組織内の評判に関する調査、組織における特別扱いに関する調査などにも従事。
杉浦 二郎 氏
採用学研究所 客員研究員(株式会社モザイクワーク 代表取締役)
2001年に三幸製菓株式会社へ入社。2015年9月まで人事責任者を務めた後、ヤフー在職中の2016年4月に株式会社モザイクワークを設立。「カフェテリア採用」「日本一短いES」「即、採用」等々を生み出し、TV、新聞、ビジネス誌等、多くの媒体に取り上げられる。また、地元新潟において、産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組んでいる。ラジオNIKKEI「シューカツHANGOUT!」レギュラーコメンテーター。
採用担当者・人事担当者の専門知を考える
採用学研究所 客員研究員(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)服部 泰宏氏採用・人事担当者の専門知にアップデートが必要になった2020年
2020年は新型コロナウイルス感染拡大という大きな出来事があり、採用・人事担当者の専門家としての知識をバージョンアップする必要になったと考えています。一口に知識といっても、その深さには複数の段階があり、また、「変わらないもの」と「変わるもの」があります。本講演では専門家が持つべき知識の深さを解説すると共に、環境変化によって相対化して答えを出していかねばならない知識を提示していきます。まず前提として、新型コロナウイルスを契機に採用活動に起こった変化、表面化された問題を取り上げます。やはり最大の変化はオンライン化であり、伊達さんと神谷さんの話とオーバーラップする部分もありますが、私なりの整理を加えます。従来の対面面接では、言語情報と非言語情報がやり取りされていることは既に述べられた通りです。そこに「付属的情報」というものを付け加えたいと思います。
付属的情報はリダンダントな情報とも言い、一部非言語情報に含まれると考えられます。例えば面接官同士のやり取りや、面接官と面接に関係のない事務スタッフとのやり取り、面接には直接関係しない趣味の質問、あるいは面接が行われる前後の時間などが挙げられます。オンライン化されたコミュニケーションでは、言語情報・非言語情報はカットされる部分もありますが、伝わりはします。反面、リダンダントな情報はカットされました。
ところが、採用活動のオンライン化によって表面化したのが、日本では企業側も学生側もリダンダントな情報を思いのほか重要視していたということ。また同時に、基本的なやり取りであれば、オンラインでも支障がないことに気づいたことも、極めて重要なポイントです。学生はオンラインでのやり取りにすっかり慣れ、ある意味で体の中に完全にインストールされました。この帰結として、例えば、最終面接のみ対面で行う場合、あるいは入社後に対面で会議を行う場合、なぜ対面なのかを企業側はロジックを持って説明する必要が生じています。これまで当たり前とされ、事実上の標準、つまりデファクトスタンダードだったことに対し、ある種疑いの目が学生側から向けられていることを受け止めなければならないのです。
ただし、対面がダメだという単純な話ではありません。対面面接もデザインの仕方によってはプレミア感を演出でき、学生の志望度を高められることがわかっています。逆に、今までの慣習として対面の面接を行った結果、志望度を下げた例もあります。つまり、問題は対面による面接の有無ではなく、そこにロジックがあるか、納得のいく説明ができるかどうかにかかっています。こうした状況を踏まえると、これまでの知識や従来のスタンダードに関し、部分的な問い直しが必要になってくると考えられるのです。
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