働く人の価値観や顧客ニーズが多様化する今日において、多様な人材が活躍できる環境を整備することは、福利厚生やCSRの一環としてではなく、経営戦略上大きな意味を持つようになっている。経済産業省も、多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営を「ダイバーシティ経営」と呼び、その推進に取り組んでいる。HR総研は、ダイバーシティ経営への取組み状況の最新動向を調査した。本調査結果について2本に分けてレポートする。1本目の本レポートでは、「ダイバーシティ経営に関する取り組み方針」と「社員の兼業・副業に関する取り組み状況」についてフリーコメントも含めて以下に報告する。

<概要>
●イノベーションを重視する企業ではダイバーシティ推進に「積極的」が7割
●多様な属性の人材活用「方針なし」は大企業で約3割、中堅・中小企業は約6割
●イノベーションを重視する企業ほど兼業・副業承認に積極的、約7割が承認
●兼業・副業の承認を実施して実感した課題、5割が「特になし」

イノベーションを重視する企業ではダイバーシティ推進に「積極的」が7割

まず、「ダイバーシティ経営」の推進に対する方針について見てみる。
企業規模別に見てみると、従業員数1,001名以上の大企業では「非常に積極的」(15%)と「どちらかといえば積極的」(51%)を合わせた積極姿勢(以下、同じ)の企業が66%と6割を超えている。
301~1,000名の中堅企業と300名以下の中小企業では、積極姿勢の企業はいずれも30%にとどまっており、大企業と比較すると積極的な企業が半分以下となっている(図表1-1)。

【図表1-1】企業規模別 「ダイバーシティ経営」の推進に対する方針

HR総研:ダイバーシティ経営に関するアンケート 結果報告【全体方針・兼業・副業】

本調査では各企業の事業方針に対する質問も設けており、この事業方針と各設問とのクロス集計も行った。ここでは、事業方針として「非連続的な成長につながるイノベーションを重視する」という方針と、「堅実な改善活動を重視する」という方針のどちらにより近いかという観点で企業を分け、それぞれのダイバーシティ経営推進への取り組み方針を見ていく。
「イノベーションを重視する」と回答した企業では、ダイバーシティ経営推進に対して「非常に積極的」(18%)と「どちらかといえば積極的」(52%)を合わせると70%と、積極姿勢の企業が7割であるのに対し、「堅実な改善活動を重視」と回答した企業では「非常に積極的」(4%)、「どちらかといえば積極的」(24%)を合わせると28%と、3割を下回っている(図表1-2)。イノベーションによる非連続的な事業成長を志向する企業ほど、ダイバーシティ経営の推進に積極的であることが分かる。

【図表1-2】事業方針別 「ダイバーシティ経営」の推進に対する方針

HR総研:ダイバーシティ経営に関するアンケート 結果報告【全体方針・兼業・副業】

次に、「ダイバーシティ推進に関する組織体制」について見てみる。
企業規模別に見ると、大企業では「ダイバーシティ推進のための組織体制はない」が40%、次いで「ダイバーシティ推進のための専門部署・課等が設置されている」が33%、「ダイバーシティ推進の専任担当者が設置されている」が22%などとなっている。中堅企業では「ダイバーシティ推進のための組織体制はない」が73%、中小企業では87%に上っており、大企業と中堅企業・中小企業との間でダイバーシティ推進の組織体制に大きな差異が見られる(図表1-3)。中堅企業と中小企業では、ダイバーシティ推進の専門部署・専任担当を立てるだけの人的リソースの余裕が無いという事情もうかがえる。

【図表1-3】企業規模別 ダイバーシティ推進の組織体制

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多様な属性の人材活用「方針なし」は大企業で約3割、中堅・中小企業は約6割

次に、ダイバーシティ経営に関するより詳細な方針について見ていく。
まず、「様々な属性(女性、外国人、シニア、障がい者等)から積極的に人材を雇用する方針」について企業規模別に見ると、大企業では「方針があり、非常に実現できている」(12%)、「方針があり、やや実現できている」(40%)を合わせると52%と半数を超え、「そのような方針はない」は16%にとどまっている。中堅企業では「方針があり、非常に実現できている」(7%)、「方針があり、やや実現できている」(27%)を合わせると34%と3割程度なっており、「そのような方針はない」が48%と半数近くに上っている。中小企業も中堅企業と同様の傾向で、「方針があり、非常に実現できている」(3%)、「方針があり、やや実現できている」(21%)を合わせると24%となっており、「そのような方針はない」は52%と過半数を占める(図表2-1)。

【図表2-1】企業規模別 様々な属性からの人材の雇用に関する方針

HR総研:ダイバーシティ経営に関するアンケート 結果報告【全体方針・兼業・副業】

次に、事業方針別に見ていく。ここでは「新規事業の開拓を重視する」という方針と、「既存事業の継続・強化を重視する」という方針のどちらにより近いかという観点で、企業を分けて見ることにする。
「新規事業の開拓を重視する」と回答した企業では、「様々な属性(女性、外国人、シニア、障がい者等)から積極的に人材を雇用する方針」について「方針があり、非常に実現できている」(9%)と「方針があり、やや実現できている」(34%)を合わせると43%となっており、「そのような方針はない」は28%と3割未満となっている。一方で、「既存事業の継続・強化重視」と回答した企業では「方針があり、非常に実現できている」(3%)と「方針があり、やや実現できている」(26%)を合わせると29%と3割を下回り、「そのような方針はない」は49%と半数近くに上っている。(図表2-2)。既存事業の継続・強化を重視する企業においては、新規事業の開拓を重視する企業に比べ、現在の組織体制を大きく変える必要性を感じていない企業が多いことがうかがえる。

【図表2-2】事業方針別 様々な属性からの人材の雇用に関する方針

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次に、「多様なバックグラウンド(専門分野)を持った人材を意図的に採用・育成するという方針」について企業規模別に見ると、大企業では「方針があり、非常に実現できている」(10%)、「方針があり、やや実現できている」(37%)を合わせると47%となっており、「そのような方針はない」は24%にとどまっている。中堅企業では「方針があり、非常に実現できている」と回答した企業は0%、「方針があり、やや実現できている」が30%となっており、「そのような方針はない」が48%と半数近くに上っている。中小企業も中堅企業と同様の傾向で、「方針があり、非常に実現できている」(3%)、「方針があり、やや実現できている」(25%)を合わせると28%となっており、「そのような方針はない」は47%に上る(図表2-3)

【図表2-3】企業規模別 様々な専門分野を持った人材の雇用に関する方針

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「新規事業の開拓を重視する」と回答した企業では、「多様なバックグラウンド(専門分野)を持った人材を意図的に採用・育成するという方針」について「方針があり、非常に実現できている」(4%)と、「方針があり、やや実現できている」(43%)を合わせると47%となっており、「そのような方針はない」は23%と約2割となっている。一方で、「既存事業の継続・強化重視」と回答した企業では、「方針があり、非常に実現できている」(3%)と「方針があり、やや実現できている」(19%)を合わせると22%と約2割にどまり、「そのような方針はない」は55%と半数を超えている。(図表2-4)。既存事業の継続・強化を重視する企業よりも、新規事業の開拓を重視する企業の方が、多様な専門分野を持った人材の採用・育成に積極的であることが分かる。新規事業の開拓を重視する企業においては、既存事業の維持・強化を重視する企業に比べ、当然現状の人材ポートフォリオを見直す必要性が発生するケースが多いと考えられるため、この結果もうなずける。

【図表2-4】事業方針別 様々な専門性を持った人材の雇用に関する方針

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次に、「ダイバーシティ経営推進に取り組む目的」については、「優秀な人材の確保」が最多で42%、次いで「専門性の高い人材の確保」が34%、「企業文化の改革」22%などとなっている(図表2-5)。
「エンゲージメント向上」(21%)、「社員同士の刺激の創出」(19%)もこれらに続くが、やはり「人材確保」を目的としてダイバーシティ推進に取り組む企業が多いことが分かる。

【図表2-5】ダイバーシティ経営推進に取り組む目的

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「ダイバーシティ経営」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2022年6月27~7月4日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:213件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

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