GAFAに通ずる「リクナビ」の影響力

「利用する派」と「利用しない派」のそれぞれの理由も見てみましょう。まずは「利用する派」の理由です。

・リクナビにしか情報を掲載していない企業もあるため(早慶大クラス・文系)
・利用者にとって有益なサービスには変わりない(旧帝大クラス・理系)

サービスの利便性を考えたら使わざるを得ない、就職関連サービスはほかにもあるものの、ほかでは代替できないと考える学生は少なくありません。「リクナビ」も巨大IT企業GAFAにつながる側面を持っているといえます。

意外ですが、そもそも内定辞退率データの提供の何が問題だったのかが分からないという学生もいます。さらには、「リクナビ」に限ったことではないのではないかと考える学生もいます。

・情報漏洩は問題だが、特に重要な情報とは感じないから(その他国公立大・理系)
・別段何も気にならないから(旧帝大クラス・理系)
・正直何が問題だったのか分からないから(上位私立大・文系)
・リクナビの件がたまたま表に出ただけであり、裏ではどのサイトでも行われていると考えているから(上位国公立大・理系)
・どうせ個人情報は漏れているものだと前から思っていた。他のサイトも漏れていると思っている(旧帝大クラス・文系)

問題となったのは2019年卒と2020年卒の学生データであり、自分たちが被害に遭ったわけではない、あるいは、問題を起こした今だからこそ、自分たちを対象としたサービスにおいて同じことを繰り返すことはあり得ないと考えている就活生も多いようです。

・自分の就活にはあまり関係ないと思うから(上位国公立大・文系)
・逆に、今は何もしてないと思われるので、信用できる(上位私立大・理系)
・問題が発覚した今だからこそ、逆にリスク管理が一番高い状態にあると考えるから(早慶大クラス・文系)

大学キャリアセンターの中には、就活ガイダンスからリクルートキャリアを排除したり、学生へ案内する就職ナビから「リクナビ」を外したりしたところもあります。「リクナビ」の一方のユーザーである学生の利益を顧みることなく、もう一方のユーザーであるスポンサー企業にばかり目を向け、営利に走りすぎたリクルートキャリアの企業姿勢自体に「ノー」を突きつけたわけですが、利用する学生は「企業」ではなく、あくまでも「サービス」としてしか見ていないように感じます。

学生の就職ナビ離れを加速する懸念も

次は、「リクナビ」を「利用しない派」の理由を見てみましょう。

利用しない理由として、「信用できない」を挙げる声が最も多く、前述の「利用する派」の理由とは逆で、「サービス」ではなく、「企業姿勢(企業体質)」そのものを問題視しています。

・信用できないと感じたため。問題発覚以降、アプリは起動していない(その他国公立大・理系)
・倫理観が欠落した行動であり、今後も同じようなことが起こり得ると判断したため(旧帝大クラス・理系)
・情報の扱いに関して管理が行き届いていないところに自分の情報を登録し、就活においてマイナスの影響を与えられたくないため(早慶大クラス・文系)
・その他の個人情報も企業側に提出している可能性もなきにしもあらず、と考えられるため(旧帝大クラス・文系)

「リクナビ」にこだわらなくても、「マイナビ」をはじめとする他のサービスで十分だとする就活生も少なくありません。

・マイナビで十分だから(上位国公立大・理系)
・学生側だけでなく企業側もマイナビ等の他のサイトへの移行を開始している企業が散見されるため(上位私立大・理系)
・ナビサイト全体に不信感を持ったので、やや使用を控えている(その他国公立大・文系)

今回の問題の影響が「リクナビ」だけにとどまらず、他を含めたサービス全体が同じ目で見られてしまう懸念もあります。これまで長らく就職ナビの2強を形成してきた「リクナビ」と「マイナビ」ですが、今回の一件で2021年卒の学生利用度の点では2者の間に大きな差がつくことは間違いないでしょう。

近年、従来型の就職ナビに対して、登録されたエントリーシートの内容に応じて企業からオファーする逆求人型の就職サイトの利用が伸びていますが、この動きがさらに加速する契機になるかもかもしれません。また、学生の就職ナビ離れが進むとすれば、企業はダイレクトに自社の採用ホームページへ学生を引き込むためのマーケティング手法を導入する必要が出てきます。リターゲティング広告や採用を意識したオウンドメディアサイト、YouTube等のSNSの活用など、就職ナビだけに依存しない採用活動を模索してみてください。

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