現地の若者が抱く就労観は「高賃金」だけではなく「成長の可能性」

以上、現場で何が起きているかについて考察してきました。個々の報酬体系、報酬レベル、福利厚生の質、など企業側が決めなければいけないことが多々あるのがお分かりいただけたかと思います。報酬または福利厚生は、「これで満足」というものはなく、最終的にどのレベルで落ち着かせるか、という判断が求められます。その意味で環境はどのように変遷しているのかを見極め、戦略を立てることが必要です。

日本においては多くの新入社員が企業に安定性を求め、出来れば終身そこで働きたいという傾向は続いています。その一方で、入社後3年で30%以上の社員が退職している、退職を考えているという社員を加えると50%以上いる、という現実があります。(厚生労働省雇用動向調査より)その理由は「期待したところと違った」「自分に合わない」が上位を占めています。

中国においても毎年700万人以上の大学卒業生を輩出していますが、かれらの就労観は“高い賃金”と同等レベルで“明確なキャリアコースがある“、“違う仕事をやる機会”が位置しており(中国英才網調査報告)、日本とは明らかな違いを示しています。優秀な人材を確保しつつ、かつ持続性のある職場を形成するためにはこの就労観に応える人事施策が必要と思われます。

企業側の“与える文化”から“組織へのコミットメントを引き出す文化”に変わっていく時が訪れているのではないでしょうか。単なる「与える報酬」「福利厚生の魅力度アップ」「人事制度の設計のみ」ではなく「会社の魅力」「期待することの具体的な施策(権限移譲、上位職を考慮したローテーション、働く環境整備など)」を提示することが重要性を増す時代になってきていると考えます。

中国人の就労観は日本人とは違い、獲得したスキルを活かす仕事を求め、常にチャレンジを求めている傾向にあります。上海においては最初の労働契約を含め3回の契約締結(初回+2回の更新)を経て終身契約となりますが、現地日系企業では欧米に比べて終身雇用率がかなり高いとい言われています。これも評価制度を適切に使って社員の選別を実施している欧米系と日系の差が出ていると言えるでしょう。

次回(最終回)は、前述した日中労働者の就労観から、日系企業がどのような施策を打つべきか、また日本の本社がどのようなリーダーシップを取るべきか考察します。
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