ProFuture代表の寺澤です。
今年も3月1日に日付が変わるとともに、メンテナンス告知画面になっていた各社の就職ナビがグランドオープンし、2019年新卒採用が正式に解禁を迎えました。2019年用の採用情報が公開されるとともに、プレエントリーの受付が開始されたのです。
風物詩ともいわれている就職ナビのグランドオープンは無事に進められたのでしょうか。『リクナビ2019』は、グランドオープン直前から学生を呼び込むべく、2月28日23時30分から時間限定でエントリーシート対策のコンテンツを公開し、0時を迎えるとともに閲覧中の学生には画面切り替えの案内を表示し、グランドオープン後の画面に誘導していました。かなりのアクセスが集中したものと思われますが、スムーズに移行ができたようです。一方、就職ナビの2強を形成する『マイナビ2019』は、今年もグランドオープンとともにサイトにアクセスしづらい状況が発生してしまったようです。ただし、昨年同様、この事態は数分で解消したようです。最新の混雑状況を随時Twitterで案内するとしていましたが、グランドオープンのお知らせの後、最初の投稿は0時13分で「ほぼアクセス集中は解消しております」でした。グランドオープンと同時にアクセスできない状況に陥ったのであれば、もう少し小刻みに投稿があってもよかったのではないかと思います。リアルタイム配信している『マイナビTV(ライブ)』では、グランドオープン直後にアクセスが集中していることに少しだけ触れていましたが、番組内で頻繁には触れづらいでしょうから、やはりTwitterでしょうね。
第84回 2019年新卒採用解禁!就職ナビ2強の動きは?

「よりフィット感のある企業との出会い」がテーマの『リクナビ2019』

『リクナビ2019』と『マイナビ2019』をそれぞれ見てみましょう。まずは、2018年卒向けのサイトと新しい2019年卒向けのサイトでは何が変わったのかを確認してみます。
まず『リクナビ2019』からです。「よりフィット感のある企業との出会い」をテーマに、企業の検索軸に職場環境に関する項目が大幅に追加されています。「制度や特徴」条件を見てみると、「月平均残業時間」「有給休暇の平均取得日数」「女性育休取得率」「男性育休取得率」「新卒採用者の定着率」「新卒採用者の男女比」「平均勤続年数」「平均年齢」「女性役員比率」「女性管理職比率」など、かなり細かく検索できるようになっています。ちなみに、3月4日現在の掲載情報3万154社中、「休暇・残業」の検索条件を「月平均残業時間:15時間以下、有給休暇の平均取得日数:15日以上、女性育休取得率:100%、男性育休取得率:20%以上」で検索してみると、16社ありました。ただ、その検索結果の中に、焼酎「鍛高譚」のメーカーである合同酒精株式会社らと並んで「厚生労働省」が含まれるのには、違和感を覚えざるを得ません。本省は不夜城のように灯が煌々(こうこう)とついているにもかかわらず、「月平均残業時間:15時間以下」とは…。
余談にそれましたが、そのほか「地域」条件では、「選択した地域に勤務地がある企業」「選択した地域にのみ勤務地がある企業(勤務地限定)」「選択した地域に本社がある企業」という条件から絞り込むことができるようになっています。「選択した地域にのみ勤務地がある企業(勤務地限定)」という切り口が斬新ですね。従来の本社・勤務地検索では、それ以外の地域への配属・異動もあり得るわけで、地域限定で就職先を考えるのであれば非常に重要な条件です。これまでなかったことのほうが不思議ともいえます。
そのほか、これまでの就職ナビ利用学生の膨大な行動ログをビッグデータとして解析し、今後興味を持つ可能性のある業界の企業情報をリコメンドして表示するなどの機能も搭載されたようです。

障がい者のための就職情報サイト『マイナビ2019 チャレンジド』スタート

一方の『マイナビ2019』は、企業ページの取材テーマに、これまでの「仕事・キャリアパスについて伝えたい」「事業について伝えたい」「プロジェクトストーリーを紹介したい」「採用活動について伝えたい」「研修・教育について伝えたい」「福利厚生・施設を紹介したい」に、さらに「ユニークな会社制度について聞いてみた」「すごい社員にいろいろ聞いてみた」「思い切って経営者に突撃してみた」「こんなところにこの会社あり」が追加されました。
そのほか、障がい者のための就職情報サイト『マイナビ2019 チャレンジド』が新たに立ち上げられました。障がいのある学生に向け、就職活動に役立つコンテンツや企業情報、取材情報を公開しているほか、検索条件では「勤務地の配慮がある」「転勤への配慮がある」「勤務時間の配慮がある」などの「障がい者への配慮」項目、「上肢障がい」「下肢障がい」「体幹障がい」「運動障がい」などの障がい種別による「雇用実績」項目が用意されています。3月4日現在、95社の情報が掲載されています。

中小企業の掲載割合が5割を超える『リクナビ2019』

さて、就職ナビ2強の今年の掲載企業数の状況はどうでしょうか。『リクナビ2019』は、3万154社と昨年の『リクナビ2018』スタート時の2万7,558社からさらに2,600社ほど伸ばしています。『マイナビ2019』も、2万2,610社と昨年の『マイナビ2018』スタート時の1万9,902社よりも2,700社以上も多くなっています。2社の掲載企業数を合計すると、5万3,000社近くにもなります。もちろん重複して掲載している企業もあるでしょうから、ユニークな掲載社数は単純に合計したこの社数になるわけではありませんが、新卒採用を実施している企業に占める網羅率はかなり高いものになっていると思われます。かつて、全国で新卒採用をしている企業数は2万~3万社程度だろうと推定されていましたが、全国版の就職ナビを活用していない企業も少なくありませんから、実際にはそれよりもはるかに多い社数であることが分かります。
二つのサイトの掲載企業の内訳を比べてみたいと思います。まずは従業員数でみた企業規模別の掲載企業数の比較です[図表1]
第84回 2019年新卒採用解禁!就職ナビ2強の動きは?
『リクナビ2019』と『マイナビ2019』では、全体の掲載企業数で約7,500社も『リクナビ2019』のほうが多くなっていますが、「500~1,000人未満」「1,000~3,000人未満」「3,000人以上」では逆に『マイナビ2019』のほうが多くなっています。「100~500人未満」の企業数は『リクナビ2019』のほうが多くなっていますが、それも300社ほどにすぎません。圧倒的に差があるのは「100人未満」の中小企業の掲載企業数です。『マイナビ2019』の7,591社に対して、『リクナビ2019』は1万5,174社とほぼ倍の掲載企業数になります。全体の掲載企業数に占める「100人未満」の中小企業の割合は、『マイナビ2019』の33%に対して、『リクナビ2019』は50%を超えています。今年も『リクナビダイレクト2019』からの転載情報がかなりの割合を占めているものと思われます。『リクナビダイレクト2019』からの転載情報は、検索結果画面において純粋に『リクナビ2019』に出稿した企業の後に表示されます。それを頼りに検索結果を見てみると、「100人未満」の企業1万5,174社のうち、実に1万1,000社以上は『リクナビダイレクト2019』からの転載情報と推測されます。
次に、本社所在地別の掲載企業数を比較してみましょう[図表2]。「北海道・東北」「関東」「北陸・甲信越」「東海」「近畿」「中国・四国」「九州・沖縄」のすべてのブロックで『リクナビ2019』の掲載企業数が『マイナビ2019』を上回っています。
第84回 2019年新卒採用解禁!就職ナビ2強の動きは?
ただし、全体の掲載企業数に占める各ブロックの割合を見てみると、『リクナビ2019』は「関東」と「北陸・甲信越」に本社を置く企業の割合が『マイナビ2019』よりも少なく、「関東」の割合は全体の4割を切っています。『リクナビ2019』は「100人未満」の企業の掲載が多い分、地方企業の掲載割合が多くなっているようです。

解禁とともに早速浮上した「学歴フィルター」と「性別フィルター」問題

プレエントリーや説明会申し込みが解禁となったばかりだというのに、早くもネット上で話題になっていることがあります。その一つが「学歴フィルター」です。きっかけは、帝京大学 文学部 史学科に所属する女子学生のTwitterでのつぶやきでした。就職ナビである企業の説明会に申し込もうとしたところすべて「満席」表示だったため、試しに自分の登録情報を帝京大学から早稲田大学に変更してみたところ、すべて「受付中」に変わったというものです。実際の説明会画面のキャプチャともに投稿され、3万件以上もリツイートされています。さらに、日程やイベントタイトルから該当企業名まで推測されてしまっています(ここでは、推測されて流通している企業名は伏せさせていただきます)。
これは、就職ナビの説明会申し込み受付画面の機能(オプション)で、条件に合致する大学群と、条件に合致しない大学群で受付数の上限を分けて設定していたために起こった事象です。条件に合致しない大学群を受け付けない設定にしていたわけではないのでしょうが、対象となる学生数と受付上限数のバランスが極端だったため、このようなことが露見し、学生の間で「学歴フィルター」だと話題になったものです。本人は最初の投稿だけで、あとは周りが拡散し、大きな話題になったケースです。
もう一つは、「性別フィルター」です。こちらはフリュー株式会社と企業名も公表されています。プリントシール機やスマホゲームなどを展開している会社です。こちらも女子学生からの投稿がきっかけでした。説明会に申し込もうとしたところ、すべて「満席」表示だったにもかかわらず、同じ大学でも男子学生だと「受付中」表示の説明会もあるということで“証拠”の画面キャプチャとともに発信されています。こちらも社名の投稿には1万件以上のリツイートがされています。炎上の影響もあってか、今では「性別フィルター」も外されて、この学生も申し込みが可能な状態になっているとのことです。
フリュー株式会社を調べてみると、従業員の男女比はほぼ1:1ですし、新卒採用実績も毎年1:1に近く、前年は逆に女子学生の採用数のほうが多くなっています。女子学生を排除するための「性別フィルター」ではなく、ともすれば女子学生の応募数が極端に多くなり、「できれば男子学生にも応募してほしい」との思惑が本音ではないかとも思われます。こちらも就職ナビの説明会画面とのことですが、就職ナビの会員登録時に性別を選択登録する箇所はなく、例えば『マイナビ2019』では、「無料の女子学生のための情報提供を希望する」というチェックボックスがあるだけです。チェックをしない女子学生もいるでしょうし、逆にふざけ半分にチェックをする男子学生もいるかもしれません。就職ナビは、厳密な性別データは保有していないものです。
「売り手市場」が叫ばれながらも、就職活動に不安を抱く学生も少なくありません。今回紹介した2件の例のような、無用な炎上は採用活動で致命傷になりかねません。説明会受付画面の設定に当たっては、ぜひ細心の注意を払ってください。ちなみに、性別による受付上限数の設定は、仮に男女同数の設定であったとしても設定していること自体が違反になりますので、お気を付けください。
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