パナソニックのインドネシアでの戦い方

稲垣 まず、インドネシアにおける、パナソニックの状況などお聞かせください。

上田 インドネシアに展開する家電系のパナソニックは、テレビ・冷蔵庫・エアコン・洗濯機を一般消費者向けに製品を生産し、販売しています。Panasonic Manufacturing Indonesiaという製造会社、Panasonic Gobel Indonesiaという販売会社で構成されています。私の所属するPGIの社員数は約430名で、うち約300名が営業です。私は営業部門のAdvisorとして、営業戦略や営業社員の生産性向上の施策などを立案・実行しております。

近年景気悪化のため、家電製品の需要は伸び悩んでいるものの、例えば地方では川で洗濯していたりして、電化率も低く、まだまだポテンシャルのある国だというのが我々の見方ですね。当社はTV、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの4つの製品カテゴリーで、2017年は前年より、約3ポイントシェアを伸ばしています。過去のNationalブランドの時代から培ってきたブランド力が強く、ユーザーから高い支持を得ているため、日本本社からの期待も、特に大きい国です。同時に、LG・Samsung・SHARPと強力な競合がいるため、少しも気を抜くことは許されない、シビアなマーケットでもあります。
第4話:緊張感あふれる海外で磨かれる組織マネジメント力
稲垣 やはり日本と、販売戦略やユーザーフォローの施策などは異なりますか?

上田 そうですね。日本では量販店が強いため、限られた量販店と信頼関係を作り、店頭でどれだけ販売を伸ばしてもらうかが営業のポイントになるのですが、インドネシアでは卸が強いため、営業のやり方が全く異なります。都市ごとにある卸が、自分の抱えている小売店に商品を卸していくので、当社の営業は、たくさんの卸と信頼関係を作っていくことが求められます。

また、先進国との一番の価値観の違いは、サービスの充実です。この国のユーザーは、物を買うとき「一度買ったら長く使いたい」という思いが強いので、商品購入時には、保証サービスについてすごく敏感です。当社は、インドネシア中にサービスセンターを展開し、ユーザーと直接コミュニケーションをとり、商品の修理をしたり、代替品の貸し出しをしたりして、顧客に寄り添ったサービス活動を展開しています。

このように、販売網もサービス網も、たくさんの卸やユーザーと信頼関係を作って開拓していくのは、非常に地道な作業です。この広い国の隅々まで、いかに“血管”を張り巡らせられるかが肝になってきます。
第4話:緊張感あふれる海外で磨かれる組織マネジメント力

インドネシアでのマネジメントの工夫

稲垣 インドネシア人の特徴に合わせたマネジメントの工夫は、どのようにされていますか?

上田 インドネシア人の特徴としては、短期集中で何かを成し遂げる力や、目標を持って向かっていく力が強いと思います。ですので、成果が出たらすぐに報酬が出るような短期的なインセンティブを設定し、その力を引き出そうとしています。中・長期のインセンティブとなると、こちらの人はモチベーションがだんだん下がってきてしまうんですね。

目標設定やインセンティブは、月べースで見直し、その都度細かく修正しているのですが、それでも支店から挙がってくる声に耳を傾けると、目標がおかしい、インセンティブをもらってない、ルールが不公平だ、などという声がよく挙がってきます。

こちらとしては彼らのモチベーションを上げることが何より重要なので、販売実績が急に落ちたエリアや、重点的に売上目標を上げたエリア等、気になる国内拠点(14カ所)をぐるぐると回って、どんどん施策を打ちます。もちろん、彼らの要求にこたえるだけでは強い組織にならないので、時には檄を飛ばすこともあります。

しかしながら、言い方や打ち手を間違えたり、対策が後手になってしまったりすると、社員が辞めたり、お客様に迷惑をかけたりして、営業成績に大きく影響してしまうので、自分の判断やコミュニケーションの仕方には、細心の注意を払って取り組んでいます。私の年齢を考えると、日本で考えられないようなスケールでの組織マネジメントを経験させてもらっていると思います。
第4話:緊張感あふれる海外で磨かれる組織マネジメント力

重要なのは、同じ時間を共有し、同じ意識を持つこと

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