インドネシアの課題

第1話:ASEANの盟主インドネシアという国
もちろん課題も多くある。例えば、「公務員と政治家の腐敗」を示す2016年の腐敗認識指数(※3)は176国中90位(シンガポール7位、日本20位、マレーシア50位)だった。2004年のユドヨノ大統領政権発足以来、着実に改善しているものの、「日本では考えられない不正」が今でも横行している。

また、インフラもまだまだ未発達。そのため、日本のビジネスパーソンは、リスク回避で徒歩・電車は避け、近距離でも車で移動する。しかし、ジャカルタ市内の渋滞は東京の比ではない。毎朝家と職場60Kmほどの距離を、3時間以上かけて通勤している人もいる。さらに、雨季に洪水が起こると交通機関はマヒする。Uターンをするだけで30分かかるなんてことはざらだ。これらはビジネスパーソンの仕事の効率を下げる要因の1つである。

それだけではない。日本でもニュースになったが、インドネシアでは、2016年、2017年と立て続けにテロが起こった。警察が迅速に鎮圧したものの、現地に生活している者として身の危険を感じたのは事実だ。また、外資規制が厳しく、投資基準や業種の規制、現地人の雇用条件等、新規参入のハードルが高い。

このようにマイナス面やリスクを上げればキリがないが、これらは今後、インドネシアが「本当のASEAN・アジアの盟主」となるには乗り越えなければならない大きな課題である。

(※3):トランスペアレンシー・インターナショナル社調べ

インドネシア人の国民性

私がインドネシアで受けるご相談は「仕事の基本教育」が一番多い。時間管理、報連相、優先順位の付け方等、日本では新人研修で教育されるような基本ができないということだ。

事実、多くの日本人が「インドネシア人は時間を守らない」と言う。私もインドネシアに来たばかりの時はここにずいぶん苦しめられた。「ゴムの時間」といわれるように、彼らの時間の感覚は伸びきっていて、人を待つのも待たせるのも平気だ。約束をしている時間に遅れても、たいてい「遅れる」という連絡は入らない。会議の開始5分前に来ているインドネシア人がいると、それだけで「しっかりした人だ」と評価が上がるほどだ。

ところが数年前、私があるインドネシア人女性と話しているとき、「日本人は本当に時間を守らないですね」と言われた。すぐさま、それはこっちのセリフだ!と思ったが、彼女の話をよく聞いて謎が解けた。それは「終わりの時間」だった。彼女からすると、<18時に仕事を終える>という時間を日本人は守っていないというのだ。このように、そもそも時間に関する感覚が違うため、指導方法をインドネシア流にアレンジしないと、仕事に対する姿勢は改善しない。その他、チームワークや計画性等に関する教育にも一工夫が必要で、それらは今後のコラムでご紹介していきたい。
第1話:ASEANの盟主インドネシアという国
2018年は、日本・インドネシアが「国交樹立60周年」の節目を迎え、また8月には「アジア競技大会」が開催される。各地でも様々な式典やイベントが開催されるため、こうした話題で盛り上がるのは間違いない。今年はぜひインドネシアに注目していただきたい。
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