第4回HRテクノロジー大賞 ラーニングサービス部門優秀賞を受賞し、日本のリーダーシップ開発では多くの支援実績を誇る株式会社マネジメント サービス センター(MSC)と、世界最大手の人材コンサルティング会社DDI社は、世界90カ国以上、23,000人以上のフロントライン・リーダーに調査を行った。その結果、企業が次世代のリーダーシップ開発において抱える多様な課題が浮き彫りになった。
HRプロでは、DDIジャパンのジェネラルマネジャーであるケン・グラハム博士と、MSCの取締役である脇田幸子氏に、フロントライン・リーダーを取り巻く、グローバル及び日本における課題や、リーダーを早期に見極め育成を加速させるための方法について伺った。
激変するビジネス環境の中、存在感を増すフロントライン・リーダー
寺澤康介(以下、寺澤) 本日はインタビューをお受けいただき、ありがとうございます。DDI社は、全世界90カ国以上の23,000人以上のフロントライン・リーダー(初級・中級管理職)の調査を実施されていますね。まずはフロントライン・リーダーがなぜ今、企業にとって重要なのか教えてください。寺澤 リーダーの重要性については多くの企業が認識するところですが、なぜ今、フロントライン・リーダーの役割が特に重要度を増しているのでしょうか。日本企業からは、昨今では現場による素早い判断が必要な状況が増えたとの声が聞かれます。変化の激しいビジネス環境の中でより機敏に動くために、現場に近いフロントライン・リーダーの重要性が増しているのではないかと推察しますが、いかがでしょうか。
グラハム まさにその通りです。以前はシニアレベルのリーダーが行ってきたレベルの意思決定を、今はフロントライン・リーダーが行っていますし、現場で働く人々の価値観も多様化しています。フロントライン・リーダーの仕事は、以前よりもずっと複雑になってきているのです。
脇田幸子氏(以下、脇田) 激変する環境の中、トップの方針が変更されるスピードも加速しています。新しい戦略をスピーディーに実行に移していくためにも、フロントライン・リーダーの強化は不可欠です。
新任リーダーの半数以上が、事前トレーニングなしで就任している
寺澤 それほど重要なフロントライン・リーダーですが、課題が多くあるようですね。調査結果を拝見した中で、「リーダーの半数以上は放置されている」というデータに驚きました。グラハム 私も驚き、同時にがっかりしました。未だに多くの企業では、初めてフロントライン・リーダーになる人が、体系立ったトレーニングをまったく受けることのない状態で、管理職の地位に就いているのです。
今、ほとんどの国において、企業価値は無形資産によって測られます。ここでいう無形資産とは、どのようなアイデアを持ち、どのようなイノベーションがなされているのか、ということですが、それらを生み出すのは人材に他なりません。にもかかわらず、その人材の8割もの人々を管理するフロントライン・リーダーが、リーダーシップスキル向上のためのトレーニングを受けることができていないのですから、これは変えていかねばなりません。
脇田 研修はよく実施されていると思いますが、残念ながら、半ば昇進イベントとして形式化されてしまっているケースもあります。必ずしもフロントライン・リーダーに必要な能力の特定、そして開発にまでは至っていないのが現状です。
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