日本企業は、高度成長期においては、新たな社員を雇用する競争に明け暮れ、「金の卵」とまで呼んで新人雇用を争った時代があった、その頃企業の人員構成は「ピラミッド型」を形成していた。その後、バブル期の大量雇用の若手が入社し、10年が経った1990年代後半には、「二つのコブ」のように、50歳代と30歳代に人員が集中する時代を迎えた。その人員構成が、今度は「逆ピラミッド」を構成する時代に入っていくのである。
一方で、先に紹介した賃金構造基本統計調査では、「役職者・非役職者」に関する情報も掲載されており、その比率を見ることができる。実は、この構成については、係長級以上の役職者は、正社員の25%という構成で変化がない。
つまり、企業における組織構成、組織のあり方においては、情報化が進んだ現在であっても大きな変化はないのである。
沼上幹教授が「組織戦略の考え方」の中で、"組織を効率的に運営するための原理原則において大きな変化はない、フラット化が常に正しいとは言い得ない"と喝破されていた状況は依然継続しているのである。組織のあり方(≒付加価値の出る職場での働き方)において、画期的なイノベーションが起きていない現状では、柔軟性を持つ「人」によって対応しなくてはならない問題となっていく。
企業における人材マネジメントは、次なる10年において、再び過去に経験がない状況への対応が求められていくのである。
日本企業は、その昔、長期雇用、社内訓練、年功的処遇といった仕組みがあった。人員構成の「二つのコブ」問題に直面したときに、その仕組みに対する改定を行いはしたものの、依然、文化や考え方には強く残っている。先の雇用慣行が作り出す社内の強いコミュニティーが、組織内部で発生しやすい社内での衝突を回避する調整コストを最小化させるという経済合理性を秘めていたからである。
ただ、上記のコミュニティーが生み出す効率性を享受しようとするあまり、日本企業は次のような選択と新たな問題の生成も行ってきた。