視点5:多様な部下をマネジメントできる管理職(WLB管理職)の育成や支援を
働き方改革では、女性を含め、多様な部下を抱える管理職の役割がとても大事です。今の管理職が担当職だった時代の上司は楽でした。管理職は、部下に意欲的に仕事に取り組んでもらうようにマネジメントすることが役割です。そのためには、部下がどういう人なのか、部下がどうして欲しいのかがわからないと部下のマネジメントはできません。しかし、今の管理職が担当職だった時代の上司は、部下に「どうして欲しいの?」と聞かなくても済みました。「自分が担当職だったらこうして欲しい」だろうと思うことを部下にやればよかったのです。管理職と部下は、価値観が同じだったのです。
ところが今は違います。管理職と部下は価値観が違います。部下がどういう人なのか、仕事上どうしたいのか、仕事以外でどういう課題があるかなどは、部下に聞かなければわからないのです。今の管理職に傾聴力が求められる理由がここにあります。管理職が部下をマネジメントする場合、自分と異なる価値観や考え方を持つ部下を受容することが前提になるということです。
それでは、企業は、そのようなことができる管理職を登用しているでしょうか。管理職の登用基準は、担当職として仕事ができることです。例えば、営業職として業績を上げた人が営業課長になる。他方で、管理職になると、第一線で仕事するのではなく、「部下にどう仕事をしてもらうか」という戦略を考え、部下にその仕事してもらうことになります。自分で仕事するのと部下に仕事をしてもらうのでは、全く異なります。しかし、管理職に登用されている人は、仕事で業績を上げてきた人です。その結果、部下に仕事をしてもらうという部下マネジメントできない管理職もいます。
今の管理職をどうするかということもありますが、これからは管理職の登用基準を見直すことが大事です。例えば、登用前にプロジェクトチームのリーダーを何回かやらせてみるなど、マネジメント能力の見極めがとても大事になります。
視点6:働き方改革の「推進の要」である管理職自身が、率先して自分の行動の変容を
次は、管理職自身の課題です。今の管理職は、いつか「あのような管理職になりたい」と考えていたかつての上司のマネジメントを100%コピーすればいいわけではないのです。8割はコピーしてもいいけれど、2割は変えなければいけません。そのために管理職にとって大事なことは、これまで望ましいと思っていた価値観を捨てられるかどうかになります。「今の部下に合ったマネジメントを行う」というように価値観を転換できるかです。部下のワーク・ライフ・バランスだけではなく、自分自身のワーク・ライフ・バランスも大事にするということが必要になります。これがなかなか難しい。「子育てはもう終わってしまったし、家のことは妻に任せて仕事、仕事でやってきたから、今さらワーク・ライフ・バランスと言われても…」と困惑する管理職がたくさんいます。
ではどうすればいいか。1つは介護です。親がいればですが、介護の課題を考えてもらうことを通じて、管理職に自分の今の働き方の課題を考えてもらう。働き方改革、あるいは部下のワーク・ライフ・バランス支援は、部下のためだけではなく、自分にとっても大事なことだと思ってもらう一つのきっかけが介護だと思います。