中小事業所の産業保健活動で重要になるのが「産業医」。従業員50~999人規模の中小事業所で選任が義務付けられているのは、「嘱託(非常勤)産業医」です。(有害業務にあたる事業所の場合は、50~499名規模。)現在、嘱託産業医を選任していない事業所や、選任していても「名義貸し」などで、希望に合った産業保健を行えていない事業所では、産業医を選任して契約することが必要になります。ここでポイントになるのは、「事業所と産業医の最適なマッチング」です。

※本稿は、鈴木友紀夫『企業にはびこる名ばかり産業医』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。
第7回 「健康経営」の成功を決める企業と産業医の相性
中小事業所の産業保健がうまく機能するかどうかには、実は事業所と産業医の〝相性〟も、非常に大きい要素になります。その理由は、事業所もそれぞれに異なるように、産業医にもさまざまな人がいるからです。

事業所でいえば産業保健の活動経験のあるところ、ないところの差もありますし、そこにかけられるコストや人員、意気込みも異なります。まずは最低限のことから始めて様子をみたいというところもあれば、会社の命運をかけて、従業員の心身の健康増進にしっかり取り組みたいというところもあります。

最低限のことから始めたい事業所に、大企業の専属産業医を経験してきた産業保健のプロフェッショナルという感じの産業医が入っても、意見がなかなかかみ合わないものです。産業医があれもこれもと提案しても、事業所は戸惑うばかりで、結局は産業医が失望してやめてしまうこともあります。

逆に、積極的に産業保健に取り組んでいきたい事業所が、産業医としての活動経験がない(浅い)産業医を選んでしまうと、「期待したようなアドバイスをもらえない」「メンタルヘルス講習なども頼みたいのに、対応してもらえない」といった不満につながってしまいます。

他にも、長く嘱託産業医をしていても、実質は定期健診業務しかしたことがない年配の医師や、産業医の経験は少ないけれど、意欲があって同年配の従業員たちと信頼関係をつくるのがうまい若手の産業医、といった人もいます。

つまり一口に産業医といっても経験や知識、意欲の多寡があり、人柄や考え方もそれぞれ違っているのに、それは外から見ただけではわからないわけです。そのため、現状のような地域の医師会からの紹介といった選任方法だけでは、どうしてもミスマッチが起こりやすくなります。
 
私は、これから中小事業所にも健康経営を浸透させていくのであれば、事業所のニーズや産業保健レベルに合った産業医選任や、事業所と嘱託産業医のマッチングを支援するしくみが必要ではないかと考えています。

そうすれば「産業医を選任したいのにできない事業所」や、「産業医活動をしたいのにできない医師」が減り、約6万人の産業医有資格者という社会資源の有効活用にもつながります。

それが日本医師会など産業医認定を行っている組織や、全国の都道府県にある「産業保健総合支援センター」といった公的な機関で行えるようになれば理想ですが、残念ながら、まだそうした動きはありません。現在のところは、民間の産業医紹介サービスも上手に活用するというのが、現実的な対応策になるでしょう。

ちなみに当社は、医師向けの人材斡旋事業が基盤にあるため、全国に約2万2,000人の登録医師がいます。そして医師一人ひとりの経歴や人柄、意欲といった部分も十分に把握しているため、地域にかかわらず、各事業所のニーズに合った最適な産業医選任を提案することができます。

※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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