昨年よりも早いペースで企業の内定出しが進んでいるようですが、経団連の指針による選考解禁日である6月1日を迎え、内定保有者はこの1日だけで一気に増えたはずです。「面接」という表現を使わず、「面談」「懇談会」「質問会」等の名目で進む大手企業の実質的な面接選考は今年も4月くらいから繰り広げられ、6月1日、さらには6月2日・3日の週末も含めて、形式的な最終面接・確認面接が行われ、かなりの学生が即日内定を得た模様です。6月2日・3日の週末を利用しての選考を実施しなかった企業は、6月4日の月曜日になって、学生を取り巻く環境(内定保有状況)が大きく変わっていることにとまどった企業もあることでしょう。
HR総研では、6月後半に企業、学生双方に採用・就職活動動向調査を行いますので、その結果はまた来月以降にお知らせします。
プレオープン前からデッドヒート
6月1日には、2019年卒採用のための面接選考が解禁されるとともに、2020年卒向けの就職ナビが一斉にプレオープンしました。採用広報解禁日の来年3月1日からは、20年卒向けの採用情報が公開され、プレエントリーの受付も開始されます。これをグランドオープン(正式オープン)と称し、それまでの状態をプレオープンと呼んでいます。現在は、19卒向けの採用情報が参考データとして公開されるとともに、インターンシップの募集情報の閲覧とそのエントリーができる、いわば「インターンシップナビ」の色彩が強くなっています。今年は、6月1日の20年卒プレオープン前から、就職ナビの2強である「リクナビ」と「マイナビ」の競争が過熱していました。通常、就職ナビの会員登録は、6月1日のプレオープン後からになりますが、「リクナビ2020」はプレオープンサイトの予告ページ上でスマートフォンの新卒向け就活準備アプリ「リクナビ2020」(通称リクナビアプリ)を紹介し、ダウンロードして事前に会員登録をすることを呼び掛けるという行動に出たのです。インターンシップ関連の基礎知識を解説した記事をはじめとした就活準備ガイドの閲覧のほか、6月開催のインターンシップイベントへの参加予約も可能となっています。
「マイナビ2020」もすぐに追随し、プレオープンサイトの予告ページ上で新卒向けインターンシップ・就活アプリ「マイナビ2020」を紹介し、事前の会員登録を促しました。「マイナビ2020」では、リクナビアプリと同様の各種記事が充実しているほか、6月1日以降に掲載予定のインターンシップ募集企業の一部について、募集の詳細情報の閲覧やエントリーはできないものの、気になる企業を「キープ」することで、公開後にすばやく閲覧できる機能を提供するなど、差別化を図っています。
昨年までは6月1日のプレオープン後に公開していたアプリをプレオープン前に公開し、プレオープン後にWEB上で公開していた記事や機能を、事前にアプリで提供してしまうというものです。WEBかアプリかの違いだけですので、ここまで来るとWEB上で展開するのと何が違うのだろうという気がしないでもないです。特に文系学生においては、就活に関するWEB閲覧は、PCよりもスマホのほうが多い現状を考えると、WEBかアプリかの違いはないに等しいといえます。
プレサイトの情報公開日(6月1日)や掲載できる情報の範囲などは、就職ナビ提供会社(就職情報会社)で構成される懇話会で申し合わされているだけでしょうから、インターンシップ情報の公開とそこへのエントリー機能の提供については6月1日という制約を設けつつも、就活準備記事や就職ナビ提供会社主催のインターンシップイベントへの参加予約については、6月1日以前でも認めるように変更すればよいのではと思います。今年のインターンシップイベント日程で早いものでは6月3日なんて企画もありましたから、イベント情報の公開と予約は5月からできないと学生にとっても不便だと思われます。
膨れ上がったインターンシップ情報
6月1日にプレオープンした「リクナビ2020」と「マイナビ2020」に掲載されているインターンシップ情報を見てみましょう。(2018年6月1日現在)まずは、「リクナビ2020」です。インターンシップ情報の掲載社数はなんと1万162社と、初めて1万社を超えています。さらに、そのうち応募可能な企業数は1万157社と、わずか5社を除いたほぼすべての企業が「リクナビ」から応募が可能となっています。昨年の「リクナビ2019」の掲載企業数は8,618社(2017年6月6日時点)でしたので、1,500社以上も多くなっていることになります。
一方の「マイナビ2020」のインターンシップ掲載企業数は4,287社、うちエントリーまで可能な情報が4,226社と、こちらもエントリー可能な企業割合が98%を超えています。昨年の「マイナビ2019」の掲載企業数は3,177社(同)でしたので、掲載社数は昨年よりも1,000社以上増えています。大企業では、すでにインターンシップを実施しない企業のほうが圧倒的に少なくなっていますが、中堅・中小企業においてもインターンシップは、セミナーや会社説明会と同様に、採用活動の基本的な活動の一つとなってきているようです。
8月のインターンシップ情報だけで6,000社
ここでは「リクナビ2020」を例にして、インターンシップ情報の掲載内容についても詳しく確認してみましょう。開催月別の企業数を見てみると、6月766社、7月 1,703社、8月 5,921社、9月 3,832社、10月 1,157社、11月 1,061社、12月 1,373社、2019年1月 1,545社、2月 3,669社、3月以降 203社となっています[図表1]。なお、現時点では、秋以降のプログラムについて実施月の表記はあるものの、具体的な日程の記載がなく、「随時」の表記になっている情報が多くあります。その状態で学生のエントリーを先に受け付け、日程が決まり次第案内するというフローをとっている企業が少なくありません。このフローの場合、学生にとってみれば、日程が合わなければ本来提供することのなかった個人情報を先に提供していることになります。企業にとってみれば、自社に関心のある学生のリストを入手することができる都合のいいフローになりますが、明らかに間違ったフローだと言わざるを得ないのではないでしょうか。
席巻する1Dayインターンシップ
次に、実施日数を見てみましょう[図表2]。「1日」とする企業は7,222社で、全掲載企業に占める割合は71%と7割を超えます。次いで「2~3日程度」が1,945社(19%)、「1週間程度」が1,092社(11%)と続き、「2週間程度」となると365社(4%)にとどまります。圧倒的に「1日」タイプ、いわゆる1Dayインターンシップが大勢を占めています。特に顕著なのが、サマーインターンシップの在り方です。1~2月のウインターインターンシップはかねてより「1日」タイプのインターンシップが多くありましたが、8~9月のサマーインターンシップでは、かつては「1週間程度」のほうが多い状況でした。ところが、「リクナビ2020」掲載のインターンシップ情報を「開催月」と「実施日数」で掛け合わせて検索してみると、8月に実施予定のインターンシップでは、「1週間程度」が849社(14%)と全体より3ポイントほど高くなっていますが、「1日」は3,883社で66%にも上ります[図表3]。さすがに全体よりは5ポイントほど低くなっていますが、「1週間程度」の実に4.5倍以上にもなります。数年前までは「1週間程度」のほうが多かったなんてとても考えられない数字の開きになっています。