日本代表チームがワンチームになった瞬間とは
佐藤:廣瀬さんとしては、ラグビー日本代表チームのように多様性のあるチームが「ワンチームになったな!」と感じた瞬間はどんな時でしたか?廣瀬:この瞬間、というのは難しいですが、ワンチームになっている状態というのは、ミーティングで本当にお互いの言いたいことが言えている状態で、外国人だからちょっと、とかが一切ない。プライベートとかでも普通に外国人と日本人で2人でピューってどこか遊びに行ったりカフェに行ったりとか。練習の食事の時も、最初は外国人は外国人だけでテーブルとかも固まるんですよね。でもそれがだんだんミックスされてどんどん一緒に座るようになっていくと、だんだんワンチームになってきたなみたいな感覚はあります。食事やプライベートの時って、わりと素が出る瞬間ですよね。そういう瞬間にみんなが普通にしゃべると、「あ、これ台拭き」なみたいな。そんな感覚はありましたね。
佐藤:意識的か無意識的かってすごく大事かなと思っているところがあって、日本代表とかで招集された時に、キャプテンとかリーダーは最初にできるだけコミュニケーションをとることをすごく意識的にやられていると思うんですけど、その辺が無意識的になっていく瞬間があるんじゃないかと思うんですよね。廣瀬さんが仰ってるのは、無意識的になった瞬間がワンチームになったな、みたいな感じと言い換えられそうですね。
廣瀬:それはすごく近い感覚ではあります。ただ単に意識的にずっとやっていったら勝手に無意識になるかっていうと、やっぱり紆余曲折がありますね。例えば試合に負けてお互いに腹が立って、なんでこうやってくれへんのとか、こうしたらよかったんじゃないみたいな、ちょっとぶつかり合いみたいなのが蓄積されてとか。あと練習中本当にきつい中で一緒に頑張ろうやみたいなとか、そういう瞬間があってだんだん無意識化されていくような気がするので、何かは必要だと思いますけどね。
エディー氏のマネジメントの凄さとは
佐藤:なるほどありがとうございます。ちょっとラグビーの具体的な話になりますが、やはりエディー監督のインパクトが強いんですが、エディーさんは何がすごかったですか?廣瀬:昨日たまたま、別の番組で福岡堅樹に会っていたんですけど。いまだにエディーさんはちょっと怖いと言っていました(笑)。それぐらい人のことを追い込めるっていうか追い詰められることはすごいと思いました。嫌われることを厭わない。これはあの方の強いところだなと改めて思いましたね。相手をやっつけてやれという事ではなくて、その人に変わってほしいとか、僕達が結果を出して憧れの存在になるために必要だからやっているっていうようなことだと思います。そういう嫌われることを厭わないとか、プロフェッショナルというところはやっぱりすごいです。そして常に学び続けていますね、いつも学んで、次をベストにする、次をベストにするって言っていて、学び続けているところがすごいなと。最近自叙伝みたいなの出されていましたけど、すごい顔のアップの。あの顔を見るだけで僕も一瞬戦慄を覚えました(笑)。
稲垣:昔、試合後の記者会見で廣瀬さんはエディーさんに怒られていましたもんね。あれを記者会見でやるっていうのがすごいなと思いました。
廣瀬:本当にそうですね。YouTubeにもアップされていますが、記者会見の場でめちゃくちゃ怒られて、もうなんでこんなところで言うねんって思いましたね。
佐藤:ビジネスの現場は、嫌われることを厭わないっていうのはいま難しくなっていると思うんですよ。嫌われないようにとかハラスメントにならないようにという制約が多い中で皆さんマネジメントされていますが、追い込めるっていうところは一歩間違うとこれもまたハラスメントみたいな感じになりがちです。記者会見の場でというのも下手すると、みんなの前で叱るというのは、これもまたハラスメントになる可能性がある。そこの違いってなんなんですかね。
廣瀬:エディーさんは結構人によってやり方を変えていましたね。こいつなら乗り切れると思って言っているところは結構あるかなと思っています。僕は結構タフだし、正直そこで試されているようなこともあったんじゃないかと思います。まあお前ぐらいやったらいけるやろみたいなこともあったと思います。
佐藤:なるほど、そのギリギリのところを攻められているんですね。
廣瀬:そうですね。そこがリーダーの裁量かなと思いますけど、この人はどこまでプレッシャーをかけることが可能なのか。トゥーマッチだったらもしかしたら仕事に来られなくなっちゃうかもしれませんし、あんまりなんでもいいよってリラックスしすぎても成長につながらないと思うんですよね。ほどよいプレッシャーとか目標設定とか、人を見抜くっていうのはすごい大事なことかな。外国人に対してもあんまり甘やかしすぎたら、そりゃもう好き放題やりますよ、みんな。そこはちゃんとある程度こういうふうにやろうみたいなところとか、カルチャーみたいなものを一緒に作っていこうとかっていうのがないと危険だなと思います。
稲垣:これも以前に廣瀬にお聞きしたエピソードですけど、あることをきっかけに廣瀬さんがエディーさんにすごく怒られて、練習が終わってからもメールでも追いかけて怒られてぼろぼろにされて、でも家に帰ってきたころに最後に「言いすぎたごめん」みたいな連絡が入ったと(笑)。リーダーが「ごめんね」って言えることは結構大事かなと思っています。もちろん威厳を保つことは大事ですが、間違えたり言いすぎたりしたらきちんと謝るという人間性ですね。