「ニューノーマル時代」の日常やビジネスとは
まずは、「ニューノーマル」の定義とそれが日常やビジネスにもたらした変化について紹介していこう。「ニューノーマル」とは、New(新しいこと)とNormal(正常、標準、常態)を合わせた造語を指す。日本語では、「新しい生活様式・常態」と訳される。この言葉自体は、2000年代初頭から社会的に大きな事態が起きた時に提唱されてきている。しかし、現在では主に新型コロナウイルス感染症との共生が求められる中での生活様式を指すことが多い。ただ、単に「コロナ前」の日常に回帰するという意味ではない。もはや、以前には戻れない不可逆な変化が起きていることを認識する必要がある。
●ニューノーマルによる日常やビジネス上の変化
「ニューノーマル」は、我々の日常やビジネスに大きな変化をもたらした。具体的に見ていこう。・ソーシャルディスタンス
新型コロナウイルスは、人と人との接触によって感染する。そのため、日常生活でも職場でも、感染防止対策の徹底が求められている。例えば、人と人との間隔を保ち接触を防止する「ソーシャルディスタンス」もその一例だ。もはや、常識化しつつある。
・対面からオンライン
ビジネスが対面からオンラインへと変化したのも「ニューノーマル時代」の顕著な特徴だ。企業の営業活動や打ち合わせは、ほぼオンラインで行われるようになり、窓口や店舗での接客もオンライン相談窓口、チャットボットなどが対応するように変わりつつある。
・DX推進
DX推進は、ニューノーマル時代において企業が勝ち抜くための競争力の源泉となった。クラウドやコミュニケーションツールの導入、統合的なITシステムの構築、業務効率化につながるシステムの導入、WebアプリケーションやAIの活用など、企業はさまざまな切り口でDXに取り組んでいる。
・健康経営
「ニューノーマル時代」では、健康経営がこれまで以上に求められている。健康経営の目的は、従業員の健康へ投資し、中長期的に企業を活性化させながら、業績の向上に繋げていくことだ。その取り組みを進めるためにも、組織体制の構築や制度、施策の改善などを行う必要がある。近年では、健康経営を支えるさまざまなサービスが登場しており、それらを活用する企業も増えている。
・事業継続性の優先
予測困難な事態が次々と生じているだけに、万が一に備えた事業継続性の高い経営体質がより求められるようになった。これも、「ニューノーマル」における大きな変化だ。企業は、あらゆるリスクを想定し、備えるためにもBCP(事業継続計画)を考えていく必要がある。
・ビジネスモデルの見直し
「ニューノーマル」により、ビジネスモデルそのものが見直されている。人と人との接触を防ぐために、営業時間を短縮したり、休業したりする店舗が増えており、特に顕著なのは飲食店やホテル、イベント、アミューズメント施設などだ。
「ニューノーマル時代の働き方」とは?
ここでは、「ニューノーマル時代」において働き方がどう変わったのかを見ていこう。●テレワークの台頭
「ニューノーマル」の働き方として定着しつつあるのが、テレワークだ。社員が一カ所に集まって仕事をするオフィスワークは、コロナウイルスのクラスターとなる可能性がある。また、通勤時の公共交通機関での密接を避けるためにも、テレワークが推進されるようになった。それを後押ししているのが、ITの発達だ。グループウェアやオンライン会議システム、チャットツールなど、非対面でも情報共有やコミュニケーションができるクラウドサービスが多数登場している。それらを活用すれば、オフィスにいなくてもオフィスと同様の業務環境を構築できるようになっている。テレワークは、移動時間の削減や多様な人材の確保、生産性の向上などメリットが大きく、今後もさらに推奨されていくだろう。●柔軟な通勤方法や通勤時間
人との接触・感染リスクを抑えるために、通勤方法や勤務時間にも柔軟な対応・変化が求められている。具体的には、通勤ラッシュの時間帯を避けて出社するオフピーク出勤やバス・電車などの公共交通機関を避けて自家用車で通勤するといった動きが見られる。●非対面コミュニケーションの増加
「ニューノーマル時代」は非接触が求められる。そのため、オンライン会議ツールを使った非対面の会議や、メールやチャットを利用した文字のやり取りなど、非対面でのコミュニケーションが大幅に増加している。ただ、非対面のコミュニケーションは、対面と比べて意思疎通が図りにくいと言われている。非対面でもいかに質の高いコミュニケーションを図るかが、ビジネスにおいて重要なスキルとなる。●業務のオンライン化や自動化業務の増加
感染リスクが高い働き方を避けようと、業務のオンライン化や自動化を図る企業も多くなっている。書類のペーパーレス化(オンラインデータでの共有)やオンラインでの営業活動もその一例と言える。「ニューノーマル時代の働き方」を進めるうえで直面する課題
働き方が変わることで、課題もいくつか生じている。ここでは、それらを取り上げたい。●人事評価や労務管理の煩雑化
「ニューノーマル」の時代では、全員がオフィスに一堂に会して働くわけではないため、勤務態度やプロセスなどがわかりにくい。そのため、人事評価や労務管理が煩雑化しがちだ。より成果を重視した定量的な評価にするといった適正な人事評価制度を構築していく必要がある。●職場環境の整備
テレワークや在宅勤務を実現するには、環境整備が不可欠となる。自宅からであっても、企業のシステムにアクセスが可能なwi-fi内蔵のパソコンの配布などのハード面、システムやデータ共有のためのクラウド導入といったソフト面の両面にわたり整備しなければならない。●セキュリティリスクの高まり
「ニューノーマル時代」の典型的な働き方とされるテレワークだが、情報漏えいやコンピューターウイルス感染などのリスクが懸念される。そのため、セキュリティリスクに対する理解と対策を早急に徹底しなければいけない。●コミュニケーション面
テレワークの普及・定着に伴い、オンラインによる社内会議や研修・社外商談などが増えた。画面越しでのやりとりとなるため、どうしても会話のキャッチボールがしにくい。特に難しいのは、相手の考えや感情を読み取ることであろう。相手の声色や表情がわかりにくいからだ。●自己マネジメント
テレワークや時差勤務は、働く側の自己管理や自己マネジメントも重要となる。例えば、自宅でテレワークを行うとなると、プライベートとの境界線が曖昧であるとともに、家族がいるから仕事が進めにくいケースもある。また、家にこもりがちになり、コミュニケーションも減ってくるだけに、ストレスを感じる人も多いだろう。●オフィスの見直し
テレワークが定着することにより、オフィスに出社する必要もなくなってくる。当然ながら、オフィスの位置付けも変わり、場所も都市部に設ける意味合いが薄れてくるはずだ。実際、シェアオフィスやサテライトなどを利用する企業が増えている。●人事制度や人事管理の見直し
「ニューノーマルな働き方」を進めていくには、人事制度や人事管理も見直しが必要となる。業務のプロセスが見えにくいため、成果や生産性を評価の基準に置くといった制度の改善は必須といえる。「ニューノーマル時代の働き方」を進めるうえで役立つ企業事例を紹介
最後に、「ニューノーマル時代の働き方」を進めるうえで、参考にしたい企業事例を2つ取り上げてみたい。●ヤフー
ヤフーでは現在、約9割の従業員が在宅勤務を行っている。アフターコロナにおいても、オフィスを「働く場所の一つの選択肢」として、必要に応じて出社や在宅勤務ができる環境を整えていく考えだ。その一環としてすでに、「1人で集中」、「みんなで会議やコミュニケーション」など、目的に合わせて最適化された「実験オフィス」の取り組みをスタートさせている。また、コラボレーションスペース「LODGE」では、リモートワークで感じた課題をもとに、社員が、自分に合った家具を選んで組み立てられるサービス「LODGE Remote Work Kit」を提供している。●富士通
富士通では、2017年からテレワーク制度を導入していたものの、利用者は全体の4割程度に留まるなど、伸び悩んでいた。ところが、2020年3月に緊急事態宣言が発令されたことで、在宅勤務への切り替えが余儀なくされることとなった。その3ヵ月後、同社は新たな働き方のコンセプト「Work Life Shift」を発表。これは、「仕事」と「生活」をトータルにシフトし、Well-beingを実現していこうという考え方だ。最適な働き方を実現する「Smart Working」、働く場所を自由に選択できる「Borderless Office」、新たな企業文化を創る「Culture Change」の3つの柱で構成されている。この取り組みを進めるにあたり、同社が重視したことは3つある。1つ目が、従業員の声に真摯に向き合い応えること。2つ目が、トップのコミットメント。そして、3つ目が人事、総務、ICT部門が三位一体で推進していくことである。同社ではDX企業への変革を加速させ、その過程で得た多くの知見をお客様に還元することが、自らの使命であると捉え、「ニューノーマル時代」の働き方改革に積極的に挑んでいる。
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