内定出しを早める中堅・中小企業
最後に、内定出しの開始時期について確認します。全体では、「2025年4月」が19%で最も多く、次いで「2025年7月以降」が17%で続きます[図表12]。「2025年1月」と「2025年3月」がともに10%、「2024年6月以前」も8%と1割近くあります。これまでのデータで、セミナーや面接の開始時期において「2024年6月以前」が増えていることは確認してきましたが、内定出しさえも「2024年6月以前」に行われるケースが増えています。内定出し開始のピークである「2025年4月」前、つまり「2025年3月」までに内定出しを開始する割合はちょうど50%(前回調査の同時期48%)となっており、「2025年4月」はピークでありながら既に遅いグループに位置することになります。![[図表12]内定出しの開始時期](https://img.hrpro.co.jp/images/tokushu/hr_tokushu_photo_4233_20_W80V3O.png)
一方、中小企業では、「2025年7月以降」が29%で最も多くなっています。これは例年どおりの傾向で、前回調査の同時期でも31%が「2024年7月以降」としていました。次いで多いのは「2025年4月」(22%)で、「2025年3月」までに内定出しを開始する割合は37%と4割を下回るなど、他の規模とは明らかに異なる傾向が見て取れます。早くから採用・選考活動を展開しても、同時期に大企業や中堅企業と応募者・内定者を奪い合うのでは勝ち目が薄く、大企業等の選考がある程度落ち着いてから、自分たちの選考を本格化したほうが効率的だと考えている企業が少なくないようです。
内定出しの開始時期を前年と比較したのが[図表13]です。全体では、68%が「ほとんど変わらない」と回答しています。ただし、「1カ月超早める」(18%)をはじめ、「2週間超~1カ月早める」と「2週間以内早める」までを合計した“早める派”は28%と3割近くとなる一方、「2週間以内遅らせる」と「2週間超遅らせる」を合わせた“遅らせる派”は5%にとどまり、内定出しの前倒し傾向がはっきりと確認できます。
![[図表13]内定出し開始時期の前年比較](https://img.hrpro.co.jp/images/tokushu/hr_tokushu_photo_4233_21_9L4CL0.png)
一方、中堅企業では“早める派”は33%と3割を超えるのに対して“遅らせる派”は3%にとどまります。中小企業においても、“早める派”27%に対して“遅らせる派”は2%にすぎません。中堅企業・中小企業ともに、内定出しを遅らせようとする動きは鈍く、極端な早期化傾向が見られます。
以下、“早める派”と“遅らせる派”それぞれのフリーコメントを抜粋して紹介します。
【早める派】
・学生に聞いても早期化が始まっているのを感じる。優秀な学生は主戦時期が3年生の夏になっているため、以前よりも確実に早まっている(301~1000名、商社・流通)
・前年は早期選考に学生が集まらなかった(301~1000名、メーカー)
・早期選考を実施するため(301~1000名、メーカー)
・就活の早期化に伴い、やむを得ず(300名以下、商社・流通)
・内定辞退を見越して(300名以下、メーカー)
・インターンシップ実施に伴う対策(301~1000名、メーカー)
・市況感に合わせるため(301~1000名、メーカー)
・選考が早まるため(1001名以上、メーカー)
【遅らせる派】
・離脱防止のため(1001名以上、メーカー)
これまで見てきたように、2026年卒採用においては、特に中堅企業の動きがこれまでと大きく変わろうとしています。応募者・内定者の確保、さらには内定者の歩留まりはどうなるのか、今後も中堅企業の動向に注目していきたいと思います。
次回は、2024年12月に実施した「2026年新卒学生の就職活動動向調査」の結果を紹介します。