2015年ラグビーワールドカップ、南アフリカ戦勝利から学ぶ現場の主体性
佐藤:それはとても大事ですね。リーダーも人間なので間違えること、言いすぎることはある。その時は素直に非を認めるということですね。もう少しラグビーのマニアックな質問になりますが(笑)、そんな怖いエディーさんのもとで、2015年南アフリカ戦のあの最後に指揮官の意図と違う選択ができたのは、それまでのどういうプロセスや関係性があったからでしょうか。2015年のラグビーワールドカップでは、優勝候補の南アフリカ代表と、大会24年ぶりの勝利を目指す日本代表が対戦した。事前のオッズでは日本の勝利の倍率は80、南アフリカ勝利の倍率は1と、誰もが強豪南アフリカの勝利を予期していたが、日本が歴史的勝利をもぎ取った。29対32で南アのリードのまま試合時間は残り7分。日本は敵陣深くでペナルティを獲得。3点のゴールキックと5点のスクラムが選択でき、エディー・ジョーンズは、安全に引き分けに持ち込めるゴールキックをするよう選手たちに指示した。しかし、チームは独自の判断でスクラムを選択。最後はアマナキ・レレイ・マフィからのパスを受けたカーン・ヘスケスがトライを決め、34対32で歴史的な勝利を挙げた。
佐藤:ありがとうございました。今日は、モデレーター役というところで廣瀬さんとお話しさせていただいて本当に感謝しております。単なるスポーツ好きのミーハーなインタビューになってしまったような反省もあるんですけど、個人的にすごく廣瀬さんのお話をお聞きできてよかったと思います。スポーツとビジネスの共通点って僕はすごくたくさんあると思っています。実は『Works』でもスポーツとビジネスを語ろうという連載を始めていまして、ビジネス経験をスポーツの世界で活かしている人を毎号取り上げているんですね。なのでそんなことも含めて、スポーツとビジネスをもっと人材が行き来できる世界観っていうのを、僕も個人的にすごく興味を持っていて目指したいなと思っています。そういう意味でも今日の廣瀬さんのお話、共通点と、あと共通点じゃなくてちょっと違ったところ、工夫が必要なところっていうのも見えてきたので、すごく勉強になりました。今後に活かしていきたいと思います。本当にありがとうございました。
対談を終えて
廣瀬さん・佐藤さんとの会話は、本当に勉強になった。2015年、テレビの向こうで見たあの感動の瞬間は、偶然訪れたわけではなく、日々の積み重ねから起こったことだ。チームで目的を共有するとか、ランチの時に話しかけるとか、主体性を持つとか。一つひとつは当たり前のことで、実はそんなに難しい事ではないけれど、それをやり続ける、こだわり続ける、ということが、あのような歴史的勝利につながる奇跡を呼び込むんだという事を知れた。企業活動でも同じだ。当たり前を積み重ねていくことが大切だという事を今回実感できた。廣瀬 俊朗氏
ラグビーワールドカップ2019アンバサダー 株式会社HiRAKU 代表取締役 NPO法人Doooooooo理事
1981年生まれ、大阪府吹田市出身。5歳からラグビーを始め、2004年東芝ブレイブルーパス入団。高校日本代表や日本代表でも主将を務める。代表キャップ数(日本代表として試合に出た数)は28。2015年ラグビーワールドカップイングランド大会メンバーで歴史的な勝利を収める。2016年、ラグビーを引退し、ビジネス・ブレークスルー大学院へ入学。2017年からは東芝ブレイブルーパスのコーチを2年間務める。2019年、(株)東芝を退社し、株式会社HiRAKUを設立。TBSのテレビドラマ「ノーサイド・ゲーム」 にも出演。
佐藤 邦彦氏
リクルートワークス研究所 Works編集長
1999年東京理科大学理工学部卒業。同年、アンダーセンコンサルティング(現 アクセンチュア)入社。業務改善・IT導入支援などのコンサルティングに従事したのち、2003年にアイ・エム・ジェイに転職し事業会社人事としてのキャリアをスタート。7年半の在籍中、採用、育成、制度運用、組織開発、労務などを幅広く担当し、後半はチームマネジメントを経験。2011年にIMAGICAグループに移りグループ人事を担当、以降、2014年よりライフネット生命にて人事総務部長、2017年より電通デジタルにて人事部長を歴任。2020年4月よりリクルートワークス研究所に参画、現職。