インドネシアの法律は、労働者保護に厚い内容になっている?
――インドネシアに労働関連の法律はどんなものがありますか?町田 主なところでは労働法、労働組合法ですが、その他にも細かい基礎規則がたくさんあります。日本以上に労働者保護に厚い内容になっているため、企業にとって厳しい面があるのは確かです。
――企業にとってどのような面が厳しいですか?
町田 例えば2012年、正社員としての雇用を促すために、業務の外部委託や派遣労働者の受け入れが厳しく制限されました(※1)。またその時期には、労働組合から正社員化の要求が強力に行われており、この規則を根拠として労働当局から日系企業に対しても、従業員の正社員化が要請されました。契約社員が許可されるのは、例えば新商品の開発プロジェクトに関わる3カ月間だけとか、多忙になる年末のみ事務作業員を雇う時などで、それ以外では基本的に正社員雇用が義務づけられています。会社としては契約社員を増やして固定費をコントロールしたいところですが、そうはいかない。日系企業は法律を順守して、それを機に正社員雇用に変えたところが多かったように思います。
――一度正社員雇用をすると、従業員に問題があっても解雇することが難しいと聞きました。
町田 そうなんです。解雇のルールは労働法で定められています。例えば無断欠席が続いたり、不正をする従業員がいたりした場合でも、簡単には解雇できません。ルールとして、3回目の警告書を出しても改善されず、4回目に同じことをしたら解雇事由になります。なお、各警告書の有効期間は6カ月間ですので、最後の警告書が出されてから6カ月間警告書が発行されない場合は、次に違反行為があった場合も1回目の警告書が発行されることになります。ただ、従業員にも主張する権利があるので、折り合わないと労働裁判所にいきます。会社は裁判中も従業員に給料を払わなくてはならないので、お金も時間も大きな負担になります。
労働移住大臣規程2012年第19号に記載
賃金上昇とストライキ
――最低賃金の上昇率が高いですね。町田 はい。6~7年前だとジャカルタ内でも最低賃金は月1万円台でしたが、いまは倍近くの3万円台です。アジアでもかなり高い上昇率です。ここ数年は少し落ち着いてきて、10%代前半に収まってきています。
町田 労使間の話し合いが進展しない場合はストライキを起こされることもあります。ストライキによって、1~2カ月工場の稼働が停止した日系企業もあります。通常、ストライキは、時間・場所などを7日前までに会社や労働当局に伝える必要がありますが、そのような手続きは守られないことが多く、大半は条件を満たしていない違法ストライキです。ですが、違法だからといって、ただ封じ込めればいいというものではありません。会社側は慎重な対応が求められます。デモも気をつけなければなりません。最近は少なくなってきましたが、数年前には激しいデモが数多くありました。
▼ジャカルタのデモの様子(日系企業のデモではありません)・バリケードの写真