「ジョブ型採用の拡大」に反対は1割以下

次に、「ジョブ型採用(職種別採用)の拡大」の動きについての意見を見てみましょう。文系・理系別に見ると、文系では「賛成」が47%、「どちらとも言えない」が43%、「反対」が10%となっています。対して理系では、「賛成」が67%、「どちらとも言えない」が28%、「反対」が5%となっており、明確な反対派は1割以下で、理系学生のほうがジョブ型採用に対して寛容であることが分かります[図表2]。能力やスキルに関する企業のニーズに対し、より直接的にアピールしやすい専門知識や技術を学ぶ理系学生は、ジョブ型採用が自身の就職活動に有利に働くと予測していることがうかがえます。
第106回 学生は「ジョブ型採用」や「一律初任給の廃止」といった環境の変化をどう捉えているのか
賛否の理由を見ると、賛成派は「入社後のミスマッチを防げる」「選考時に強みをアピールしやすい」など、すでに自身の適性や強みを認識していると思われる学生の意見が多くなっています。一方、反対派は「視野が狭くなりそう」「一通りの職種を経験した上で自分に合う職種を見つけたい」など、現時点で職種を固定せず、自分の可能性を広げた上で慎重に考えたい学生が多い傾向がうかがえます。さらに賛否保留派は、「専門知識を持つ人や希望職種が決まっている人はよいが、そうでない人は困る」「入社後に職種変更が可能であれば賛成」など、ジョブ型採用のメリットとリスクの両面を考慮し、現時点では賛否の判断をしかねていると推測されます。

新卒ジョブ型採用には、賛否問わずさまざまな不安を抱える学生がいることが見えてきました。したがって、より柔軟な制度設計やきめ細やかな情報提供により、就活生の不安感を払しょくし、応募者のニーズに合った採用制度として機能させる必要があるのではないでしょうか。

【賛成】
・総合職採用で入った後どうなるか分からないよりも入るときから分かっていたほうが、ミスマッチが少なそうだから(上位私立大・理系)
・自分の専攻を生かせる、やりたいことがやりやすい。しかし、これまで日本はジョブ型採用に消極的だったのに、その姿勢を変えられると戸惑う(上位私立大・理系)
・入社した後の仕事がイメージしやすくなるから(上位国公立大・文系)

【反対】
・社会人として一通り職業経験を積んだ上で、自分の適性に合った職種を選ぶ形の働き方を希望しているため(旧帝大クラス・理系)
・文系の学部では、専門的知識の習得が不十分であり、そのため就活時に職種別に募集したところで内定後に新卒の想像と実際の仕事にギャップが生じるから(上位私立大・文系)
・視野が狭くなりそう(その他国公立大・理系)

【どちらとも言えない】
・やりたいことが決まってから入社するならいいが、マッチする職種を人事に選んでもらいたいという新卒もいると思う(旧帝大クラス・文系)
・ジョブ型採用がよく分からない。学生の間であまり認知されていないのではないだろうか(上位私立大・文系)
・特に専門的知識を持つ人にとってはよいと感じる。しかし、実際働いてみて不向きだったと感じた際にどうなるか、不安である(その他国公立大・理系)

8割の学生が「一律初任給の廃止」に理解

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