厳しくなる採用予算の中でも予算が増える施策とは
次に採用活動に伴う予算について見てみましょう[図表4]。前年の採用活動予算と比較しての増減で聞いてみたところ、「ほぼ変わらない」が61%で最も多くなっているものの、「増える」派(「かなり増える見込み」と「やや増える見込み」の合計)の7%に対して、「減る」派(「かなり減る見込み」と「やや減る見込み」の合計)は32%と、大きく上回っています。採用計画数の減少に伴う予算減が多いと思われますが、対面型からオンライン型への移行に伴い、説明会や面接の会場費・交通費等が軽減されることを見越しているケースもあるのかもしれません。次いで多いのが「逆求人型ナビ」の9%です。従来型の広く学生からのプレエントリーを待つタイプの就職ナビだけではなく、自社の求めるタイプの学生に個別にアプローチする逆求人型ナビが年々存在感を増しています。後述する「マスから個へ」の採用手法の変化を表している形になります。
進む「マスから個へ」の採用活動
前項でも少し触れましたが、幅広くプロモーション活動を展開し、多くの学生からのプレエントリーを待って母集団を形成し、そこから絞り込みを行い、一律の処遇で学生を採用する「マス型」の採用活動と、求めるタイプの学生に個別に働き掛け、自社に合う学生とのマッチングを進める「個別型」の採用活動の比重について聞いたのが[図表6]です。「個別型」には、広くプロモーション活動を展開しながらも、個別のコミュニケーションを進めていく中で、処遇や働き方に柔軟性を持たせた採用を行うことも含まれます。必ずしも、この後の項で取り上げる「ダイレクトソーシング」だけを意味しているわけではないことにご注意ください。企業規模別に見ると、「個別採用中心」派の企業は中小企業で特に多く、63%にも達しています。採用数がそれほど多くない場合には、大量の母集団を形成する必要もなく、ピンポイントでの採用活動のほうが効率的だということなのでしょう。
ただ、注目すべきは、採用数の多い大企業でも「個別採用中心」派の企業が54%と、過半数に達していることです。大企業といえども必ずしも採用数が多くない企業もありますが、そういった企業が大企業の過半数を占めることは考えづらく、そこそこの採用数の企業でも一律の選考ルートからの採用活動だけでなく、「個別採用中心」の採用活動に変化してきているということです。高いスキルを持った学生には特別の処遇を提示することもあるでしょうし、必要に応じて個別の事情に寄り添った働き方を認めるということもあるということなのでしょう。