「若手層の職業訓練不足」
 自社内で訓練し、内部調整コストを最小化できる年配社員と、新たに教育が必要となる新人のどちらを取るかの選択を迫られた時に前者を選ぶという選択を続け、若手層において十分な職業訓練を受けた人員を不足させてきた。また、入社した社員も、延々と現場仕事のみを与えられ、目線を高められる訓練を受けられておらず、次なるリーダー人材の種も不足してきている。

「制度(年齢概念の払拭)と実質(運用での長幼の序の残存)の乖離」
 会社のコミュニティーとしての効率性を享受するために、思い切った人事施策については打ち切ることなく、一部に長幼の序を尊重した仕組みや考え方、運用を名目、実質の何れかの形であったとしても残してきた。その結果、新たな状況に対応するときに、現在の制度(年齢概念を払拭したとされてきた仕組み)では、相手を納得させられることが難しくなる状況を作り出した。

「ダイバーシティーの進展不足」
 社内訓練を通じた育成と社内コミュニティーによる効率化の追求は、キャリアの断絶が即生産性低下に結びついてしまう。この問題に対応しやすい人材と対応しにくい人材の何れを選ぶかとなったときに前者を選択してきた。端的に言えば、女性活用というダイバーシティーの実現ができておらず、労働人口の半分を活用する機会を作れていない。

といった問題である。

 この状況は、企業に対して、新たな10年の状況を考えてみたときに、必ず看過できない問題となっていくことは明らかである。仕組みから価値観に至るまで、本当の意味で思い切った手を打たなくては、将来の生産性や活力の低下に繋がる大問題になっていくことは間違いないと筆者は考える。

 人材マネジメントとは、朝令暮改が許されない世界でもある。なぜなら、人を育て、新たな文化を作り上げていくためには、どうしても2-3年の時間を要するからだ。人事施策とは、「10年先を見て、今打つべき手を打つ」ものであると考えたとき、筆者には、この問題が「今、そこにある避けることができない危機」に見えてくる。
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