日本の労務管理は、いままさにバージョンアップの必要性に迫られています。終身雇用制の崩壊や転職者の増加、新卒一括採用の終焉など、これまでの労務管理機能では対応できないことばかりが起こっています。人事の現場でも「このテーマはどこの部署で対応しよう」、「世の中こうなっているけれど、どうする?」といった議論が盛んに行われています。日本の労務管理は今年、バージョンアップできるのでしょうか。今年の労務管理のゆくえに迫ります。
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人事では「分野横断型」の仕事が増えている

最近、人事の仕事の中で、これまでの枠に当てはまらない仕事が増えてきたと感じています。特に2019年からその傾向が顕著になったと感じられます。

例えば、採用者の定着と早期戦力化を図る「オンボーディング」の取り組みがあります。オンボーディングは採用・育成・労務管理というすべての領域に関係する仕事です。人材定着のためには、採用時にどれだけ自社について良い部分も悪い部分も含めて伝えられているかがポイントです。そして、入社後は早期に定着してもらうために研修やOJTを行います。さらに、早期離職のリスクを発見して、場合によっては面談し、離職防止をはかることもあります。

同じような分野横断型のテーマに「エンゲージメント」があげられます。エンゲージメントの現状を把握するという部分においては、企業によっては従業員調査や面談といった労務管理の範疇で行われています。それにともない、採用前後にエンゲージメントを高める取り組みも必要です。その手段として、ワークショップの実施や仕事へのアサインなど、育成や配置の要素が絡んでくる場合もあります。

人材育成の手法も変化してきています。これまでは集合研修が中心的な手法でしたが、より「経験による育成」が重視されるようになってきています。経験による育成には、配置・ローテーション・1on1・評価などの取り組みが必要です。これらは研修担当者がいまであまり関与してこなかった分野です。このように、人事の現場では、分野横断型の仕事が徐々に増えてきています。

一方、多くの大企業では、これまで採用、育成、労務管理の仕事は分業で行われてきました。そのため、「どの部署が、どこまで対応すればよいかわからない」、「どの部署にも当てはまらないから対応していない」という事態が起きています。

たまに外部のベンダーの方から、「エンゲージメント」や「オンボーディング」に関する飛び込み営業の電話をいただきます。「エンゲージメント」にしても「オンボーディング」にしても、取り組みたいのはやまやまだけれど、社内の体制が追い付いていないし、そもそもまだ取り組むかどうか、なんとも言えないというのが本心です。

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