「人事や社員の対応・人柄」も内定承諾の決め手に
内定承諾を決めた理由を見たもの(複数回答)が、[図表14]です。文系のトップは「仕事内容」(63%)で、次いで「給与・待遇」(57%)、「事業内容」(56%)、「勤務地」「会社の雰囲気」(ともに52%)、「福利厚生」(51%)と続き、ここまでが半数以上の学生から選択された項目となります。理系も上位の項目は文系とほぼ同様で、トップは「仕事内容」(71%)、次いで「事業内容」(60%)、「給与・待遇」(58%)、「勤務地」(57%)、「福利厚生」(55%)と続きます。「会社の雰囲気」(49%)もほぼ半数の学生から選択されています。
昨年あたりから「初任給」の大幅な引き上げが話題になっていますが、「初任給」を選択した学生も、文系35%、理系40%と上記項目に次いで高い割合となっています。
また、「人事の対応・人柄」と「社員の対応・人柄」については、文系・理系ともにそれぞれ28%、26%と3割近くの学生から選択されており、これは決して低い割合ではないことに留意すべきです。インターンシップに始まり、セミナー・説明会、面接、各種連絡窓口、内定者フォローなど、人事採用担当者と応募学生は数多くの接点を持ちますので、内定承諾を決める判断材料になることは容易に想像できるでしょう。ただし、人事採用担当者と比較すると明らかに接点の少ない社員が与える印象が、内定承諾決定プロセスにおいて同担当者と同程度のインパクトを持つということも認識しておく必要があります。何気ない社員の言動が学生からはよく見られていることを、社内で共有しておくことが大切なようです。
一方、理系では「インターンシップで職場体験・見学」が47%で最も多く、それに続く「企業説明会で人事担当者等からの紹介」(36%)や「対面面接(会社訪問)での雰囲気から推測」(35%)、「面談での人事担当者からの説明」(33%)などは3割台にとどまります。
また、「企業ホームページでの紹介(動画による紹介)」(文系31%、理系21%)と「企業ホームページでの紹介(文章による紹介)」(文系16%、理系14%)を比較すると、“動画による紹介”のほうが内定承諾に強い影響力を与えていることが分かります。写真とテキスト原稿だけの従来の情報掲載方法だけでなく、社員インタビューや職場探訪のような動画による情報発信も強化していくことが効果的と思われます。登場する社員や撮影内容はもちろんのこと、視聴する学生を飽きさせない構成やカメラアングルなど、差別化の要素はたくさんありそうです。ぜひチャレンジしてみてください。
人事・社員ともに「学生に寄り添う姿勢」が評価
最後に、[図表14]で取り上げた「人事の対応・人柄」と「社員の対応・人柄」について、印象が良いと感じた内容を学生からフリーコメントで記入してもらいました。それぞれ一部を抜粋して紹介します。◆印象の良かった「人事の対応・人柄」
・逆オファー時に個人面談の場を設けていただき、コースで迷っていることを相談したときにも追加の面談をしていただいた(文系、同志社大学)
・最終選考前に面談を組んでくれたことや、雰囲気が柔らかかったこと(文系、共立女子大学)
・面接を体調不良で一度キャンセルしてリスケジュールしてもらって参加したところ、体調を心配する言葉を頂いた(文系、中央大学)
・一次面接で対応してくれた人事の方が最終面接までいてくれたため、話しやすかった。また、形式にとらわれた形ではなく、雑談のように進めてくれたため自分の考えが話しやすかった(文系、大阪商業大学)
・イベントの企画内容が他の会社よりも楽しいと感じた(文系、神戸大学)
・就活生に寄り添う形で面談をしてくれた(文系、広島大学)
・質問や相談にも快く対応していただき、会話していても自然体で話している様子が好印象だった(文系、釧路公立大学)
・最終面接の直前に応援してくださったり、 いつでも質問していいよと優しく教えてくださったりしたことがありがたかった(理系、筑波大学)
・メールで問い合わせをしたらとても丁寧な返事が来た(理系、群馬大学)
・自身に控えている選考すべてが終わるまで、承諾期限を引き延ばして下さるなど、紳士的な対応をしてくださった(理系、京都大学大学院)
・こういう企業の内定も持っていて入社先を迷っていると話したときに共感してくれて、「何よりも○○さんの気持ちを一番に考えてファーストキャリアを選んでくださいね」と、プレッシャーをかけることなく応援してくれた(理系、横浜国立大学大学院)
・内定の電話を頂いた人事の方に何でも質問を受け付けていただけた(理系、東京理科大学)
・当初の希望とは異なるマッチング先へ選考が進んだが、その際の人事の方の説明が懇切丁寧で、学生のことを考えてくださっていると感じた(理系、北海道大学)
・最終面接のアドバイスやアフターフォローがこまやかだった(理系、静岡大学)
◆印象の良かった「社員の対応・人柄」
・選考の際に、リクルーターがつき、内定まで選考のサポートをしていただき、アドバイスや励ましの声を頂いたこと(文系、同志社大学)
・インターンシップの座談会で、社員の方の業務に取り組む姿勢を伺い、好感を抱いた(文系、同志社大学)
・インターンシップでピンチになったとき、積極的にサポートしてくれた(文系、関西学院大学)
・とてもにこやかな笑顔で、お客さまだけでなく学生にも礼儀正しく接してくれたこと(文系、愛知大学)
・笑顔が良く、座談会での質問に対しても 快くいろいろなことを答えてくださった(文系、松山大学)
・OB訪問の際に、業務内容ややりがいを詳しく教えてくれた(文系、大阪大学)
・社員面談の際に、仕事内容や会社の雰囲気などを教えていただき、現場の声を聞くことができ、丁寧に対応していただいた(文系、同志社大学)
・自分が行っている仕事を通じた価値提供に高いプライドと熱意を持っていたことに強く惹(ひ)かれた(文系、駒澤大学)
・インターンシップや職場見学の際にどんな質問をしても、嫌な顔をせず丁寧に答えてくださった(理系、徳島大学)
・インターンシップやOB・OG訪問で就職活動に関する相談に親身に乗っていただいた(理系、立命館大学大学院)
・最終面接をしていただいた役員の方々が、非常に温かく接してくださった。役員の方のみならず、現場の社員全員が笑顔で優しく接してくださり、好感を持った(理系、京都大学大学院)
・2回目の面接の前に、次の面接で気をつけることなどについて、面談時間をつくって教えてくれた。また、選考に関わっていない社員さんも笑顔で見守っていてくれる感じがあり、とても印象が良かった(理系、香川大学)
・現場体験インターンにおいて、学生というより一社員として接してくださった。この会社で働くことのイメージを非常にしやすかった(理系、京都大学)
・私を一社員のように扱ってくれ、居場所を確保してくれていたことに安心感を覚えた(理系、名古屋工業大学)
・スポーツ強豪校である私の高校のことをご存じで、話題に出していただいた(理系、名古屋大学)
次回も、引き続き「2025年新卒学生の就職活動動向調査(6月)」の結果から、学生の意識を中心に見ていきます。