「人手不足関連倒産」は2023年同時期の2.1倍に急増
労働人口減少の影響が企業経営に与える影響が大きくなっている。東京商工リサーチが発表した調査データによると、2024年1~5月の全国の「人手不足」関連倒産は累計118件で、前年同期(56件)か110.7%増となった。この数値は、同社が調査を開始した2013年以降最多で、2019年(65件)を大きく上回って更新し、初めて100件を超えた。「従業員退職」と「求人難」は2倍に増え、経営影響が顕著に
先述の「人手不足」関連倒産118件の主な倒産要因の内訳として、最多は「求人難」の50件(前年22件からの127.2%増)、以降は「人件費高騰」が36件(前年21件からの71.4%増)、「従業員退職」が32件(前年13件からの146.1%増)となった。人手不足を象徴するように、「従業員退職」が前年同期比2.4倍、「求人難」が同2.2倍と件数が大幅に増えており、企業が人材確保に苦心していることがうかがえる。「2024年問題」に直面する建設業と運輸業は倒産件数が急増
次に、同社が「人手不足」関連倒産企業を産業別に分類したところ、最も多かったのは「サービス業」の38件で、構成比は32.2%だった。2位は「建設業」の30件(構成比25.4%)、3位は「運輸業」の25件(構成比21.1%)といずれも前年同期比から件数が増加していた。その背景には、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された“2024年問題”の影響があると考えられる。建設業と運輸業は業界的な慣行として長時間労働が常態化していたが、現在は労働時間を遵守する方向へ「働き方改革」を進めている。そのプロセスを進める過程において、人材確保が深刻な問題の一つになっているのではないかと考えられる。雇用の流動化が進む中で人材を確保するためには、賃上げや福利厚生の充実は避けられない。東京商工リサーチによると、賃上げ原資を確保できない企業も多く「人手不足」関連倒産はしばらく増勢をたどる可能性が高いとのことだ。外部環境の変化が厳しい中で人材定着や新たな人材確保を進めるには、ワークライフバランスヘの配慮やキャリアパスの支援など、働きがいを高める内部施策の強化が今後ますます重要になるだろう。