意外に伸びなかった課題としてのオンライン対応

次に、新卒採用における課題について見てみましょう[図表3]。グラフは前回の調査結果と比較できるようにしています。
第118回 「オンラインインターンシップ」を始める企業が増加――HR総研「2022年新卒採用動向調査」
最多は前回同様に「ターゲット層の応募者を集めたい」の45%で、半数近い企業が課題と感じています。次点も前回と同じく「大学との関係を強化したい」(24%)ですが、前回(42%)からは大きくポイントを下げ、トップとは20ポイント以上の開きがあります。一方、「応募者の数を集めたい」とする企業は18%(前回29%)にとどまり、応募総数に不満はないものの、本来のターゲット層が潤沢に応募してくれているわけではなく、その中身が課題だと考える企業が多いようです。

「大学との関係を強化したい」を挙げた企業は、ターゲット大学の関係部署(キャリアセンターや研究室等)とのコネクション強化を図りたいという意向であり、「ターゲット層の応募者を集めたい」に通ずるものがあるといえますが、昨年は新型コロナウイルス感染症対策として、長期間にわたり大学が封鎖され、封鎖が解けた後も担当者との対面接触ができなかったことから、今年もかなわないものとあきらめている面もあるかもしれません。「学内セミナーの参加大学を増やしたい」とする企業が前回よりも減少しているのも、対面型の学内セミナーの開催は期待できないことから、あきらめているものと推測されます。

一方、「オンライン・Web化対応を進めたい」とする企業は意外にも18%にとどまりましたが、前回調査の8%からは10ポイント伸びています。前回調査時点では、新型コロナがここまで長期化することや、面接のすべての工程をオンライン対応で完結することなど、ちゃんと考えていた企業はごく少数だったと推測されます。また、それほど数字が伸びなかったのは、昨年の採用活動でオンライン採用のノウハウをある程度得られたという自信の表れかもしれません。

オンラインにとまどう中小企業

自由記述方式で具体的な課題も回答してもらいましたので、一部を紹介しましょう。オンライン採用に向けての課題は、大企業では見られなかったものの、中小企業では散見されます。前年も実施した大企業と実施できなかった中小企業では大きく異なるようです。

・コロナ禍による予算の削減(1001名以上、サービス)
・オンラインの継続かどうか判断(1001名以上、メーカー)
・エントリー増による業務負荷を軽減するためにも、よりターゲット層を明確にし、広報時から絞り込みを行いたい(1001名以上、情報・通信)
・ターゲット層以外の応募者が多いため、ピンポイントの施策が必要(301~1000名、サービス)
・業界のイメージを変え、採用に結び付くようなインターンシッププログラム(301~1000名、サービス)
・インターンシップを初開催予定。しかもオンラインで計画中(301~1000名、サービス)
・採用計画が未定のままインターンシップを開始しなければならないこと(301~1000名、メーカー)
・ターゲット層の基準を上げたい(301~1000名、メーカー)
・コロナ禍における新しい様式に十分対応できる活動(301~1000名、メーカー)
・ピンポイントのスキルを持った学生を求めるので、ターゲット学生にどのようにアプローチするか(301~1000名、情報・通信)
・バイトで来ている子が毎年採用できているが、それがいつまで続くのか(300名以下、サービス)
・マンパワーなどの問題もあるが、オンラインなど時代の流れに試行錯誤している(300名以下、メーカー)
・採用担当者、面接官のスキルアップ(300名以下、メーカー)
・定型業務の自動化により、ヒトが価値を出す領域のみの採用をどのように進めるか(300名以下、メーカー)
・選考基準を厳しくするため母集団の質を高めること、面接官の認識をそろえること(300名以下、情報・通信)
・マッチングの強化による早期退職者の軽減(300名以下、情報・通信)
・オンラインでの実施に不慣れ(300名以下、運輸・不動産)

新しく始めることはオンラインインターンシップが断トツ

2022年新卒採用から新しく始めることについても自由記述で回答してもらいました。「オンラインインターンシップ」を挙げる声が、企業規模を問わず多くなっています。

・メッセージの高質化(1001名以上、サービス)
・オンラインでのインターンシップ(1001名以上、メーカー)
・オンラインインターンシップ(301~1000名、サービス)
・オウンドメディア活用(301~1000名、サービス)
・ダイレクトリクルーティング(301~1000名、サービス)
・エリア拡大(301~1000名、サービス)
・オンラインでの会社説明会(301~1000名、メーカー)
・地方学生へのアプローチ強化、Web説明会、面接の回数増加、選考早期化(301~1000名、メーカー)
・ペルソナ採用(301~1000名、情報・通信)
・説明会をまとめた動画作成と活用方法の検討(300名以下、メーカー)
・Web会社説明会~面接(300名以下、メーカー)
・新規事業立ち上げに伴う新規職種の募集(300名以下、メーカー)
・リファラル採用の強化(300名以下、メーカー)
・オンラインインターシップ(300名以下、メーカー/運輸・不動産/マスコミ・コンサル)

厳しくなる採用予算の中でも予算が増える施策とは

この記事にリアクションをお願いします!