8月1日、東京では長かった梅雨もようやく明けました。関東甲信地方の梅雨明けが8月にずれ込んだのは13年ぶりとのことです。気象庁の1951年以降の記録では、最も遅かったのは1982年の8月4日、次いで1998年と2003年の8月2日、そして2007年と今年の8月1日となるようです。したがって、過去4番目の遅さということになります。気象庁の記録を見ていて驚いたのは、一昨年の2018年は早くも6月29日に梅雨明けとなっていたことです。1951年以降の記録では最も早い梅雨明けです。今年とは1カ月以上も開きがあることになります。たった2年前のことなのに、全く覚えていませんでした。今年の新型コロナウイルスの問題や、近年、毎年のように起こる集中豪雨災害などと比べれば、梅雨明けの時期が早かっただの、遅かっただのということは、過ぎてしまえば些細な出来事の一つにすぎないということなのでしょうね。
「新型コロナウイルス」「WEB説明会」「WEB面接」「就活ルール廃止」「通年採用」「インターンシップ」「早期選考会」「AI採用」「逆求人」「リファラル採用」「お祈りメール」「内定取り消し」など、さまざまなキーワードが飛び交った2021年春入社に向けた就職・採用戦線。これまでの活動を振り返って、採用担当者、就活生のそれぞれの目線からの印象深いエピソードを川柳・短歌に込めて詠んでもらいました。今年の作品は、人事担当者・学生ともに、大半が「WEB面接」をモチーフにしたものとなりました。ぜひご一読ください。
WEB面接のエピソードを驚きとともに表現した作品が入選
まずは、採用担当者による「採用川柳・短歌」の入選作品から紹介します。【最優秀賞】からです。
オンライン 親が近くで カンペ出し (東京都 アイスの実さん)
HR総研の2021年卒学生を対象とした就職活動動向調査で、WEB面接を経験した学生にそのメリットを聞いてみたところ、特に多い回答は、わざわざ交通機関を使って会場に行くための時間や交通費を節約できること、上半身はスーツや化粧でバッチリ面接ルックにしながらも、下半身はパジャマやジャージなどの部屋着でリラックスして面接に臨めること、そして、志望動機やその会社の情報のカンペをPCに貼り付けて確認しながら面接を受けられることの三つです。しかし、世の中にはもっとすごいカンペも存在するようです。「採用面接時に“ささやき女将”のように近くで指示している親御さんがチラッと映ってしまっていました」と作者。この時の人事担当者の驚いた顔が目に浮かぶ秀作です。
もっとも、学生が親にサポートを依頼したとはあまり考えづらく、心配のあまり親が勝手にやっていることなのでしょう。小声で指示すれば、画面の向こうの面接官には聞こえないだろうと思ってのことでしょうが、WEB面接では意外と周りの音も聞こえるものです。
続いて【優秀賞】の2作を紹介します。
つぶやいて(Twitter) 撮って(Instagram)踊って(TikTok) いいねして(SNS全般) どれだけやったら 学生来るのか (神奈川県 川崎の大仏さん)
数年前まではSNSといえば「Facebook」の独り勝ち状態という時代があり、Facebookで採用ページを開設することがブームになっていたこともありました。ただ、今や若者世代においてはFacebookにかつての勢いはなく、「Twitter」「Instagram」「TikTok」などさまざまな特徴のあるSNSが並行して利用されています。
就職ナビだけでなく、SNSを活用した採用活動が主流になりつつある今、世の中の動きに取り残されまいと、これらのSNSに不慣れな採用担当者が何とか応募者を集めようと、社内の若手社員を巻き込みながら、必死に悪戦苦闘している様子をうまく表現した作品だと思います。それぞれのSNSの特徴を「つぶやいて」「撮って」「踊って」「いいねして」と、規定の文字数の中で簡潔に表現することに成功しています。この作者が自社の採用活動で作成・活用しているSNSをぜひ見てみたいものです。中でもTikTokを。
ウェブ面接 独り言かと 母乱入 (兵庫県 面接官さん)
WEB面接で実際にあったエピソードを簡潔に笑える句として詠んだ作品。「学生が自宅の自室でウェブ面接に参加中、カメラに映る学生の背後のドアが開き、学生の母親が『あんた、なに独り言しゃべってるの? 頭おかしいのか?』と言いながらカメラにインしてきた。学生は必死に『面接中! 出てって!!』と怒っていた」と作者。自宅生にとって、WEB面接を成功させる秘訣は、いかに母親にWEB面接を理解してもらい、協力までいかなくともいいから、せめて邪魔だけはしないようにしてもらうことなのかもしれませんね。面接官である人事担当者にとってはほほ笑ましいエピソードも、面接を受けている最中の学生にとっては目の前が真っ暗になるほどの事件だったことでしょう。
ところで、この学生の面接結果はどうだったのかが気になります。この学生の今後長きに渡る母子関係にも十分に配慮していただき、ぜひとも寛大な評価をしていただきたいものです。