厚生労働省の研究班の調査によると、うつ病で休職した社員のうち47.1%が5年以内に再発、再休職を取っていました。また、休職期間は1回目の平均107日に対し、2回目は平均157日と1.5倍長くなっています(出典:平成二十八年度労災疾病臨床研究事業費補助金「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」)。この原因のひとつに、休職・復職対応が適切でないことが挙げられます。

※本稿は、鈴木友紀夫『企業にはびこる名ばかり産業医』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。
第8回 メンタル不調者の休職・復職対応を整備しよう
中小事業所の産業保健活動のなかでも、いちばん重い業務が、メンタル不調者の休職・復職対応です。本人、上司、人事、産業医、主治医と多くの関係者が関わるうえ、うまくいかないと復職後に再び体調が悪化し、休職に逆もどりしてしまうケースも多く見受けられます。

特に中小事業所では、休職・復職を繰り返す従業員がいると、上司や人事なども含めて職場全体に負担がかかるようになりますから、頭を悩ませている人事労務担当者も多いのではないでしょうか。

そもそも、うつ病などのメンタル疾患の発症・悪化には、さまざまな要因が関わっています。慢性的な長時間労働や大きな負荷のかかる過重労働がうつ病のリスクを高めることは知られていますが、単に仕事がハードだからといって、それが必ずうつ病につながるわけではありません。厳しい仕事でも、働く人がそれによって成長ややりがいを感じているときはメンタル不調にはなりにくいものです。反対に、仕事の質や量がそれほど重いものでなくても、手応えや成果を得られないでいると、うつ病などを発症することがあります。仕事の他にも、本人の体質や考え方の傾向、家庭の状況などが、発症に関わることも少なくありません。

また職場の環境では、一般には休職者支援が手厚いところのほうが、メンタル不調者が少ないように思われますが、現実は必ずしもそうとはいえません。私たちの経験でも、2年とか3年の休職が認められるといった〝手厚い〟事業所のほうが、長期の休職者が何人もいたりします。逆に、メンタル不調者が出るとすぐに首を切ってしまうような事業所は、数値だけでいえば「メンタル休職者ゼロ」ということになります。

もちろん後者のやり方がいいわけはありませんが、単に制度として休職を認めるだけでは休職・復職支援としては不十分ということです。

従業員がメンタル不調で休職する場合は、主治医に適切な治療をしてもらうとともに、本人にも休職中の過ごし方やストレスへの対処法などについて産業医が指導を行う。そして回復の状況を見極めながら、復職の可否を判定。復職が可能になったら上司や人事が受け入れ体勢を検討し、最初は短時間の慣らし勤務から始め、少しずつ常勤勤務に移行する。復職後も体調が安定するまで、上司や産業医が面談などのフォローを行う──。

メンタル不調者の「確実な復職」のためには、このように休職から復職までの一連の流れを、関係者が一丸となって進めることが必要なのです。

そこで、私たちはこの複雑な休職・復職支援を、専門知識のない中小事業所の人事労務担当者でも行えるように、「メンタルヘルス休職・復職マニュアル」をまとめ、希望に応じて事業所に提供するようにしています。

①休職の申出~休職中
②体調の回復~復職可の診断書の作成
③復職の可否の判断~職場復帰プランの作成
④復職
⑤復職後のフォローアップ

上記5つのステップをもうけ、各段階で人事や産業医、上司といった関係者がどういうアクションをとればいいか、必要書類は何か、などをわかりやすくまとめています。

こうしたフォーマットがあれば、人事労務担当者は迷うことなく必要な業務を行うことができますし、メンタル疾患を経て復職した従業員も、安心して仕事に向き合えるようになるはずです。

※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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