「利益が出る働き方改革」というテーマで1年間連載してきましたが、今回が最終回となります。1年前は、残業時間が厳しく管理される中で、どうすれば売上や利益を落とさずに生産性を上げて効率の良い働き方の仕組みを作ることができるか、ということが各会社の課題でもありました。しかし新型コロナウイルス感染症拡大によって、残業どころか出社すら規制され、速報値ベースでも多くの業界が売上を大幅に落としています。「利益が出る働き方改革」を通り越して「会社を潰さない働き方改革」が、これから各会社のテーマとなっていくことでしょう。
最終回:withコロナ~アフターコロナは「利益が出る働き方改革」から「会社を潰さない働き方改革」へ

出社して同じ場所に集まらなければ売上は下がる

一方で今回のことは、雇用される側の人達にも心理的に大きな変化をもたらしました。「人生一度きりだから、自分の夢だった仕事に転職してみようかな」、「意外とリモート作業に自分は向いていたから、思い切ってフリーランスとしてチャレンジしてみようかな」、このように考える人も増えたと聞きます。実際に、会社側は1日も早く通常モードで出社して欲しいと思っているのに対して、社員側からは「まだ通勤が怖い」、「リモートでも仕事はできているので、無理して出社する必要がない」という意見が出て議論している会社もあるようです。

私自身、既に10年近くフリーランスとしてリモートでも「作業」してきています。出社しなければできない作業だけ出社して行い、あとは自宅やカフェで作業をということも、物理的にはできます。しかし多くの会社はそれをせず、そしてこれからも簡単にはできない理由があります。それは「売上が落ちる」からです。

私の場合は独立してから基本的にずっと一人で作業をしていますので、売上はコロナの前でも後でも変わりません。しかし一般の会社は違います。人が二人以上集まれば「1+1=2」ではなく、通常は「1+1=3以上」になり、一般的には同じ場所に集まって仕事をする人が増えるほど業務分担でき、効率が良くなります。一人で仕事をしているよりも圧倒的に売上も上がり、その分、給与も多く払われることになります。

ところが、それを「リモートで」ということになると、そうはいきません。私の肌感覚でいえば、オフィスで集まって作業をしていた会社がリモートで作業をするようになったら、作業自体はまわっても、やはり効率は下がるので売上が2割~3割は下がると思います。だから給与もそれくらい下げるか、もしくはそれくらいの人員調整をしないと、「資金繰り」がまわっていきません。そんな会社が、今年後半から来年にかけて続出していくのではないかと思います。

会社側と社員側がいがみ合った結果、資金繰りがまわらず潰れてしまう会社も、これから出てくるかもしれません。お互いに協力をして、両者が納得する「働き方」を見出し、「いかに会社を潰さずに」この危機から脱するかということを考えなければいけないでしょう。そのための現実的に考えられる解決先はいくつかあります。

解決の鍵は、フリーランスの活用や給料を減額した「リモート正社員」にあり

まずは、会社側が、出社する社員と、リモートで作業する社員に分けて、給与体系も分けてしまう方法です。会社員の多くの方は「今の給料のままでリモートの正社員が理想」と思っていると思いますが、それは前述した理由からも経営上難しいと思います。

実際に、リモートでできる仕事であれば、既に私のようなフリーランスや外注業者はたくさんいますから、正社員の半分の値段でも「ありがたい」と引き受けることでしょう。会社側も「リモート作業でさぼってないかな」と社員を管理したり心配したりする必要もなくなりますし、何より正社員にかかる会社負担分の社会保険料が減ります。社会保険料は会社のコストの中でも大きな負担の一つですから、想像以上に経費の負担は軽くなります。リモート作業にこうしたフリーランスや外注業者を積極的に登用することも、会社を潰さない方法の一つです。

もし現状の職場環境を極力変えないで人事改革をしたいということでしたら、たとえば「今の給与の半額」で雇用枠と作業を集約させて、リモートの正社員の社内募集をかける、というのも一考ではないかと思います。子育てや介護のある人などが、ライフステージに合わせて、雇用形態を行ったり来たりできれば、それはそれで理想的ではないかと思います。

また、社員側の立場に立ってみると、そこまで特定の会社にこだわりはないという人は、私のように、これを機に「フリーランス」に挑戦してみる、というのも人生の選択肢としてありではないかと思います。

そもそも私がフリーランスになったのは、割と作業が速く終わるほうでしたので、「もし一人で3社掛け持ちして仕事ができたら、1社あたりが今の給料の半分の契約金額でも、トータルしたら今の報酬より増えるし、反対に雇用主の負担は半分で済むからWIN-WINだなあ」といつも思っていたからです。今回の在宅勤務で、会社に通うよりも「集中できた」、「やる気が出た」、「全然寂しくない」という人は、フリーランスに向いていると思います。

たとえばフリーランス宣言をして今の会社で業務委託としてリモートの仕事を受けつつ、知り合いのベンチャー企業でまた別の仕事を業務委託で請け負う、という生き方もいいのではないでしょうか。本人にとっては1社に頼らない生き方としてリスクヘッジになりますし、会社側も、1ヵ月の10日から半月分くらいの仕事がある、という時に、こうした人がいれば費用的に助かります。

私も「3年やってダメだったら、また会社員として1から頑張ろう」と思って始め、もうすぐ10年目に突入します。一度きりの人生ですから、自分らしく働ける環境を模索するのも「withコロナ」、「アフターコロナ」のライフプランの一つなのではないかと思います。

「どうしたら自分にも会社にも利益がもたらされて、充実した毎日を過ごせるだろうか」。働き方改革を受け身ではなく積極的にとらえて、皆さんにはこれからの時代をたくましく生き抜いていって欲しいと思います。
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